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スコッチウイスキー6大産地「キャンベルタウン編」

キャンベルタウンは名誉と挫折を味わった
ブリニーが特徴のウイスキーを製造する寄港地である。

はじめに

fcamです。
この記事を読んでくださり、ありがとうございます。

この記事は、バー通いが10倍楽しくなる知識「スコッチウイスキーの魅力と6大産地について」の分岐記事です。

まだ読まれていない方は、この記事を読む前に読むことを推奨します。

また初見の方もいることを想定して作成しておりますので、他地域の記事と重複する内容が多少含まれておりますがご了承ください。

さて、読者の皆様のなかで「ブリニー」を知っている方がどの程度いるのでしょうか。

スコッチを知る、キャンベルタウンモルトを知る上でこの用語は知っておくべきです。

読み進めていくとその用語がスッと入ってくるように工夫して記事を作成しておりますので、最後まで読んでいただけると幸いです。

キャンベルタウンの歴史は長く、とても過酷なものでした。

であるからこそ、長い歴史を踏んで今の魅力的なキャンベルタウンモルトを日本で堪能できるようになっているのです。

キャンベルタウンについて全く知らない方は
・急に何を言っているんだこの人は・・・
・ウイスキーの歴史なんて考えたことなかった・・・
・他と同じスコッチなのにウイスキー製造に挫折ってあるの?

そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事のシリーズは「ウイスキー初心者」を想定して作成しておりますので、最後まで読んでいただければ理解できるように構成しています。

・キャンベルタウン自体初めて聞いた・・・
・そもそもキャンベルタウンってスコットランドのどこにあるの・・・
・他のスコッチとの違いを意識したことがなかった・・・

こんな方でも問題ありません。

最後まで楽しんでいただけると思います。

今回はスコットランドのうち、キャンベルタウンに絞って紹介していきます。

・地方の特徴について
・風土について
・キャンベルタウンモルトの特徴について
・おすすめのキャンベルタウンモルトについて

スコットランドのキャンベルタウン地方で製造されるモルトウイスキーのことを「キャンベルタウンモルト」と称します。

スコッチを深く理解するにはまず各地方の特徴を把握する必要があり、その後にバーで各地方の特徴を掴むように飲み比べをしていくことで知識が増えていきます。

少しずつ知識を補填していきましょう。

なるべく要点を絞り、ウイスキー初心者にもわかりやすいように書いていきます。

この記事を読んで
・スコッチの知識が浅い。
・地方別スコッチの特徴について理解しきれていない。
・バーマンやマスターからスコッチの地方の話をされても内容がいまいち分からない。

こんな状態から
・スコッチの理解を深める。
・地方によってスコッチの特徴の違いがあることを知る。
・キャンベルタウン地方で造られるスコッチの特徴を理解する。
・バーマンやマスターとスコッチについて語り合える。

このシリーズを読んで、スコッチについての知識を補填すればウイスキー愛好家にまた一歩近づけます。

※この記事は「キャンベルタウンモルトについて知りたい」向けの記事です。
※9分程度を目安に時間を頂戴します。

4.章跨ぎ

1.そもそもキャンベルタウンとは

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キャンベルタウンとは、スコットランドの南部に位置するアーガイル地方キンタリア半島南部先端の町であり、面積約474.2 km²、人口5000人程度の小さな港町です。

ハイランド地方とアイラ島の中間あたりに位置しています。

ちなみに、ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝がウイスキーの研究のため滞在していた地でもあります。

20世紀には約30種類以上の蒸留所があり、スコットランドのウイスキー産業中心地のひとつでしたが、現在は
・スプリングバング蒸留所
・グレンスコシア蒸留所
・グレンガイル蒸留所

の3箇所しかありません。

なぜキャンベルタウンがここまで衰退してしまったのかについては、大きく3つ挙げられます。

・アメリカ禁酒法時代の粗悪品密輸
・燃料の石炭が枯渇
輸入手段が機関車等の陸から飛行機等の空への変化

特に、禁酒法時代のアメリカへの密輸の際に製造していたスコッチが粗悪品であり、1933年禁酒法解禁後に「キャンベルタウンのウイスキー=粗悪品」のイメージが拭いきれず、製造しても飲まれなくなってしまい需要が激減してしまった影響が大きいと言われています。

