こんにちは、心臓フェチのHimmeli（ヒンメリ）です。
この数年間、Webアンケートや対面アンケートで数千人のフェチ話を伺ってきて、「フェチのカミングアウトで悩んでいる方が多い」と感じたため、今回はその内容についてお話したいと思います。

フェチを持つ皆様の中には「カミングアウトする派」と「カミングアウトしない派」があって、それぞれに独自の信念と主張を持っています。その思い入れはとても強く、一部のフェチ界隈では、その派閥いかんによって同じフェチ同士でも仲違いが生じてしまっている程です。そんなフェチのカミングアウトにについて、メリットやデメリットを含めて私見を述べていきます。

フェチに関する悩み

私が実施している「フェチを語る会」や「フェチアンケート」で性癖についてインタビューする際には、可能な限り以下についてお伺いするようにしています。

① そのフェチの魅力
② なぜそのフェチに目覚めたのか
③ フェチに関する叶えたい夢は何か
④ フェチで悩んでいることは何か

上記4つの質問の中で、最も回答率が高いのが ④ の悩みについてです。
① や ② の「なぜ自分がそれを好きなのか」を把握することは意外と難しいようで、「気がついたら何となく好きだった」という回答が半分以上を占めます。
一方、③ と ④ の「叶えたい夢」や「悩み」は具体的な内容を語りやすいようです。特に、マイナーなフェチを持つ方ほど回答率が高くなります。そして、その悩みの大半が「カミングアウトどうしようか困っている」です。

悩みを抱えている方が多かった特殊性癖とその概要

これらは、話を聞いた中で、カミングアウトに悩んでいる方が多かったフェチです。
（可読性の観点から、記事末尾に同じ内容をテキストでも記載します）

一般的な倫理観とそれに相反する自信の嗜好の二律背反に困っているケースが多いですね。「人の生死や障害、怪我や病気などについて好きっていうのって不謹慎じゃない……？」と、そういう悩み。好きなのに好きと言えない、つらいやつです。下記のようなフェチも悩んでいる方が多いです。

状態異常フェチや人外フェチ、出産フェチなどは単純に「絶対相手に理解してもらえないだろうから……」という諦めも入っているようです。なのでこうしたフェチを持つ方の多くは、SNSではフェチ専用の裏アカを作成し、同じフェチを持つ方同士で交流する、などしています。

心臓フェチ界隈でもそうして身バレを絶対に避けようとしている方がよく見受けられます。性癖を知人に知られたら恥ずかしすぎるその気持ち、分かりますよ……。私もずっと誰にも言わずに生きてきた時代があります。

でも、私は最近はそうしたことを気にせず、リアルでもオープンに「私は心臓フェチです」とお話するようになってきました。その理由、すなわちメリットは以下のようなものです。

フェチをカミングアウトするメリット３つ

① 自分の本質を伝えることは、相手への信頼を表している
私にとって「心臓フェチ」は無くてはならない存在です。心臓に関する夢を叶えるために生きているようなもので、「心臓が好きではない私」など考えられない程です。つまり、心臓フェチであることを相手に隠したまま接するのは、自分を偽って接することに他なりません。自分を偽り続けて他者と接する、もちろんそれが必要になる時もあるでしょうが、私はできるだけ本当の自分で相手と接するようにしたいと考えています。フェチが自分そのものを体現している、そのフェチのために生きているという方は私だけではないと思います。そんな方や、信頼している相手だからこそ本当の自分を知ってほしい、という場合はカミングアウトが重要になってきますね。

② フェチの夢を叶えられる可能性が向上する
自分のフェチを公にして情報発信を行う場合、その趣向に共感してくれる人やその筋の専門家などに出会える可能性が上がります。私の場合は、「心臓が好き」「不整脈が好き」「生の心臓を触りたい」とよく言っていますが、それによって循環器系の医師の方と知り合うことができたり、ジビエの解体を体験させてくれる猟師さんとの繋がりを得ることができたりしました。一人では実現が難しいフェチの夢を持っている方の場合は、こうして他の理解者を得て叶えるチャンスを狙うのも一つの手かもしれません。ただでさえ日常生活で不整脈に出会える可能性が低いのに、フェチを公言せずに毎日を生きていたら、理想の心臓に出会える可能性は天文学的確率になってしまいます。一生理想を追い続けるばかりで、夢が叶うことがない……そんな状況にはなりたくないため、私は積極的に発信を行うスタイルにしています。

