ファシアと鍼(4)---補寫を考える---

もともと私は鍼灸師といっても、東洋医学的、中医学的に鍼を用いることは資格をとってからほとんどありませんでした。まあ、「なんちゃって」東洋医学的に経穴を用いたり、脈を見て経穴を決めたりしましたが、これといってはっきりとした効果の手応えが全くわかりませんでした。

もちろん、自分自身の体にもそうで、何か体の不調があった時は必ず東洋医学系や中医学系の治療家の元に行き、治療をうけましたが、効果のほどが全くわからなかったのです。そこで自然とトリガーポイント系の治療に移行していったのですが、ロンドンに住むようになってから、いろいろな治療家と出会い、特にBowen Technique(ボーエン・テクニーク)は謎中の謎で(笑、なぜあんな触っているだけの治療で効果があると言うのかが全くわかりませんでした。クラニオセイクラルセラピー(頭蓋仙骨療法)も同じくです。

しかしそのボーエンやクラニオなどの「ライトタッチ」(軽いタッチ)系の刺激がなぜ効果があると主張するのかの根拠は、近年注目を浴びている「interoception」(内受容)への影響、つまり毛の生えている皮膚にだけ存在する、今まで発見されていなかった「C-tactile線維」により、その線維が「軽いタッチのみ!」に反応し、脳の島皮質に影響を与える、という事実がわかり、また同じく軽い刺激系の治療法、東洋医学的鍼、経絡治療法的鍼、などに私が立ち返る結果となりました。

話は変わりますが、先日、日本で美容鍼としてご活躍されていらっしゃる「北川毅」先生が来欧されていて、ロンドンでも美容鍼を含めた鍼の講習会を開いてくださいました。私もせっかくの機会なので、と思い、参加してきましたが、その講習の中で受講生の一人が「◯◯の場合の補法はどのようにやるのですか?」という質問に、北川先生が日本語でポロッと漏らした言葉
「う~ん、鍼は基本的に瀉法しかないと思うんだけど・・・」(これは英語には訳されませんでした)に私は何か頭に閃いたことがありました。

その北川先生の鍼の技法は「鍼は響いてナンボ」的な立場で、切皮痛がでようが何しようが、太い鍼をどんどん刺していき、運鍼も鍼を大きく上下させる手法でした。

つまりその技法は経絡治療系の「優しい」手技とは大きくことなり、その技法を常に用いて結果を出してきた結果、北川先生は「鍼は瀉法しかないと思うんだけど・・・」と漏らしたのでしょう。

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