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2021年上半期に見た映画

映画感想の備忘録。上期といいつつ7月に見た分も追加。ネタバレ満載なのでご注意ください。


ノマドランド

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フェーン(フランシス・マクドーマンド)は、リーマンショックによる企業の倒産で住み慣れた家を失ってしまう。彼女はキャンピングカーに荷物を積み込み、車上生活をしながら過酷な季節労働の現場を渡り歩くことを余儀なくされる。現代の「ノマド(遊牧民)」として一日一日を必死に乗り越え、その過程で出会うノマドたちと苦楽を共にし、ファーンは広大な西部をさすらう。

野生度 ★★★★★
諦観度 ★★★☆☆
シェイクスピア度 ★★★★★
Amazon怒りの宅配度 ★★★★☆
海の上のピアニスト度 ★★★★☆

アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞の最多3部門獲得はお見事。トランプに踏みにじられた今のアメリカを反映したような選ばれし作品だけれど「ノマドランド」に関しては流浪人に有色人種が圧倒的に少なかったり(白人に比べ車で野宿する危険性が高いため)リーマンショック後とはいえ主人公の行動がずさんな点、夫が亡くなったあとも将来性のない街に住み続ける等)という点が気になったり、資産運用の甘さどうなのとか、米の健康保険制度やっぱクソだな~等々個人的にはツッコミ多め&腹が立つ映画。公開直後は社会派で真面目な感想が多く見られたけれど私自身褒めるべきところが見当たらなくて、困った。アメリカの美醜をnot米国人の目を通しながらも米国の問題として描いた点、自然光の捉え方が素晴らしく悲しいロードムービーだとすればピカイチだったのでこのあたりは良かったと思う。マクベスのトゥモロースピーチ、ソネットの引用もシェイクスピアファンとしては嬉しかった。本作を「断捨離してヒトモノカネに縛られず自然のままに生きる美しさを描いててすごい、翻って我々は罪深い」という思いはひとかけらも持てなかったので、胸を打たれたという人々の感想を聞きたい。

ミナリ
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1980年代のアメリカ南部に、農業での成功を目指し、家族を連れてアーカンソー州の高原に移住して来た韓国系移民ジェイコブ。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にした妻モニカは不安を抱くが、しっかり者の長女アンと心臓を患う好奇心旺盛な弟デビッドは、新天地に希望を見いだす。やがて毒舌で破天荒な祖母スンジャも加わり、デビッドと奇妙な絆で結ばれていく。しかし、農業が思うように上手くいかず追い詰められた一家に、思わぬ事態が降りかかり……

こちらもスンジャおばあちゃんを演じたユン・ヨジョンがアカデミー助演女優賞を獲得。米配給映画なのにほぼ韓国語。おかげてゴールデングローブでは外国語映画賞を受賞するという展開に。いやー、米移民三世のリー・アイザック・チョン監督の手腕がすごい。韓国はキリスト教が主流なので本作の登場人物もおばあちゃん以外は聖書由来だったり、十字架を背負う隣人など宗教観が漂う。しみったれた家族の描き方、愛より情の文化、ヤマもオチも拾えないストーリー展開がとても韓国映画っぽく、大統領選やコロナ禍もあり疲れきったアメリカにはじんわり染みわたったのかも。ひよこ鑑定士の地味さが好きです。

スティーブ・ユアンは「ゼット・インク」もおすすめ。


ザ・スイッチ

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家でも学校でも我慢を強いられる生活を送る冴えない女子高生のミリー。ある夜、アメフトの応援後に無人のグラウンドで母の迎えを待っていた彼女に、背後から指名手配犯の連続殺人鬼ブッチャーが忍び寄る。鳴り響く雷鳴とともにブッチャーに短剣を突き立てられたミリーだったが、その時、2人の身体が入れ替わってしまう……

原題はFreaky。監督「ハッピー・デス・デイ」のひとか!そりゃホラーコメディになるわけですね。地味でスクールカースト下位の女子高生と連続殺人鬼の身体が入れ替わるという次点でだいぶB級の香り。期待を裏切らないアホスプラッタ満載&元に戻るには24時間という縛りもグッド。さくっとみれるホラコメなのでおすすめ。ヴィンス・ボーンの女子高校しぐさがちょうかわいい。彼は最近うだつのあがらないおっさん役が多いですが、ほんとは綺麗な顔してるんですよ。「ザ・セル」の敏腕捜査官役がたまらなく好き。


ジェントルメン

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一代で大麻王国を築き上げたマリファナ・キングのミッキーが、総額500億円にも相当するといわれる大麻ビジネスのすべてを売却して引退するという噂が駆け巡った。その噂を耳にした強欲なユダヤ人大富豪、ゴシップ紙の編集長、ゲスな私立探偵、チャイニーズ・マフィア、ロシアン・マフィア、下町のチーマーといったワルたちが一気に動き出す。

