目を、耳を澄ましてみる 色とりどりの小人の演奏会 時計が針を刻むように 気付いて、と 音を立て始めるのがわかった いままで気にも留めなかった 彼らの息づかい それはまるで 彼らには彼らの 定めた、 六十秒があるようにも思えて 時計を失ったら 僕らも その日暮らしのばか騒ぎ、に きっと 夢中で取り掛かれる 仲間はずれなんて、いない 一生を
そうか、今日は 生理現象から たまたま入ったトイレ、ただのトイレ そんな なんの変哲もない日常の 顔前にあるトビラにもたれて 足りなさになく日 オトを見失った、無数の慟哭に生かされて まぶたを閉じては置いてゆく 強くてニューゲームとはならぬのに 今日の亡骸を抱いて、明日のお前は歩き出す 私は、 夜のうちに かばんの空間〈アキマ〉を ありったけの言葉で ごまかすのだ 先送りのワルさも 言葉の無力さも 知りながら もっとも忌み嫌う 足を挫くもの いっしょを歩いてみるか
鏡にうつる お髭ひとつ 生長する命を踏みつぶして 今日も、生活がはじまる 誕生を祝福できないこと、 死は事実になりさがったこと 洗面台に振り返るだけで 当たり前じゃないか、と囁かれる 今日の僕は誰の何を奪ったのか それすら定かではないけれど 人の迷惑、なんて言葉 生きるためには言えなくなった いただきますと、ごちそうさま おはようと、おやすみ なくしてしまった 生活のおと
齢二十を超えて 疎遠になって あなたの元気でね、という 言葉選びに さよならの重みを感じた
誰も彼もが踊っている 熱といっしょに踊ってる 燃え尽きるまでの一瞬を 逃れようもない抗いようもない 生まれたときから そう決まっていたのだ いや 熱のない暗がりを 確かめたくはないから そう決めたのだったか 灰のなかを夢にみる 線香花火のような 星を追うのではなく、 ただひとつの燻る宝物を 持っていられたのなら、と いまはまだ 熱のなかで
誰かひとりに 倚りかからぬ夜がほしい 醒めたさめた 朝がくる あの、陽だまりに眩るまでは なければ、を手放して いきたここち