嶌山景「ロベール・パンジェ『パッサカリア』を読みながら考えたこと」
十代の終わり頃から、刺青が好きでいる。といって私の身体にはひとつの刺青も彫られてはいない。ひとの身体に彫られたものを見たり、タトゥーアーティストの作品を検索しては惚れ惚れと眺めたりするのが好き、ということだ。いずれ私も彫ってもらいたい、とはずっと思っているが、いまのいままで先延ばしにしてきたのはきっと、刺青のもつ絶対性、一回性にビビっているからなのだろう。そこにこそ刺青の美学が詰まっているというのに、我ながらおかしな話だと思う。けれど『刺青・性・死』を著した国文学者の松田修