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Fieldism必聴新曲リスト October 2023 (Part.1)



前回の新曲特集はこちらから↓


 最近仕事が多忙かつ体調がすぐれておらず、なかなか更新できてなく申し訳ありません。いつもお世話になっております。Ryotaです。

 すでに半月経っており今更って感じですが、NEX_FEST凄まじかったですね。幕張で行われた本チャンはプライベートで先約が入っていて参加できませんでしたが、EXTRA SHOWの神戸には行きました。

 個人的にSCREAM OUT FESTIVALやONE AND ONLY FESTIVALを超えた規模のライブには今まで行ったことがなかったのですが、トッパーのI Prevailから大トリのBring Me The Horizonまで世界で活躍しているアーティストのパフォーマンスに圧倒されっぱなしでした(ライブレポは自分よりも詳しく書いている方がいるはずなのでそちらを見てみてください)。


前置きはこれくらいにして、今回も行きましょう。

リストアップの条件ですが、下記2点です。
1. 10/1~10/14にフィジカル/ストリーミング/DL販売/MVのいずれかが解禁された作品(基本的により多くの人にアクセスできる手段を優先します)。
2. フルアルバム or EPのリリース時期がある程度明確にアナウンスされている作品の先行シングル、および既存楽曲のリマスターやカバー等は選出対象外。ただしアルバムのデラックス盤のみetc.に収録予定の楽曲は選出対象。

Good Grief - SAD STATION

アルバム (10/1)

 ''Tokyo Sad Boys'' を掲げるポップパンクバンドのデビューアルバム。それは軽快でキャッチ―ながらも所々哀愁を漂わせるサッドなメロディ & Vo. Yasuのエネルギッシュなボーカルをはじめ各メンバーのキャラ・バックグラウンドを際立たせたサウンドが魅力のバンドで、2021年に現体制で再始動してから注目度はうなぎ上り。今年はアルバムリリースを発表する前にホームの渋谷THE GAME ''SAD STATION'' & 新宿HEISTで ''EVERGREEN'' といった自主企画はじめ精力的なライブ活動には目を見張るものがありますが、昨今では #Sadポイント なるハッシュタグが話題になったのも記憶に新しいです。

 1stアルバムとなる今作 ''SAD STATION'' は、2016年の結成からの7年間の軌跡と彼らが飛んでいきたい世界目掛けて築き上げた集大成的作品で、先行でリリースされた ''July feat. Dyezo (NO BRIGHT GIRL)'' ''Feather''含めた全10曲を収録。切なく輝くメロディと悲しみに寄り添うようなリリックがリスナーの胸を鷲掴みにします(Yasuのnoteでセルフライナーノーツを上げてるので未読の方は是非)。楽曲の中で最もアグレッシブなTr.4 ''MAKE OR BREAK'' にはAzamiのVo. 石井純平が、Tr.7 ''BORN2RUST'' ではC-GATEのVo. Nashunと盟友も客演で参加していますが、個人的に一番好きなのはTr.6 ''FIREWORKS IN HEAVEN''。Gt. So-taのギターソロも聴きどころですが、この曲はエピソード込みで聴いてほしいです。

 現在今作を引っ提げてレコ発ツアー中で12/9には渋谷Club Asiaで過去最大規模の自主企画 ''SAD STATION FEST'' を開催するGood Grief、筆者も先日ツアー大阪編行きましたのでそのうちライブレポが上がります。


Betraying The Martyrs - GODSPEED

シングル (10/4)

  キーボードをフィーチャーしたフランス・パリを拠点に活動している6人組デスコア・メタルコアバンドの最終シングル。現ten56.のVo. Aaron Mattsが在籍していた2019年は来日したこともあり日本でも知名度はある方だと思います。その後後任Vo.となるRui Martinsが加入しEP ''Silver Lining'' をリリース。複雑さ・難解さが無くなりよりシンプルな破壊力と荘厳なアトモスフィアを強調させた作風はより深みを増したメロディとオルタナティブ・メタルに傾倒したサウンドを提示していました。

 「経済状況の悪化やツアーコストの増大が与える影響により、もう一緒に前に進む力はない」として解散を発表し、15年間の活動に終止符を打った彼らが遺作としてリリースした今作 ''GODSPEED'' は、柔和さと不穏さを伴った静かなピアノサウンドと、荘厳なシンフォニック要素とローチューニングバンドサウンドの繰り返しが地獄の始まりを予感させるインストTr.1 ''IRAE'' 、そして前作 ''Silver Lining'' の作風を踏襲した、迫りくる壁のような圧迫感とヘヴィネスを押し出した ''THE VEIL'' の2曲で構成されています。リリースと同時に公開された2曲7分のミュージックビデオも彼らを象徴する重苦しさと妖しさを兼ね備えていて美しいです。

 フロントマンが変わるとバンドの作風と合わなくなることはまあまあありますが、少なくともRuiはAaronの後任を全うしただけでなくバンドというパズルに必要だったピースをしっかり持っていた印象です。


VII DAYS REASON - Spiky

アルバム (10/4)