③ アイデンティティを確立しやすくなる
フェチをカミングアウトすると、「なぜそれが好きなのか」「どこが好きなのか」を考える機会が増えてきます。前述のように、そのフェチのために生きているといった方や、フェチそのものについて悩んでいる方にとって、自己認知および自己肯定は重要なことです。自分の好きなことや夢について詳細に堂々と語れる方、芯が通っていて格好いいと思います。また、人によってはそれがそのまま個性になるでしょう。特にイラストや小説などの創作活動をされている方にとって、個性というものは非常に重要です。そうした表現の手段を持っている方には、特にカミングアウトがオススメです。

フェチをカミングアウトするデメリット３つ

① 他者の地雷を踏んでしまう可能性がある
私の場合、不整脈が大好きで大好きで仕方がないのですが、実際に心臓病や不整脈で悩んでいる方を目の前にした際には、カミングアウトするのを控えます。相手の身に立ってみると、それが好きなんてとんでもない、という感情を呼び起こしてしまうかもしれないためです。そうした方が相手の場合は相互理解が深まってからカミングアウトすることで、リスクを減らすことができます。もちろん、人によってはそれで喜んでくれる方もいます。私は過去、脳性まひの方にインタビューする機会があり、「脳性まひの方が好きなフェチの方が実際にいらっしゃるのですが、それって当人にとってはどう思われますか」と聞いたことがあります。最初はその方は戸惑っておられましたが、こうした理由で好きなようですよ、と説明すると「そうした背景があれば、私のこのような状態でも好いてもらえるのは嬉しいかもしれません」と納得していただいたようでした。

② 正対する派閥との摩擦が生じる可能性がある
一部のフェチ界隈では、その派閥いかんによって同じフェチ同士でも仲違いが生じてしまっていると書きました。これは、「そのフェチを全面に出して活動しているサークル」VS「SNS裏アカでひっそり活動している方たち」などの構図でよく見受けられます。フェチは性癖に関するものでありますから、「そのフェチを公の場に出すなんてとんでもない、公然わいせつみたいなものじゃないか！」という認識を持たれる方も一定数存在する訳ですね。私も心臓フェチとしてTVや各種メディアに出ることもあるので、私に対して良くないイメージを持たれている心臓フェチの方も勿論いらっしゃると思います。ただ、そこは私も前述したように色々悩んでカミングアウトすると決めたものです。個人の表現の自由の範囲内であり、好きなことを好きというのは悪くないのでは、と私自身は思っています。ただ、そうした「秘め事派」の方たちにも配慮して、「あくまでもこれは私の場合で、心臓フェチの方みんなが同じ訳ではありません」といった表現をするように心がけています。このスタンスを取れば、要らぬ争いを生むリスクは下げられると思っています。

③ 偏見の目で見られることがある
これが最も難しい部分ですね。私も、心臓フェチですと言うと「心臓を抉り取られそうで怖い」とか割と言われて割と傷付きます。いやまあ実際、心臓を鷲掴みにしたり針を刺したりとかやってみたいんですけどね……。フェチの内容によっては、頭がおかしいといったニュアンスのことを言われることもあるでしょう。ですがこれらは、フェチを語るときのメリット ③ によりアイデンティティを確率して自己肯定をしっかりできるようになれば、冷静に受け止めて「いや、それはそうなんだけど、でも実際はこうなんですよ」と冷静に返せるようになります。

フェチで悩んでいる方へのアドバイス

ここまで、カミングアウトのメリットとデメリットを述べてきました。読んでもらえれば分かる通り、デメリットにはそれぞれリスク低減の方法があります。従って、私個人としては、リスク低減策を講じた上でメリットを得るためにカミングアウトすることをオススメしています（実際は、自身のフェチの内容を鑑みてご検討くださいね）。

