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#062 スカンノへの旅 (その9) 少女との交流

 「おじちゃん、何やってんの?」(たぶん)
青色の服を着た少女が立っていた。
「おじちゃんねぇ、スカンノの建物の絵を描いているんだよ」
「フーン、おじちゃん、どこから来たの?」(たぶん)
「おじちゃんはねぇ、日本から来たんだよ。ジャポーネ」
少女はイタリア語でペラペラ喋る。私は英語と日本語で喋る。
お互い、何を言っているのか分かっていない。
「何歳なの?」「この近くに住んでいるの?」「学校は楽しいかい?」
私は絵を描きながら、いろいろと話し掛けた。少女もいろいろと話してくれるが全く分からない。しばらくしたら「チャオ」と言って行ってしまった。
 すると、またやって来た。
「まだ描いてるんだぁ」(たぶん)
「そうだよ、難しいからね」
「日本て遠いの?」(たぶん)
「ああ、遠いよ。飛行機で10時間以上掛かるんだよ」
そのうち、いなくなった。
 一枚描き終えた私は、椅子を持って移動して、別の建物を描き始めた。
すると、少女が私を見つけて走って来た。
「おじちゃん、今度はここで描いてるんだぁ」(たぶん)
「ああ、この家も素敵だからね」
「おじちゃん、いっぱい描くんだね」(たぶん)
 再びいなくなったと思ったら、今度は自転車に乗ってきた。石畳の道なのに結構スピードを出して走っている。通行人にぶつからなければよいがと心配してしまった。
「ヘイ! 私のバイクだよ」(たぶん)
「オオ、格好いいね。でも、転ばないようにね」
「チャオ」と言って走っていってしまった。
 聞き慣れない言葉を喋る東洋人。道に腰掛けて絵を描いている人。少女にしてみたら、さぞや珍しいことだったのだろう。
 何度もやって来ては、何だかんだと喋る。スマホを持ってきて私の姿を写真に撮ったり、描いている絵の写真を撮ったりもした。言葉によるコミニュケーションは何一つとれなかったわけだが、不思議と何かが通じたのではないかと勝手に私は思っている。

 スカンノの道、建物、その写真やあの時に描いた絵を見るとき、少女のことを思い出す。青い服を着た、おしゃべりな少女だった。

撮影は画家の古山浩一さん


 

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