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私が考えるフィドルのビジョン

Tokyo Fiddle Club 時代のフィドルセッションの様子を伝えるアイルランドの雑誌が出てきました。日本では私以外誰も読んでいないと思うので、ちょっと訳してみます。


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Tokyo Fiddle Club

2005年に Tamiko によって設立

(記者が)数月前に東京のアイリッシュパブ、ラウンドストーンを訪れたところ、若者から年配まで日本人フィドラーたちの非常に大きなグループが行っているアイリッシュミュージックセッションに遭遇した。そこでは女性数名がアイリッシュダンスも踊った(訳者註:長女がステップダンスを披露した)。後で彼らと話したところ、アイリッシュ、スコティッシュ、スウェディッシュ、イングリッシュ他のフィドル音楽を演奏する Tokyo Fiddle Club というグループで、これが毎年恒例のパブセッションであるということだった。Tokyo Fiddle Club の誕生とそれがどのように発展してきたかをお伝えする。

Tamiko は5歳の時、バロック音楽の若きビオラ奏者だった李善銘氏 Li Shanming の指導の下、ヴァイオリンを始めた。音楽大学への道を選ばず国立大学の理系に進学しても、アマチュアオーケストラのメンバーとしてヴァイオリンを続けていた。

2002年にロンドンのインペリアルカレッジで PhD.(博士号)を取得するために2年間の研究を始める夫に伴って、Tamikoは子供たちとイギリスに移り住む。日本を出立する直前に、彼女はどういうわけか漠然とした衝動を感じ、手荷物のリストにヴァイオリンを加えた。

ロンドンに引っ越しして音楽の好機はすぐにやって来た。彼女は、成人教育(訳者註:イギリスの国民向けの生涯教育プログラム)のガイドブックのなかに「フィドル」という文字を見つけた。彼女はその言葉を聞いたことがなかったが、それがヴァイオリンと同じもので、なじみあるクラシックのメソッドとは全く違うものだということが分かった。

Tamiko は教師を探し、ロンドンのカムデンタウンにあるセシル・シャープハウスで「ロンドンフィドルスクール」を運営する経験豊富なフィドル奏者のピート・クーパー氏を探し出した。彼女の熱意は高まり、グループレッスンと個人レッスンを並行して受講し、ロンドンでの限られた時間の中で、できるだけ多くの曲とテクニックを吸収しようとした。

彼女は、ロンドン、エディンバラ、ウイットニー(オックスフォードシャー)、ニューキャッスルで開催されたフィドルのワークショップに参加した。彼女はまた、アイルランド、スコットランド、シェットランド、イングランド、ウエールズ、カナダ、スウェーデン、アメリカ、東欧など、さまざまな国や地域のプレイヤーからさまざまなフィドルスタイルを直接学んだ。

日本は20世紀以降、多くの優れたクラシックヴァイオリニストを輩出してきたが、西洋の伝統的なフィドル音楽については、日本に紹介されたのはつい最近になってからである。

最も成功したアイルランドのバンドのひとつである「チーフタンズ」は1991年、「アルタン」は1997年、「リバーダンス」は1999年に初めて日本でツアーをした。

Tamiko は、アイルランドの伝統的なフィドル音楽を日本の人々に紹介し、生涯教育(lifelong education)としてフィドル演奏を楽しんでもらいたいと考えるようになった。彼女はまた、フィドルの曲は、クラシックヴァイオリンよりも簡単に演奏できるため、多くの日本のヴァイオリン愛好者たちを喜ばせることを知っていた。

帰国後、Tamiko は、Tokyo Fiddle Club(以後 TFC )を組織し、東京とその近郊でグループや個人に伝統的なフィドルを教え始めた。学ぶ人は、学生や若い人、年配の人まで、まったくの初心者から経験豊富なプレイヤーまでさまざまである。Tamiko は、大人の初心者を教える独自の方法を開発した。
TFCでは、12月にフィドルパーティー、8月にパブセッションの年2回のフィドルイベントを開催している。TFC のメンバーはまた、お祭りや町内コンサートなど、日本のさまざまな公の場で伝統的なフィドル音楽の演奏の機会を見つけている。

Tamiko は、2008年と2010年に、ピート・クーパーを日本に招待し、東京、大阪、小諸(長野県)でフィドルのワークショップやコンサートを企画した。ピート・クーパーは作家でもあり、さまざまなフィドルスタイル関する書籍をすでに多数出版している。メル・ベイ出版の『Complete Irish Fiddle Player』は、世界で最も人気のある彼の教則本であり、Tamiko は、これを日本初のアイリッシュフィドルブックとして出版するつもりでいる。(訳者註:2022年に『フィドルが弾きたい!アイリッシュフィドルを完全制覇する80曲』音楽之友社刊として実現)

TFC は日本のヴァイオリンアマチュアに素晴らしいフィドルの世界を提供し続けている。

(TK/COL記者)『Carn』ゲール語連盟発行誌 No.148 2010 冬号


『フィドルが弾きたい!』のレパートリーをみなさんが学んでくれたら、また、この記事のようなフィドルセッションもまた出来ますネ!


トップ画像:右端の後ろ向きで映っているのが私です。左側に10人ぐらいフィドラーが見えますが、実は私の右側にも同じぐらいフィドラーがいます。

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