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内田樹(1950.9.30- )・平川克美(1950.7.19- )『沈黙する知性』夜間飛行 2019年11月刊 352ページ


内田樹(1950.9.30- )
平川克美(1950.7.19- )
『沈黙する知性』
夜間飛行 2019年11月刊
352ページ
2020年1月10日読了

https://www.amazon.co.jp/dp/4906790364

「複雑な問題について、一言で何かを言おうとするのは、よくないと思う。ある層で切れば「こういう話」に見えても、もう一皮むくと「ちょっと違う話」が出てきて、さらにもう一皮むくと「正反対の話」になったりする。

だから、僕も「みんなが感情的になっているときは発言したくない」というのが正直な気持ちだね――(本文より)

知識人というのは、孤独な人たちなんだね。(平川克美)
でもね、孤独な人たちの孤独な営為が、未来を切り拓くのだよ。(内田樹)

「14歳から読みたい自由と勇気の人生案内」シリーズ、待望の最新刊!!

(目次)
はじめに (内田樹)

第0章 耳を傾けるに足る言葉はどこにある
自分が言わなくてもいいことばかりを語る人たち
自分が語る言葉の保証人は自分しかいない
誰がこれを書いたんだよ!
小林秀雄の署名性

第1章 本物の知識人は沈黙する
みんなが感情的になっているときには発言したくない
「私はシャルリー」の意味
両陣営から担ぎ出される「表現の自由」
フランス国民に鬱積した不満
構造化された階層
フランス社会の「見えざる」階級
「何も言ってはならない」という雰囲気
知識人たちの孤独

第2章 日本の衰退を止めるには
人生は「歳をとった者勝ち」
脳化した知性と身体的な知性の差
役割としての「大人」
社会の安定と家庭の解体
父から無言で遺贈されたトラウマ
自分が自分でなくなってしまうということに対する嫌悪
人を見る目がなくなった

第3章 「ありえたかもしれない世界」について考える知性 村上春樹の世界
村上春樹は「お化け作家」だった!
羊男とスーフィズム
構築的でないからこそリズムに乗れる
「この世ならざるもの」が切迫すること
井戸の奥から湧いてくる村上春樹の世界性
「日常の労働」を描く圧倒的な描写力は世界的な作家の共通項
村上春樹は「比喩がうまい」わけではない!?
『細雪』はつまらない?
「隣の世界」をリアルに感じる想像力
蒲田から想う
平行世界を行き来する村上春樹と文学の力

第4章 グローバリズムに「終わり」はあるか
最後はコンビニだけになる
「自助の精神」は日本では根づかない
「荒ぶる神に仕える専門家」が必要グローバリズムは終わった!?

第5章 吉本隆明の「知」をいかにして後世に引き継ぐか
「影響を与える」とは、「文体を真似される」ということ
引き裂かれた状態をひとつの文体にまとめていく
転向論は日本の心性史論
知識人たちは「何」に屈服したのか
吉本隆明の屈託
「平場の常識」というイデオロギー
生活言語と抽象言語を架橋すること
知識人の系譜
カズオ・イシグロはイギリスの吉本隆明
身体性に届かなければ「詩」ではない
吉本隆明の「知」を後世につなぐために

あとがきにかえて (平川克美)

内田樹(うちだ・たつる)
1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学博士課程中退。神戸女学院大学文学部総合文化学科を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。第三回伊丹十三賞受賞。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰。著書に『私家版・ユダヤ文化論』(第六回小林秀雄賞受賞)『日本辺境論』『街場の戦争論』『街場の天皇論』『生きづらさについて考える』など、夜間飛行からの刊行では『困難な成熟』(「14歳から読みたい自由と勇気の人生案内」シリーズ)がある。

平川克美(ひらかわ・かつみ)
1950年東京生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、渋谷区道玄坂に翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立。1999年シリコンバレーのBusiness Cafe Inc.の設立に参加。現在、株式会社リナックスカフェ代表取締役。2014年、東京・荏原中延に古き良き喫茶店「隣町珈琲」を開店し、店主となる。著書に『小商いのすすめ』『俺に似たひと』『グローバリズムという病』『路地裏の資本主義』『移行期的混乱』『言葉が鍛えられる場所』『21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学』、夜間飛行からの刊行では『復路の哲学 されど、語るに足る人生』がある。」

