深層筋治療主義に異議あり!(9)---Gil Hedley先生からのメッセージ---

「インテグラル・アナトミー」シリーズ第2巻のパート2の部分で、Gil Hedley先生の治療に対するコメントがありました。その部分を引用します。詳しくはyoutubeで本編を見て下さい。以下の訳は意訳になります。

Again, what needs the work? What is at tissue? Is it this clumping of tissue that inhibits the sliding surfaces from "playing" against each other and the muscular action? Or is it the tonicity of the muscles?

治療の際、治療者は何に対して働きかけるのか?ファシアの膜同士が滑らなくなっている原因であろう硬い物、あるいは筋肉の緊張に対してリリースしようとするのか?

People often look to the nervous system to try and understand the tonus of musculature , and I don't. I actually look to the emotional life, and the will. Because "muscle tonus" is an ethical question, moreso than physiological one.

治療者はよく神経系を考慮し筋肉の緊張を和らげるということを考えがちですが、私(Gil)はそうではありません。患者さんの感情面を考慮します。なぜなら「筋肉の緊張」はその人の倫理的な問題だからです。

Because I can't tell you how many clients lying on your table aren't really all that tense, and all of a sudden you actually find that you are working their resistance to you. It's about your relationship with them.

あなたの目の前に寝ている患者さんが、本当に”筋緊張”があるのかどうかはわからない。もしかしたらあなた(治療者)の態度やマッサージなどの刺激に対する”抵抗感”を示しているだけで、それを”筋緊張”と決めつけて治療するのはいいことなのか、どうか。つまり治療者と患者さんとの関係が重要である。

So you'll have a person who says, "Oh, work deeper, work deeper!" And you'll work deeper, and you'll work deeper, and they'll say: "Oh, you've almost got it, but not quite!" And you'll go a little deeper, and you'll acutally find that you're butting heads with this person. You're in contest to see who's stronger. They can provide more resistance than you can provide leverage. And sometimes win, sometimes you win.

患者さんが「もっと強く、もっと強く!」と言う。そして治療者がもっと強くマッサージする。強くマッサージすれば、患者さんも力をいれ返してくる・・・。治療は「どっちが勝ったか」の勝負ごとではありません。

But, if you shifted the relationship, you might be able to talk for five minutes and they'd be soft as butter. So it's ultimately their responsibility to let go, and not yours to make them let go.

しかし、もし治療者と患者さんとの関係をより重要視すれば、つまりどれだけマッサージを強くし、また患者さんがどれだけの強さに耐えられるかの勝負ではなく、患者さんの5分ほど話を聞いてあげれば、その硬い物はバターのように溶けるのではないか?それは患者さん自身によって起こる”リリース”だ。

そして以前のブログでも紹介した、ストレスを感じるとファシアの平滑筋細胞が筋肉とは独立して収縮し、それがいわゆる筋肉の緊張として治療者が感じ取るのではないか、云々の話に続きます。

つまり私なりの解釈で纏めると、まず、なぜその部位が”硬い”、”緊張している”のか?それはおそらく患者さん自身の問題であろう。もしかしたら、精神面、感情面の問題かもしれない。精神面、感情面が人の姿勢や動きにどのような影響をもたらすかは、いわずもがな。まずそこにアプローチせず、悪い姿勢、動きの結果起こる”緊張”をほぐそうとガンガンマッサージする、ガンガン鍼を響かせる・・・。果たしてそれが本当の治療なのでしょうか?

こういうことを書いていると、「そんなこと百も承知じゃ!それでも治らんから、奥までマッサージ、深部まで鍼を入れなければいけないんだよ!」と思う方も多々いるでしょう。では、そういう方々はどのくらい詳細に、またどのくらいの時間をかけて問診(患者さんの話を聞く)ているのでしょうか?

精神面、感情面と姿勢との関係といえば、TED TALKで非常に参考になる講義が見れます。

TED 日本語 エイミー・カディ:ボディーランゲージが人を作る
http://digitalcast.jp/v/14341/

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あえて詳しい内容はここでは紹介しませんが、自分の姿勢が自分自身にどのような影響を与え、また周りの人にもどのように影響があるかを明確に述べられています。

姿勢と感情、精神面は切っても切れない関係のはずで、それを治療者が無視していいのでしょうか?

PS 先日NHKで最新の腰痛治療の特集がされたようです。私はその番組を見れていないのですが、いくつかその番組の内容を取り上げたブログやフェイスブックでのポストを拝見しました。否定的な意見の人たちはどうも「痛みと脳(感情、精神面)の関係だけというのが納得行かない」のように見受けられました。はたして、そのようにおっしゃっている方々は、患者さんの感情面、精神面にどれだけ目を向けておられるのでしょうか?

深層筋の治療は必要かもしれないですが、その前に治療者として考えるべきことがもっとあるのではないか?と思っています。

(2018年5月追記)

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