以下は、実際にカミングアウトを考えている方への具体的なアドバイスです。

・TPOをわきまえて、でも大胆にカミングアウトしよう
カミングアウトのタイミング、場所、相手には十分に注意しましょう。ほとんどの場合、よく見知った相手であればフェチを話した程度で引かれたり嫌われたりすることはありません。特に恋人など親密な相手の場合は、話さない場合の方がかえって後々「どうして今まで教えてくれなかったのかな……もっと早く知りたかった」と相手が困惑するケースがあるほどです。タイミングを見計らい、自信を持って話してみると良いでしょう。

タイミングとは、そのフェチに関する状況を作るのがオススメです。例えば私なら、「美味しい牛ハツのあるお店」などに行ってハツを美味しくいただきながら、「実は私、心臓がめっちゃ好きなんだよね」などと切り出します。

・客観的に見てまず問題ない言い方を考えておこう（特に性的なものである場合は、控えめな表現を意識する）
フェチの話を切り出すと、相手からは色々話を聞かれることになると思います。そのフェチが貴方にとって性的なものである場合、それを最初から白状する必要はありません。「心音を聴いていると落ち着くし、なんかこう、尊いと思っちゃうんだよね……だから心臓が好きなのかもしれない。心臓って可愛いと思う」くらいのニュアンスで十分です。こうしたカミングアウトであれば、客観的に見て、嫌われる要素は皆無ですよね。この、カミングアウトの内容を客観的に評価してみるのはとても重要です。そのフェチの方にとっては卑猥なことでも、他の人から見たら全く抵抗がない、ということも往々にあります。

仮に、こうしてカミングアウトをして相手から理解を得られなかったとしても、なぜそれが良いのか、どうして好きなのか、というところをちゃんと説明すれば引かれることはありません。この記事を読んで勇気が出た方は、カミングアウトについて意識してもらえれば幸いです。

本記事の内容はここまで。
以下は今後のフェチ関係のイベントなどのご案内です。
私のフェチに関する活動全般についてはこちらの記事をどうぞ。

イベント案内1：心臓を食べる会

3/14（土）13:00～15:00　都内にて第二回心臓実食パーティを開催予定です。場所は現在調整中です。第一回の様子などに興味がある方は上記イベントレポをご参照下さい！

イベント案内2：フェチマッチングパーティー

街コン事業の大手 Rooters 様との特別コラボ企画の「フェチマッチング」パーティーです。
3/1（日）16:00-18:00　　女性 ￥2700　男性 ￥5400 　場所：青山
パーティースタイルビュッフェで軽食やドリンクを楽しみつつ、お互いにフェチを語って親睦を深めるパーティです。フェチのワークショップもあります。Rooters様では特別企画として設定くださっており、多数の方が注目して下さっているそうです。各種メディアにも情報発信中です。こちらも詳細は上記心臓実食パーティレポ記事の下部に記載しています。または、下記より詳細をご確認いただけます。

その他告知：Abema Prime (AbemaTV) 再録出演

私が開発運営しているフェチのマッチングサービスfetiquette（フェチケット）が2/21（金）21:00～ 放送のAbemaPrimeにて取り上げていただけるようです。また、過去にフェチの話で登壇した際の再録も同時に放送されるそうです。なんか堅苦しいことを言っていた気がするので少し恥ずかしいのですが、もし宜しければチェックしてみてくださいね。

付録：特殊性癖解説表のテキスト

・死/死体フェチ
タイプA - 内向き
死そのものに惹かれるタイプ。人間が「死んでいる状態」の方が、「生きている状態」よりも自然なものに感じることも。劇的な死ほど、人生の儚さや遺族の悲しみが伝わってくる。人間という生命が「モノ」に変わる瞬間に魅力を感じる。死に対してポジティブなイメージを持っている。

タイプB - 外向き
遺体に惹かれるタイプ。睡眠、気絶、泥酔、昏睡中の相手に性的興奮を覚える「意識消失性愛」の局地。相手を支配したい、または、自分に自信がないという意思から発生するケースがある。人によっては、死への意思を感じる自殺体が良い、悲壮感あふれる他殺体が良いといった好みがある。

・人体改造/欠損フェチ
タイプA - 内向き
自分を改造したいタイプ。舌を2つに割るスプリットタン、皮膚の下にシリコンを入れ込むインプラント、マイクロチップを体内に埋め込むボディハッキング、タトゥーなど。信念や主張、あるべき姿を自らの身体を使って主張する。このタイプの方も「手や指がない状態」こそ、自然（理想の自分）だと感じていることがある。自分の指を紐で縛って壊死させて切断する方も。