2004年にグレンガイル蒸留所が再開するまではスプリングバンク蒸留所とグレンスコシア蒸留所の2箇所しかなく、ウイスキー生産V字回復の兆しを見せ始めている発展途上的ポジションと理解してください。

ちなみに、僕がバーに行く際にあるとテンションが上がるウイスキーの1本にキャンベルタウンモルトがあります。

「4.キャンベルタウンモルト紹介」で紹介するので最後まで読んでいただけると幸いです。

キャンベルタウン=ウイスキー発展途上地域

次に、風土について紹介していきます。

4.章跨ぎ

2.キャンベルタウンの風土

ハイランド南部の海寄りの地域であるため、潮風がウイスキーに影響を与えます。

現在は衰退してしまっていますが、ウイスキー産業の他に漁業、造船、炭鉱に栄えていました。

海岸線が入り組んでいるためか、霧がよく発生するというのは有名な話です。

前述しましたが、キャンベルタウンは最盛期に30を超える蒸留所が存在し「世界のウイスキーの首都」と称されるほどウイスキー製造に向いた船舶の寄港地でした。

それほどの生産を可能にしていたのですから、ウイスキー製造に向いている土地であることは間違いありません。

質より量を選択してしまった経緯の衰退ですが、時代も変化しウイスキー製造には抜かりない出来に仕上げてくるため注目を外せない存在でもあります。

4.章跨ぎ

3.キャンベルタウンモルトの特徴

キャンベルタウンモルトの特徴としては「ブリニー」と称される麦芽の中に感じる独特の塩辛さです。

港町の風土をそのまま受けているような風味があり、他のスコッチにはないキャンベルタウンモルト特有の個性とも言えます。

・海寄りの地形独特の潮の香りを含んだ塩辛さ
力強く風味が残る味わい
・比較的重いボディのスコッチが多い

特徴としてはこんなところでしょうか。

他の地域にはない個性から、キャンベルタウンモルトの愛好家も一定数います。

僕もその個性に魅了されている一人です。

ちなみにボディとは、コク・味の深み・まろやかさなどのウイスキーの味全体の印象を総称する表現として使用されている用語です。

軽い飲み口で清らかに飲めるようなウイスキーをライトボディ、濃厚でどっしりと重く、芳醇なコクを持つウイスキーをフルボディと表現しています。

「キャンベルタウン=粗悪品のスコッチ」と考えるのは浅はかです。
ぜひ一度、毛嫌いせずに試してみてください。

4.章跨ぎ

4.キャンベルタウンモルト紹介

僕がバーでよく好き好んで飲むキャンベルタウンモルトは、スプリングバンク蒸留所で製造される「ロングロウ」シリーズです。

今回紹介するキャンベルタウンモルトは、ロングロウを始めとしたキャンベルタウンを代表するスコッチです。

スプリングバンク蒸留所から
・ロングロウ
・スプリングバンク10年
・ヘーゼルバーン10年

グレン・スコシア蒸留所から
・グレンスコシア10年

それぞれ紹介していきます。

4-1.ロングロウ

2回蒸溜でつくられるヘビーでオイリーなシングルキャンベルタウンモルトウイスキーです。

ちなみに年数表記されているモデルもいくつか存在し、それぞれに魅力がありますがまずはこのスタンダードなタイプから飲んでいただきたいです。

ちなみにNASウイスキーです。

僕自身がNAS支持者だからではなく、純粋にロングロウの美味しさを読者と共有したいと思いスタンダードなものから順に試してくださいとここでは言わせてください。

NASについての記事も別途まとめておりますのでぜひご参照ください。

幅広い年代や複数の樽の原酒を混ぜることで、ロングロウの個性や魅力を作り出しています。

ピート臭の中でもバニラを想像させる甘い香りであり、味わいは蜂蜜と林檎のようなフルーティさが特徴的です。

4-2.スプリングバンク10年

「モルトの香水」と称されるほどの高貴な香りを有するスプリングバングシリーズですが、10年は特に初心者にもわかりやすい味わいです。美味です。

キャンベルタウンモルト独特のブリニー(塩辛さ)も味わえるため、キャンベルタウンモルト入門編としてもおすすめです。

「港町に位置する蒸溜所」という独特の熟成環境も想像しながら嗜んでください。

製造の過程をイメージすることで、ウイスキーの楽しみ方の幅も広がっていくことでしょう。

少しずつ取り入れてみてください。