内田樹(1950.9.30- )
平川克美(1950.7.19- )
『沈黙する知性』
夜間飛行 2019年11月刊
352ページ
2020年1月10日読了

1950年9月30日東京大田区下丸子生まれな
内田樹さんと
1950年7月19日生まれの小学校同級生・
平川克美さんの対談。
内田樹さんの著書・対談集は何冊も読んでますけど、
「60年間にわたる兄弟盟約的付き合い」という
平川克美さんは初めてです。

五歳年下な
1955年1月東京都北多摩郡神代町
(現在は調布市仙川町)生まれの
私は、お二人の「構築的でない」p.171
様々な話題の展開と考察を興味深く読みました。

五歳違うと
吉本隆明(1924.11.25-2012.3.16)
への関心や影響が随分違うなぁと、
「マチウ書試論」
『藝術的抵抗と挫折』
未来社 1959
を一生懸命読んだ
明治大学文学部学生だった頃のことを思い出したり…。

「内田 戦後の知識人がこぞって
戦前の日本を全否定していたとき、
吉本は
「これを全否定すべきではない。
救い出すべきものは救い出さなければならない」
と警告した。
こういう立ち位置で物を言った人って、
世界中を見渡しても、あまりいない。」
p.321

「丸山眞男は英訳がたくさんある。たぶん仏訳も。
でも、吉本隆明は英訳も仏訳もまったくない。
それだけ見ると、
吉本隆明がローカルな思想家で、
丸山眞男のほうがグローバルな思想家だ
ということになるけど、
そんなに簡単な話ではない。

吉本隆明のような問題意識で
国民国家の歴史をえぐるというのは、難しい。
「えぐり方」が鋭すぎて、
同じことをできる人がヨーロッパにもほとんどいなかった。
吉本隆明が自国の歴史に対してやったような
鋭い切り込み方ができなかった。

吉本隆明の翻訳が存在しない理由は
「欧米の地域性が、吉本の世界性に追いついていない」
からなんだ。」
p.328
「第5章 吉本隆明の「知」をいかにして後世に引き継ぐか
 カズオ・イシグロはイギリスの吉本隆明」

https://note.com/fe1955/n/n70a0640fcca0
「戦前の日本と戦後の日本をなんとかして架橋しようとする人たち、
吉本隆明や江藤淳や伊丹十三の仕事を「架橋」という視点で
とらえなおすことができるのではないかというアイディアを、

『昭和のエートス』[バジリコ 2008.11]
https://www.amazon.co.jp/dp/4862381189

という書物で提出しました。あまり大きな反響は得られませんでしたが、それでも僕は、戦中派が企てて、そのあとを引き継ぐ人がほとんどいなくなったこの「架橋」というアイディアを次代にまで「パス」して、「かってこういう考え方をした人がいたんだよ」と伝えることを僕の個人的なミッションだと思っています。」
内田樹(1950.9.30- )
『日本習合論』ミシマ社 2020.9
p.230「第七章 日本的民主主義の可能性」

読書メーター
内田樹の本棚(登録冊数24冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091557

https://note.com/fe1955/n/na4445be3cde9
内田樹(1950.9.30- )
石川康宏(1957.3.28- )
『若者よ、マルクスを読もう
 III アメリカとマルクス 生誕200年に』
かもがわ出版 2018年9月刊
286ページ
鹿島茂 (1949.11.30- )他
『この1冊、ここまで読むか! 深掘り読書のススメ』
祥伝社 2021年2月刊
鹿島茂・内田樹
「『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』」

https://note.com/fe1955/n/n9f3aed8b84bd
内田樹(1950.9.30- )
『そのうちなんとかなるだろう』
マガジンハウス 2019年7月刊
240ページ
『街場の芸術論』
青幻舎 2021年5月刊
282ページ


https://note.com/fe1955/n/n70a0640fcca0
内田樹(1950.9.30- )
『日本習合論』
ミシマ社 2020年9月刊
296ページ
内田樹
安田登(1956- )
『変調「日本の古典」講義
 身体で読む伝統・教養・知性』
祥伝社 2017年12月刊
296ページ

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