平川克美

【百科詩典】ろじうらでかんがえる【路地裏で考える】

山里の人気ない町に建つ古民家を見ていると、それが今ここにある世界と、すでにここに存在しない過去、そして未だここに存在し得ない未来を繋ぎ止める門のようである。
過去と未来を架橋するのは、経済原理の外側に自らの足場を築いているものたちである。
現在隆盛の価値観からすれば、敗れ去りしものたちである。
しかし、彼らがもし存在しなければ、現在と過去、現在と未来を結びつけ、和解させる靭帯をも失われてしまうだろ

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【百科詩典】おい【老い】

「老い」は、若さを争う競争に破れた結果などではなく、人間の寿命というものを完成させるための最後の段階であり、生と死を和解させるべく、生物に備わった力なのではないかとさえ思う。
そのことを理解するには、金銭至上主義的な思考から離れなければならない。
やせ我慢でも、「大事なのはお金じゃない」と言わないといけない。
そうでなければ、「老い」の価値を見出すこともできないだろう。

〜平川克美『路地裏で考

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【百科詩典】へいせいのしょうひしゃ【平成の消費者】

平成の時代に、一億総中流であると自覚した日本人の多くは、「消費者」こそが主権者であると時代に持ち上げられ、「消費者」こそが自由な「個人」であると消費生活を謳歌した。
これから先、自ら進んで孤立化し、自己責任論を振りかざす「消費者」というものが、実は大企業者、為政者によって作り出された使い勝手の良い「顧客」であるに過ぎないことに気がつくことがあるのだろうか。
それには、この国に「消費者」個人主義が出

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【百科詩典】しじょう【市場】

市の発生が、共同体というセーフティーネットから落ちこぼれた人々や、共同体の法を犯したり、共同体のルールを超越する霊能者や、芸能者、異邦人たちが作り上げた辺境の逃亡の町であったというのは、網野善彦の胸のすく仮説だった。
そこは、共同体の掟や法権力が及ばないが故に、無縁の者たちが生きていける空間であった。
そして、この無縁の市で、人と人をつないでいるものは、唯一お金という無色透明な交換物であった。

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【百科詩典】しょうひしゃ【消費者】

(①週休二日制の実施、②実際の働き方の変化、③コンビニの広がり)
この三つの変化は、新たな階級としての「消費者」を大量に生み出した。
ここで言う「消費者』とは単に市場における消費行動をするもののことではない。
金さえあれば、誰からも命令されることなく自由に働き、自由に生活し、自由に余暇を楽しむことができることを内面化したものの謂である。(中略)
「消費者」が持った解放感は、日本の歴史上稀有のものだ

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【百科詩典】ふろ【風呂】

箒で掃いたような雲と青空の下で、素っ裸になって湯あみするのはまことに心地がよい。
生きていることに感謝したくなる。
素っ裸がいいのである。やはり、風呂だなと思う。
すべての財産を失い、素っ裸になっても、湯に浸れば、幸福感に浸ることができるのだ。
~平川克美『21世紀の楕円幻想論』

若者におくる生き延びるための知恵〜『転換期を生きるきみたちへ』

◆内田樹編『転換期を生きるきみたちへ ──中高生に伝えておきたいたいせつなこと』
出版社:晶文社
発売時期:2016年7月

社会のさまざまな分野で綻びが目立つようになってきた昨今、既存の考え方では通用しない時代がやってきた、そのように言う人が増えてきました。
人はとかく自分の生きている時代を歴史的に過大に意味づけたがる習癖がありますから、そうした紋切型の認識には注意が必要かと思いますが、とにもか

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「戦争の加害者に一切言及せずに、戦争の暴虐を憎むなどということが何故言えるのか」──内田樹他『日本の反知性主義』

「テレビ界に巣食う「台本至上主義」は、僕には一種の「反知性主義』のようにみえる。そしてそれは、実はテレビ番組の世界に限らず、日本社会に蔓延している態度ではないか、と思うのだ」(想田和弘さん)

想田さんのいう「台本主義」とは〝先に〇〇ありき〟という思考態度のことです。例えば「「先に有罪ありきの」司法制度(略)「先に点数ありき」の教育制度、「先に移設ありき」沖縄米軍基地問題、「先に書き換えありき」の

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