タイプB - 外向き
鑑賞したり意図を感じ取りたいタイプ。欠損フェチの方いわく「腕や足が途中で途切れて丸くなっているのが最高に可愛い」。タトゥーやピアスは本来、異性を惹き付けるためのもの・呪術的意味をもつものであるため惹かれる方が多いそう。皮膚に切り込みや焼き込みをいれて傷跡（ケロイド）で模様を描くスカリフィケーションの手触りも人気。

・骨/骨格フェチ
タイプA - 内向き
骨を折られたりするのが好きなタイプ。このタイプは少数だが、聞くところによると、最高の折られシチュエーションは「好きな人と一緒に手をつなぎながら映画を見ていて、クライマックスシーンで集中している際に不意打ちでボキッと小指の骨を折られる」とのこと。

タイプB - 外向き
骨を折ったり触ったりするのが好きなタイプ。人体の骨格の場合は、ガリガリであればあるほど、そのゴツゴツ感を手で感じられて良いらしい。青少年の「今まさに成長中」という状態の骨を特に好む人もいる。折りたい派の人は、折れる瞬間の音や感触が好きな模様。

・人肉フェチ
タイプA - 内向き
自分の肉を食べられたいタイプ。広義では丸呑みフェチ（Vore）に近い。好きな人の体内に入りたい、融合したい、消化されたい、といった要望から派生する。他者の肉は食べると犯罪チックだからという理由で自分の肉を食べている人もいる。

タイプB - 外向き
人肉を食べる行為そのものに惹かれるタイプ。こちらも好きな人と融合したい、から来ていることが多い。美味しく食べるのが大事だよ派、好きな人の体の一部ならそのままいけるよ派などがある。ゾンビ映画とかで触発されやすい。ちなみに古代中国では幼少期から桃のみ食べさせて育てる桃娘という存在が合った。その体液、人肉は甘美であったそうな。

・状態異常フェチ/形状変化フェチ
ゲームや漫画に登場する「状態異常」やカートゥーンアニメでよく見られる「形状変化」に萌えるフェチ。人気の状態異常は時間停止、石化。これらは拘束・緊縛に通ずる良さがあるらしい。石化は「服まで石化するよ派」と「服はそのままで肉体だけ石化するよ派」に分化し、さらに石化中も意識があるよ派、ないよ派などに枝分かれしていく。人気の形状変化は液状化、気体化。可愛いキャラがどろどろの液体状になっている様子がとてもそそるらしい。

・出産フェチ
そのものズバリ出産が性的興奮の対象のフェチ。意外にも女性が多い。生殖本能として、出産シーンに感動しやすい仕組みがあるのだろうか。出産の魅力は次の通り。「苦しむ産婦さんの顔や声や動き、息む度に徐々に出てくる赤ちゃんの頭や体、添えられた助産師さんや医師の手、溢れ出る血と羊水、臍の緒が繋がったままの赤ちゃんがあげる大きな産声、赤く腫れた秘所から垂れ下がる役目を終えた臍の緒、ゆっくり排出される赤黒い胎盤、大仕事を終え我が子を抱きしめるお母さんの笑顔など、1から10まで全てが魅力的です」（宛メより）

・病弱フェチ
女性が多め。入院生活が長くて虚弱体質、白磁のような肌になった異性に尊さを感じるとのこと。人によっては点滴を受けている様子や酸素マスクを着けている様子、喀血の様子などがドハマリ。内向きとしては「心停止から蘇生まで受けてみたい」という方も。パートナーが重い病気を患ってしまった場合に心の中では萌えまくるのだが、相手に申し訳なくて打ち明けられない、というケースが多い。病気を含めて愛するのってアガペー（無償の愛）感あって素敵ですよ。

・人外フェチ
バイオハザードに出てくるようなゾンビやクリーチャー、各種映画の異形の怪物、怪獣映画の怪獣などが推しのフェチ。広義では人形や車に恋するのとかも入るかも。これも私の知る限りでは女性が多い。有名所ではエイリアンやヴェノム、シェイプ・オブ・ウォーター、ゴジラなどに思い入れが強い人が多い。

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