4-3.ヘーゼルバーン10年

キャンベルタウン内にヘーゼルバーンという名前の蒸留所があったのですが、過去の失態が影響して1925年に閉鎖されてしまいました。

そこでこのスプリングバンク蒸溜所がキャンベルタウンモルトの復興を目指して、「ヘーゼルバーン」の名で生産しているとのことです。

今回紹介する「ヘーゼルバーン10年」は、スプリングバンク蒸留所で製造されるウイスキーの他2種類とは異なり、ノンピートでマイルド、柔らかくまったりとした味わいが特徴です。

100%バーボン樽熟成の影響から、アップルパイやキャラメルのような甘さが香り、味わいはバニラや蜂蜜にオレンジピールを加えたようなものからチョコレートの後味へと続いていきます。

また、スプリングバンク蒸溜所で製造されるスコッチならではのソルティな印象も見受けられます。

4-4.グレンスコシア10年

1832年に設立し、現在も稼働している伝統的な蒸留所「グレン・スコシア蒸留所」で製造されるキャンベルタウンモルトです。

キャンベルタウンにて製造されるウイスキーのイメージダウンの影響にも耐え、今なお昔ながらの伝統的製造方法を大切にし、原料である大麦の調達や在庫管理などにも抜かりがなく、さまざまな研究によりスコッチの品質を最上級にする工夫が施されています。

グレン・スコシア蒸留所では基本的にピートと非ピートの2種類を製造しています。

グレンスコシア 10年 ピーテッド

使用しているピートはスコットランド北東部産、キャンベルタウン特有のブリニーを感じられる「まさにキャンベルタウンモルト」といえるスコッチです。

ファーストフィルのバーボン樽を使用していることからビターなキャラメル、オーク感が味わえます。

後味も非常に長く続き、上質なスモークと柑橘系の香りが鼻を通ります。

グレンスコシア 10年 ノンピート

ピーテッドと同様、全てファーストフィルのバーボン樽で熟成されており、ノンピートであるが故にフルーティーで強いオーク感を味わうことができます。

後味が長く続くこともピーテッドと同じであり、シナモンのような甘くクリーミーかつオレンジの酸味が鼻を通ります。

2人でカウンターに並び、比較するように飲み比べていただけるとより楽しむことができるでしょう。

4.章跨ぎ

おわりに

いかがでしたか。

・スコッチの知識が浅い。
・地方別スコッチの特徴について理解しきれていない。
・バーマンやマスターからスコッチの地方の話をされても内容がいまいち分からない。

こんな状態から

「1.そもそもキャンベルタウンとは」
スコットランドのキャンベルタウンという地方について知る。

「2.キャンベルタウンの風土」
現在は衰退してしまったが「世界のウイスキーの首都」と称されるほどウイスキー製造に向いた船舶の寄港地であることを知る。

「3.キャンベルタウンモルトの特徴」
キャンベルタウンモルトのほとんどは「ブリニー」と称される麦芽の中に感じる独特の塩辛さがあることを知る。

「4.キャンベルタウンモルト紹介」
有名なキャンベルタウンモルトを知る。

この工程を踏むことで
・スコッチの理解を深める。
・地方によってスコッチの特徴の違いがあることを知る。
・キャンベルタウン地方で造られるスコッチの特徴を理解する。
・バーマンやマスターとスコッチについて語り合える。

読者にお願いしたいことは、「失敗を犯したキャンベルタウンモルトは粗悪品」という印象を持つのではなく、「素晴らしいスコッチを普及させるために努力を惜しまない素晴らしいスコッチ」という印象を持っていただきたいことです。

かつての失敗から挽回するために、時代を超えてキャンベルタウンモルトの素晴らしさを世に伝えるために、今もさまざまな製造に関わる研究が続けられています。

ウイスキー製造の工程は工種が多く、研究すべき要点が多様です。

ウイスキーの工程についての記事はこちらをご参照ください。

ロングロウは特に僕のお気に入りの一杯です。

ぜひ試してみてください。

4.章跨ぎ

追伸

このシリーズに順番を振るとしたら、この記事は5番目になります。

6番目の記事にあたる「アイラ編」は下記のリンクからご参照ください。


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