転生したらアリだった件
以前の記事に詳細は記したが
アリの行列にお茶碗をかぶせ、神をきどった罰だろうか
『転生したらアリだった』
そこでの冒険を記録しようと思う。
わたしがいたのは、1000匹の同胞が住まうコロニー。
全員1匹の女王アリから産まれた血族である。
女王アリという名前が人間が便宜的につけたもので
司令塔ではない、役割だ。
アリのコロニーは完全分業体制が敷かれている。
女王アリの役割は生殖と産卵だ。
司令塔は誰かって?
それがいない。
それぞれのアリが自己判断で分業、協業がなされ
全体が保たれている。
おどろいた。
さっきまでいた人間社会では考えられない。
すべての組織は軍隊を模してつくられ、
ピラミッド型に指示体系が確立されている。
アリには、主任も係長も課長も部長も(中略)社長も
王も首相も大統領もない。
一匹一匹が自ら状況を判断し
いま最適な任務をこなす
自律集団なのだ。
すげぇ~と感嘆符を連打していたわたしだが
ふと、なにもしてないアリたちが目に留まった。
「ねえ、君たちのタスクはなんなの?」
「ん? なにもしないことだよ」
わたしは目を疑った。
与えられたタスクに
働くアリと、何もしないアリがいるというのだ。
働いてるアリも
それが当然というように
「なんで俺だけ?君たちずるいじゃん!」
なんてことはいわない。
かといって、我慢してるかんじでもない。
休んでるアリは
「いざってときのために温存だよ。うふふ。」
と平然としている。
え?いざ?って?
不思議に思っていると、天井からなにかがのびてきた。
「うわ~外敵だ~」
あわてるアリたちを横目にみつつ、その外敵には見覚えがあった。
「あれは、人間がつかう道具ぽいな。」
子供なのか、研究者なのかわからないが
アリの巣穴は人間にとって魅惑の空間なのだ。
人間のときは考えもしなかったが
無作為に殺されたり、実験にされたり
アリの身になって考えると
たまったものではない。
しかし、今はわたしは人間ではない、アリだ。
黙ってみているしかない。
どんな仕掛けがしてあるのかわからないが
その道具は、
働きアリだけを選びだし
ごっそり連れ去っていった。
え?ヤバ!
戦力ダウン!ピンチじゃん!
どうする、どうなるアリコロニー!
すると、どうだろう。
さっきまで、ゴロゴロ、ダラダラ休んでいたアリたちが
すっくと起き上がり、きびきびと働きだしたではないか。
「休んでたから元気いっぱいだもんね」
鼻歌まじりである。
こ、これは、担い手がいなくなると別の者が働き出す
「労働補償性」!?
アリすげぇ!
衝撃をうけている私の頭上から、ばらばらとアリが降ってきた。
さっき連れ去られたとアリが
なにかのはずみで、全員戻ってきたのだ。
するとどうだろう。
「あ、おかえり~。じゃ、また休むわ~」
今まで働いていたアリが再び戦線離脱。
役割交代したのである。
こ、これって「労働可逆性」!?
おどろいているわたしの横で
「おつかれさーん。交代しま~す」という声がした。
「は~い、かわりま~す。わたしたちめちゃ充電したんで
休んでくださ~い。」
これは「労働協働性」だ。
働いたら休み、休んでいる間も
必要な役割を補填し合うことで、
コロニー全体は持続可能な恒常性を維持しているのである。
ホメオスタシス!
そして
福岡伸一博士のおっしゃる「動的平衡」そのものだ。
アリ、すげぇよ。
君たちは人間が決してなしえないことを
涼しい顔してやり遂げてるよ。
わたしは幼少のみぎりとはいえ
アリの行列にお椀をパカパカかぶせただけで
「今、わたしはアリにとっては”神”である。」
なんて不遜な思いを抱いたことを激しく恥じたのである。
そして、このテンプレートは
他にもあるぞと思い至った。
つづく
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