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俺の前世は、おじいちゃん(5)

おはよう。スピリチュアルネイティブのタケルです。

朝ドラに田中真弓が出てきてびっくりだ。あんな朗らかに「受け入れちゃいなさい」って言われたらうっかり思考停止してしまうよな。

さて、今日も前回の続きから。


ここまでの流れをざっくりと

1、俺んちの近所で暮らしていた母が、祖母を看取るために地元の田舎に帰ることになった。思いがけず寂しさに襲われた俺は、溢れた感情の中に、俺ではなく、「おじいちゃん」の感情が混ざっていたことに気がつく。

2、それをきっかけに、俺はこの日記で「おじいちゃんだった前世」を思い出した話を書こうと思った。そもそもじーちゃんは、生前に祖母を置いて他に女をつくってよそに蒸発しちゃった人。2年前の夏至の日、俺はじーちゃんだった時の記憶を取り戻す。

3、そこで、じーちゃんが出て行った理由は、俺の曽祖母(祖父の義母にあたる)が、貧乏な家柄のじーちゃんが、地主である家に婿入りしたのをよく思わず、シカトし続けていたことにあったことを知る。念の為母に事実確認すると、どうも俺の妄想なんかじゃないらしい。

4、そこで俺(タケル)は、曽祖母(大ばーちゃん)と祖父(じーちゃん)の霊と、俺を挟んだ三者面談をすることに。曽祖母に認められたいとうなだれるじーちゃんに対し、冷たいままの曽祖母。そこで俺は、ある行動に出た。

詳しくは過去記事にて


依然、頑なな態度を崩さない曽祖母。あたりの空気はずんと重たい。俺はふと思いついたまま、口を開いた。

タケル「大ばーちゃん、慈愛ってわかる?」

大ばーちゃん「慈愛? なんだそれは」

タケル「いや、俺もふとその言葉が思いついたんだけど…そうだよね、慈愛ってなんだろうね」

俺も言っておきながら、慈愛ってよくわからない。広辞苑によれば「いつくしみ愛すること」とある。俺は、慈愛、と発音した自分の声を反芻しながら、ふと、以前に広隆寺で見た、弥勒菩薩を思い浮かべていた。

俺は仏像が下の方を見て、薄く微笑む目が、まるで小さな子を見守る母親みたい、と思ったんだ。

タケル「俺、前に寺で、綺麗な仏像を見たんだ。弥勒菩薩っていうの。それを見てたら、慈愛ってこういう感じなんだなって思ったんだよ」

大ばーちゃん「どういう感じなんだい」

タケル「言葉で説明するのが難しんだ。今、俺が弥勒菩薩を通して感じた気持ちを、大ばーちゃんに送るね」

そう言って俺は、記憶の中にある弥勒菩薩の印象や、見ているときに浮かんだ温かで静かな愛情のようなものを、じっと胸に思い出す。それを、大ばーちゃんにも感じてもらった。頭の先からつま先まで、温かなお湯をかけられているような感覚がして、それが曽祖母にも伝わっているのが、あたりの空気の振動でわかる。

タケル「これが、俺の感じたことのある、慈愛。どう?」

大ばーちゃん「あったかい。こんなあったかいもの、なんか懐かしい」

少しすると、張り詰めていた空気が一変した。「しっかりしなきゃ!」と気張っていた曽祖母の頑なさが取れて、いつの間にか、まるで小さな娘みたいにつるんと軽くなっている。俺が弥勒菩薩を通して感じた慈愛の力が、大ばーちゃんをすっぽり包んで、彼女が背負っていたプレッシャーを溶かしたみたいだ。

曽祖母「ああ」

突然、曽祖母の気配が震えた。

曽祖母「ああ! 悪かった、ごめん、ごめんなあ、祖父。私は、家を守ろうとするあまり、なんて心が狭くなっていたんだろう。守ろうとすればするほど、私はあらゆるものを弾いて、結果的に家の中をぎゅうぎゅうに締め付けてしまっていたんだ」

これを聞いていた祖父の気配が、途端に広がり、強く震えている。あ、じーちゃん泣いてる、と俺は思った。

曽祖母「悪かった、なあ、悪かった! 私は自分の弱さを噛み潰したかったんだ。それがいつの間にか、あの時家で1番立場の弱かった、祖父に向いてしまったんだ」

タケル「じーちゃんに、弱い自分を投影してしまったってことかな?」

曽祖母「そう。弱くちゃ家は守られない。だから強くないといけない。でも強くなろうと踏ん張ったら、自分の中にあった弱い気持ちまで、全て追い出してしまった」

タケル「なるほど……俺に『慈愛』って言葉が浮かんだのは、そのためなんだね。大ばーちゃんは、自分が強くなろうとするあまり、弱い者を思いやり、慈しむ『慈愛』の気持ちまで追い出してしまったんだね。それは大ばーちゃんにとっても、すごく辛いことだったね」

曽祖母「慈愛の気持ちを、子孫の心からもう一度思い出させてもらえた。そのことが私はありがたくて、嬉しい」

祖父「オカアサン、オカアサン、ごめんなさい。オカアサン」

曽祖母「ごめん、ごめんなあ、祖父。ごめんなあ」

祖父が、素直に両手を伸ばして曽祖母に近づいていく。曽祖母が、まっすぐそれを受け止め、祖父を抱きしめている。それを感じている俺の心が、まるで氷が溶けていくみたいに癒され、滂沱の涙となって溢れ出す。

ーーその後、二人の気持ちがしっかりと落ち着いたところで、それぞれの霊に、いったんお引き取りいただいた。俺は窓を開け、新鮮な空気を入れ、手を洗い、うがいをした。びっくりするくらい涙まみれになっていた顔を、しっかりと洗い流す。

なんとか二人が和解してくれて、俺はひとまずほっとした。これは後になってわかったことだが、実は曽祖母の旦那さんは早くに亡くなっている。俺は2年前のこの日の時点ではそれを知らなかったのだが、夫に先立たれて、家を守らねばと躍起になっていた曽祖母のプレッシャーを思うと、曽祖母があれほど頑なになっていた理由が、よくわかった気がしたんだ。

さて、次にやるべきことは、ある日突然置いてけぼりにしてしまった祖母への謝罪だ。

続きます。

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