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#051 フェルマー出版社の花壇 <ユリ編>

 この場にユリを植えた記憶はない。ユリの種はヒラヒラと軽い。きっと近所から飛んできて、この場に芽生えた。咲いた花は結実し、種を作る。気がついたら、ユリの群生場となった。
 早朝、まだ薄暗い時間帯、この場に椅子を置いてユリの花を見る。ユリの花が呼吸している、その音でも聞こえてきそうな程に静かな時間が流れる。薄暗がりに浮かぶ乳白色のユリの花は妖艶だ。色も立ち姿もそれぞれ微妙に違う。藤田嗣治の絵の乳白色と結び付く。
 空が白々と明るくなってくる頃、私はユリとの対話を終え、郵便受けから新聞を取り出し、現実の世界に戻ってくる。

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