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とある架空の形質転換実験について

molbio08先生の架空の実験のおはなし

もう消してしまわれたのですが、molbio08先生がこんなツイートをしていました。

molbio08先生のツイート(もう消されてます)

あくまでも架空の実験です(笑)
ワタシは工学部卒業で、今はITコンサルタント。生物は選択してなかったのでちんぷんかんぷんだったのですが、わからないなりに調べて、一連のmolbio08先生のツイート内容もだんだん理解してきました。(多分に勘違いがはいっているかも(;'∀'))

大腸菌を使ってDNAを増やそう!

その前に、大腸菌を使ってDNAを増やすということはどういうことなのかを簡単に。大腸菌はプラスミドという環状のDNAを取り込んで、プラスミドを体内で増やすという変わった性質があります。
mRNAはこのまま作成・大量生産は難しいので鋳型となるDNAとして大量生産してからmRNAとして取り出されます。この大量生産する仕組みとして大腸菌の性質をつかうのです。

プラスミドにmRNAの鋳型になるDNAを導入する

つまり、プラスミドに「mRNAのもとになるDNA」をぶち込んでそのプラスミドを大腸菌に取り込ませてやれば、バシバシ増やしてくれるというわけです。(どうやってプラスミドにDNAを導入するの?というのはここでは触れません・・)

大腸菌でプラスミドを増やすみど

さらに、大腸菌自体を増やせば、最初に作ったプラスミドを何倍、何千倍、何億倍にも増やすことができます。そこからプラスミドを取り出せば、目的のDNAを大量に手に入れられます。しかし、大腸菌にも個性があるらしく、プラスミドを取り込みやすいものもあれば、そうでないものもある。なので効率よく選別する必要があります。つまり、プラスミドをうまく取り込めた大腸菌だけを取り出す必要があります。

そこで利用するのが抗生物質です。カナマイシンもそのひとつ。実は、プラスミドにはカナマイシンなどの抗生物質に耐性のある耐性遺伝子が事前に組み込まれています。(つまり、カナマイシンに強いってこと)
モデルナは公開をやめてしまったのですが、ファイザーがmRNAを製作するのに使ったプラスミドのベクターマップが公開されています。下図のKanRの部分。これがカナマイシン耐性遺伝子です。

ファイザーが公開しているプラスミドベクターマップ

カナマイシンは簡単に言うと、大腸菌にとって毒です。
この毒のカンテン培地にプラスミドを導入した大腸菌を撒いてやれば、プラスミドを取り込んでカナマイシン耐性をもった大腸菌のみが培地で生き残ります。生き残った大腸菌を取り出して、さらに増やしていけばどんどん目的のDNAを持ったプラスミドが手に入というわけです。
このようにプラスミドを取り込むことができた大腸菌は新しい機能を獲得します。本来持っていない機能を外部のDNAを取り込むことで獲得することを「形質転換」と言います。ただし、形質転換はプラスミドを取り込むことだけで起こるのではありません。大腸菌は1本の大きな環状のDNAを持っていますが、大腸菌自体が外部のDNAを取り込む変異を起こすことがあります。これも形質転換です。

さて、ここで問題です。

molbio08先生のツイートに戻ります。

molbio08先生からの問題

問題1:大腸菌を外から遺伝子導入してカナマイシン耐性にできるのは、カナマイシン耐性遺伝子を持っていて大腸菌で複製可能なプラスミドDNAを大腸菌に入れた時だけ。この文章は正しいでしょうか?

これまでの説明を読めば答えはわかります。
答えは「正しくない」です。上で説明したように、大腸菌はプラスミドを取り込むこと以外に、大腸菌のゲノムに直接カナマイシン耐性遺伝子を取り込んだ場合も同じくカナマイシン耐性大腸菌ができます。これって実際どういうことが起きているのでしょうか?

今、「ワクチンには細かく断片化されたDNAがたくさん残っているのではないか?」という疑惑がもたれています。mRNAはDNAを鋳型にしていて、そのDNAはプラスミドに組み込まれているという話をしました。そのプラスミドにはカナマイシン耐性遺伝子も含まれています。考えられるのは、プラスミドのカナマイシン耐性遺伝子部分が破壊されずに残っている可能性です。
プラスミドはDNaseIという酵素でバラバラに破壊されます。この破壊が完全に行われていないと下の図のようにカナマイシン耐性遺伝子部分がDNA断片として残っているのではないか?という推測です。

mRNA作成に使われたプラスミドがバラバラに破壊されるイメージ
カナマイシン耐性遺伝子は運よく破壊されていない

上の図のように、たまたま、カナマイシン耐性遺伝子が破壊されず残っていた場合は、大腸菌に取り込まれる可能性が出てきます。これは低い可能性ながら、プラスミドの実験現場においてはたまに起きるようです。特に、今回のワクチンは細胞に入り込みやすいLNPに包まれた形になっています。DNA断片がのこっているとしたらLNP内に存在していることになり、大腸菌にも取り込まれやすくなっていることは容易に想像できます。
これを確かめるのは簡単です。カナマイシンプレートに出てきた大腸菌をカナマイシンのDNAをターゲットにPCRすればいいのです。この大腸菌からプラスミドが回収できず、PCRが陽性なら大腸菌がカナマイシンをゲノムに取り込んだと考えられます。

架空の実験を題材に考えてみます

ふたたび、molbio08先生のツイートに戻ります。(ここからが本当の架空の話です)

架空の物語スタート

この結果からは、
① 全長プラスミドが残っていて大腸菌に取り込まれた
②カナマイシン耐性遺伝子が大腸菌のゲノムに取り込まれた

のかは、まだわかりません。

なんだかドキドキします

カナマイシン培地で増えた大腸菌からはプラスミドが回収できませんでした。

偽陽性と判断した模様

カナマイシンプレートで偽陽性になってしまう話はにゃんこ先生が動画上げていましたね。培地のカナマイシンをケチったり、放置時間が長いとカナマイシンが薄くなって耐性がなくてもコロニーができる場合があるそうです。
この先生は「何かの間違い」と判断したみたいですが、できたコロニーの大腸菌にPCRすればいいのに・・・(;'∀')

molbio08先生はこのツイートの後ろの方で質問を受け付けていて、それに対する回答として次のツイートをしています。

あの実験の意味は何だったのか?という質問に対する回答

全長のプラスミドは、あくまでも大腸菌のものであって、ヒトの細胞には全く関係がありません。DNAの断片ががワクチンに残っているかを調べるのが目的だとすると、あまりにかけ離れた実験です。(補完的にやるならまだしも・・・)あと、カナマイシン耐性遺伝子の長さが、もしも残っているとしたら、それよりも短いSV40プロモーター遺伝子が残ってる可能性は益々高いよねっていう懸念が膨らみます。

反ワク界隈ではいまDNA混入について対立が起きていますが、両陣営とも「このワクチンの中にはDNAが残っている」という点においては共通の認識を持っています。であれば、もう「どんなDNAが残っているのか?どれだけ残っているのか?」を調べればいいんじゃないですかね?日本の研究チームは公式なワクチンが手に入るそうなので早くそこに取り掛かってほしいなと思います。

今回の架空実験を通して、今後出てくる情報への理解が深まればいいなと思います。

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