ハナムのスパダリ度  ★★★★★
マコノヘーの色気度  ★★★★★
ジェントルマン度   ★☆☆☆☆
探偵度        ★☆☆☆☆
草度         ∞

「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」とか「スナッチ」が好きな人はどうぞ。ガイ・リッチー節全開です。ミッキーとその右腕レイの関係性に狂わされたひとは多いはず。レイのチャーリー・ハナム、絶対ミッキーに黙って邪魔者消してるよね。お姉さん知ってるんだから。ガイリチはふたりの過去について同人誌出してほしい。言い値で買うぞ!コリン・ファレルとラッパーチームのMV、うさんくさいおヒュー様、ちょっと可哀想なくらい脇役の美男ゴールディング等見どころ満載。クライムサスペンスと紹介されてるけど真面目に違うと思います。


ファーザー

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舞台「Le Pere 父」を基に、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していく父親の視点から描き出す。ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。


ヒューマンドラマ度 ★★☆☆☆
サスペンス度    ★★★★★
ハンニバル感    ★★★☆☆
配役の素晴らしさ  ★★★★★
福祉介護のありがたみ ∞

アカデミー賞では主演男優賞と脚本賞を受賞。見た後は納得の出来栄えだし、オリビア・コールマンとアンソニー・ホプキンズのほぼ二人芝居が続く中で観客は現実と妄想の合間に放り込まれる。ミステリーやサスペンス、ドラマのミックスでもあるので見る人によって解釈がバラけている(気がする)円盤が出たらぜひ見直したい。エンディングも含めて監督ははっきりした答えを用意しておらず、主人公と同じく時間を彷徨う仕掛けをしている。時間軸がずれる演出はトリッキーなホラーでもある。これほどエンディングが気になった映画はインセプション以来かも。いまのとこ今年の洋画ベストです。アンソニー・ホプキンス作品は若きブラッド・ピット共演の「レジェンド・オブ・フォール」「ジョー・ブラックによろしく」がおすすめ!



RUN

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郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつきの慢性の病気により、車椅子生活を余儀なくされていた。しかし、前向きで好奇心旺盛な彼女は地元の大学への進学を望み、自立しようとしていた。ある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。

「search サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督の新作。このひと元Googleなんですよね。ガジェット使いがうまいわけだ。サラ・ポールソンは「キャロル」で好きになった俳優ですが(サラポンはホーランド・テイラーと交際しているのでハリウッドでも有名なビアンカップル)今回は狂気ママ役にどっぷり。娘役のキーラ・アレンは車椅子の扱い上手いわ演技も上手いわで感心していたら、実生活でも車椅子ユーザーだった。配役グッジョブ!チャレンジはあるだろうけど今後もガンガン俳優として活躍していただきたい。ママと娘だけの世界のサイコスリラーもの、ありそうでなかったような。サラポンの笑顔が始終怖い。


モータルコンバット

*内容は「魔界と人間界が長らく争ってる、あと1戦負けたら地球は乗っ取られるから人間界の選ばれし戦士頑張れ」

テーマ曲がくっそかっこいい。ゲーム実写化にしてはレベル高いのでは…元ネタのゲーム1ミリも知らないで見に行きましたが無問題。

突然の魔界度 ★★★★☆
唸る血しぶき ★★★★★
飛び散るモツ ★★★☆☆
漂うBL感   ★★★☆☆
溢れる筋肉  ★★★★☆
雷電出番多くね ★★★★☆
世界のサナダ ★★★★★

鉄拳、ストII好きには刺さるはず。これは全国の小学校にみてほしいな~
翌日からフェイタリティ!フィニッシュヒム!がクラス中に響き渡るの確実。モータルコンバットのタトゥーいれようかな!って言っても周りに止めてくれるひとがいない。スコーピオン(真田広之)とリュウカンがかっこいいからみんな見てね!!!!!

浅野忠信はずっと目が光ってる



スーパーノヴァ

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ピアニストのサムと作家のタスカーは互いを思い合う20年来のパートナーで、ともにユーモアや文化を愛し、家族や友人にも恵まれ、幸せな人生を歩んできた。ところが、タスカーが不治の病に侵されていることがわかり、2人で歩む人生は思いがけず早い終幕を迎えることとなる。

コリン・ファースとスタンリー・トゥッチの夢のイチャコラカップル!という不純な動機でみました。すみませんでした(土下座)予告の時点ではトゥッチの役をマーク・ストロングと勘違いしておりさらに申し訳ない…舞台はイギリス湖水地方、20年以上パートナーであるタスカーとサム(結婚しているかは言及されていないけど指輪してた気がする)本作はゲイの理想&メロドラマを詰め込んだ感じでとてもよかったんだけど、こんなにホゲないカップルいるか?という点だけはツッコミたい。まぁリアルのホゲホゲしてる姿よりこういう方シリアルには合いますよね。長年連れ添った相棒が不治の病(記憶障害)になってしまうという設定、たぶん自死を選んだタスカーとレクイエムを弾くサムの姿には涙も出なくてどちらかというと絶望のほうが大きかった。本作は同性婚が受容される世の中じゃないと成立しなくて、あのふたりが当たり前にいておかしくない日常、日本じゃありえないから悲しいよね!ということを女装家ブルボンヌさんとゲイのよしひろまさみちさんがジョソラジで語ってたのです。そりゃ泣けないわ。トム・ウェイツは良かったです。



社会情勢もあり、なかなか映画館に足を運べなかった上半期。

ワクチン接種がすぐそこなので、下半期はもう少し映画を楽しむ時間をつくっていきたいなと思います。

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