お尻を太くて長い棒でつつかれた話。

【1998年1月15日(晴)中国:三亜】

暑い。1月なのにこんなに暑いのは詐欺だ。

湛江港から船で約7時間(65元)で海口まで。そこから高速道路を使って「大豪華」と呼ばれるA/C、トイレ付で、ガイドと軽食サービスまである豪華バス(70元)で3時間の所にある海南島は三亜まで来た。宿はバスターミナル近くの招待所だ。(40元) 

街は南国特有の妖しさが漂いいい感じだ。夜になると起き出した野良犬とともに、目つきの怪しい若者が徘徊し始める。私も何度となく若者連中に卑猥な手つきで声をかけられたが、颯爽と軽くかわしておいた。

「シャオジェ、、、なんたらかんたら、、、」

と、妖しいヤツ等は小声で話しかけてきてくれるが、チェリーな私には何のことやら分からない。危険なハードボイルドの香りがする。封印した私のサイコガンを抜く羽目にならねばよいが、、、。所詮血塗られた運命か。

昼間は、ミニバスでちょっと奥まで行ってビーチで南の太陽を独り占めだ。

のんびりしたいのだが、初日に地元の少数民族の地元の美少女ヤンキー軍団に目をつけられショバ代にアイスクリームを毎日奢らせられる羽目になる。三亜のビーチに行く際は注意して欲しい。(ちなみにみんなノーパンである)

ビーチからの帰りに民族村に寄って「民族舞踊」を見て、踊っている麗しいお姉さんたちの生足に思わずサイコガンを抜きそうになったことはここに告白しておく。(下品)●3点 

夜の屋台は豪華絢爛だ、シャコ、蟹、海老、アサリ、ハマグリ、なんでもある。ウミガメ、カブトガニまである。

中国を独りで旅をしていると、こんなときだけ困る。中華料理は独りで食べに行くと2種類くらいしか食べることが出来ない。いつも中国はそうだ。
一人身や出戻りには酷く冷たい。

これを読んでいる皆さんは、中国で晩御飯を食べに行く際に最低でも4人は用意しておいて欲しい。そうすれば色んな種類のものが安く食べられ、そのまま麻雀にも突入できるからだ。

毎晩宿への帰り道、ビタミンを取るべく南国フルーツのマンゴーや、パパイヤ、マンゴスチンの並ぶ屋台で、私の好きなスイカを丸ごと買って一人で食べるという贅沢も忘れない。食はケチるべからずだ。

海南島では一日150元(約2千円だけど)は欲しい。

明日は中国の雲南省を目指すべく朝から移動の予定。結果論ながら、私は海南島旅行は結構オススメする。みんなは物価が抜群に高いリゾート地だから敬遠するけど。ただ、リゾートを目指して行くなら大した事ないのでプーケットにしたほうが良い。あくまで、中国にこの島が存在することが重要なのだ。

さしあたって、今の私にとって重要な課題は日焼けでボロボロに皮がむけた背中でどうやってバックパックを背負うかという事である。まったく旅は油断ならない。

【1998年1月18日(雨)中国:列車内】

お母さん、私は列車の中に立っています。すでに貴陽行きの列車に乗り込んで13時間もバックパックも降ろせぬまま立ちっぱなしなのです。(下ネタではありません。)

「春節」(旧正月)の一週間前だって事は知っていた。当然、民族大移動里帰り鉄人レースという事も。確かに寝台車なんかのチケットは取れてなかったし途中駅乗車でもあった。が、少し甘くみていた。ほぼ定刻どおりに私が乗る列車が入線してきて、列車のドアが開いて私は脱力した。

中国雑技団スカ?

入り口には人一人入る隙間も無いくらい混雑しているのは分かるが、縦方向にも人が詰まっている???? 肩車?どこかにぶら下がっている?分からない。混雑し過ぎて何がなにやら分からない。乗れるハズがない。私が脱力している間に列車は無情にも発車してしまった。おい!窓から足が出ている人が5人はいるぞ。駅員がそんな輩を長い棒のような物でつついて押し込んでいる。

とりあえず一時間後に来る列車に切符を振り替えて気合を入れなおしリベンジだ。

一時間半後、再度列車入線。今度は混みすぎて手つきドアですら開かない。

これはまずいのではないか?春節が終わるまで私は列車を待ち続けなくてはならないのではないか?このまま過ぎ行く季節と貴方の面影をいつまでも見送り続けねばならぬのではないか?まずい。それはまずい。

私は反射的に無理やり窓から乗り込もうとしていた人の頭に飛び乗り、荷物だけ先に列車内に放り込み、続いて窓から体を乗り入れた。列車内は6人掛けのボックスシートには立て横11人が腰かけて、更に椅子の下には3人程寝ていた。体が半分以上入らない。さっきの犬神家の一族のような人たちの気持ちが良く分かる。あっ!

痛てっ!おいっ駅員!そんな太い棒で俺のお尻を押し込むんじゃねぇ!

あっ!やめろ!痛いってば!あっ!やめりっ、、、。

お母さん、私は列車の中に立っています。すでに貴陽行きの列車に乗り込んで13時間もバックパックも降ろせぬまま立ちっぱなしなのです。

あと4時間もすれば目的地の貴陽に到着するはず。今日はみかんしか食べてないけど、到着したら美味しい物を食べるんだ。こんな頑張った移動のご褒美にバスタブ付の部屋に泊まっちゃおうっかっな。ルームサービスとかもよいな。ぐふふ楽しみだ。

さっきトンネルを通ったときに見た窓ガラスに映った自分の顔は、虚ろに半笑いであった。限界はもうすぐ。ソウルジェムが濁ってゆくのがわかる。

これだから旅はやめられない。

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