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#056 スカンノへの旅 (その4) よくしゃべる人たち

 スカンノの人たちはしゃべるために生まれてきたのではないかと思わされるくらい、よくしゃべる。
 しゃべることが人生の喜び。
 しゃべることが生きていること。

 シエスタが終わり、4時を過ぎると人々は広場に集まってくる。広場まで行けない人は家の近くの空間。通り過ぎる人に声を掛ける。多くの人は「ボンジョルノ」と言うより「チャオ」と言う。
 「こんにちは」も「チャオ」。「じゃあ、またね」も「チャオ」。
 「チャオ」「チャオ」「チャオ」「チャオ」
 「チャオ」だらけ。
 大きな声で、笑顔で、声を掛け合いながら歩く。それが石造りの建物に反響して重なり合う。
 「チャオ」の後のおしゃべり。声が大きい。
 若者の元気な声、年配者の渋い声、女性の華やかな声、男性の低い声、赤ちゃんの泣き声。
 広場のフェンスに両手を乗せて、4人の男性がしゃべり合っている。いつも同じ顔触れだ。幼馴染なのかもしれない。
 まるで洪水のように様々な声が町中に飛び交う。人の声が、石畳の上に、建物と建物の間にあふれる。こんなにも人の声があふれている町が日本にあるだろうか。

 声の洪水の中で、椅子に座り、一人で、誰ともしゃべらず絵を描いている私は、ああ、こんなにも違いがあるのかと、文化の違いが羨ましくも思えた。

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