 福岡・北九州市を拠点に活動しているポップパンクバンドのデビューアルバム。ポップパンクを始めエモ/メタルなど様々な要素をとりいれた、重厚感ある骨太なサウンドとキャッチーな歌メロ、そして恥ずかしくなるくらいストレートな感情表現を日本語詞で歌い上げる作風が特徴的なバンドです。筆者はGt. BULLがデスコアバンドPOSTHUMANITYで活動していた所から派生してこのバンドを知ったのですが(現在はすでに脱退)、実際にライブを観たのは一昨年の秋。しかし最近筆者がポップパンクのライブに行く機会が増えているのでこれから観る機会が多くなると思います。

 昨年末に東京から福岡へ帰郷したGt. ガトリングコンボイ (ex-Same Old Same Old)を迎え新体制で始動した彼らが満を持してリリースしたデビューアルバム ''Spiky'' は、「良いことも悪いこともひっくるめて、今回のアルバムはそれぞれ色々な人のいろいろなところに刺さって欲しい」という思いで制作されており、''Youth'' ''命短シ恋セヨ乙女'' など過去曲の再録を含めたバラエティー豊かな全11曲を収録。Vo.けんたまが紡ぐストレートなリリックとは裏腹に、ベースラインやギターのフレーズは結構ひねくれていてそれがどのバンドにも形容できない個性を醸し出しています。すでにリリースされたから何度かライブ観に行ってますが、Tr.9 ''Happy spikes'' とTr.10 ''Khajiit'' はシンガロングできるパート多数で楽しいです。

 ちなみに「そのうちライブレポを上げる」って言ってた先述のGood Griefのアルバムリリースツアー大阪編はこのバンドのアルバムレコ発とダブルヘッダー、なんなら来週末のUNMASK aLIVEのONE AND ONLY FESTIVALでまた両バンドとも観ます(うれしい)。

Svalbard - The Weight Of The Mask

アルバム (10/6)

 イギリス・ブリストルのポストハードコアバンドの最新シングル。ハードコアやクラストを下地に、ブラックメタル、ポストロック、シューゲイザーを混合したサウンドを武器に活動しており、鋭く突きさすような洗練された音像と空間的でしなやかなレイヤー、そして怒りと痛みを表現したVo. Serena Cherryのシャウトと慈愛に満ちたクリーンヴォイスのコントラストで人気を博しており、2019年には初来日 & 2020年にリリースされた前作 ''When I Die, Will I Get Better?'' はその年のMetal Hammer誌のベストアルバムにも選出されました。

 前作から約3年、バンドにとって一つの夢であったNuclear Blast移籍後初のリリースとなる4thアルバム ''The Weight Of The Mask'' では、前作で顕著だった社会に対する問題提起よりはうつ病や精神疾患などセリーナ個人が抱えた苦悩と闘争を深く掘り下げた作風になっており、大枠となるサウンドは変わらないものの安易な消費されることを許さない誠実さと力強さとドラマ性を放っています。それでもTr.3 ''Defiance'' や Tr.7 ''Be My Tomb'' あたりは近年のenvyを彷彿とさせるシンセサイザーやヴァイオリンを取り入れていて暖かみを感じるため重苦しさ一辺倒ではないのもポイント。最後のTr.9 ''To Wilt Beneath The Weight'' の大団円感じる突き抜けたような展開も見事です。

 先行でリリースされたTr.2 ''Eternal Spirits'' はSerenaのルーツであるSlipknotの元ドラマーJoey Jordisonはじめ、先立ったメタル界の英雄たちへのリスペクトを込めた楽曲。冒頭の''Your legacy lives in our hearts''が全てを物語っています。


Calls Name Again - Chiaroscuro

EP (10/6)

 北海道・室蘭を拠点に活動しているラウドロックバンドのデビューアルバム。CVLTEHIKAGEを始め近年隆盛著しい北海道のシーンでは若手の筆頭的存在で、筆者が9月に大阪に呼んだVOMIT OUT RESTRICTIONとも親交が深いバンドです。以前からmildragePaleduskやAzamiの道内ツアーのサポートアクトを務めたり、C-GATEを招聘した自主企画がソールドアウトしたりと精力的なライブ活動を行ってきましたが、最近道外にも進出を果たしていることでさらなる注目を集めています。北海道にはCRYONIKSLost Back'Pointなどオルタナ要素を持つバンドがいくつかいますが、今その中でも最前線を走っているのはこのバンドでしょう。

 待望の1stアルバム ''Chiaroscuro'' は、先行シングルとしてリリースされていた ''SPREZZATURA'' ''glitter'' を含む全7曲を収録。Calls Name Againといえば重低音のコントラストやスケールの大きいシンセワークを用いたモダンなバンドサウンドに、IssuesのTyler CarterやDance Gavin DanceのTillian Pearsonに通ずるものがあるVo. Renの色気を感じる伸びやかなハイトーンクリーンが特徴的ですが、大阪人の自分としてはラウドとアンビエントがクロスオーバーする作風にはCHASEDにも共通する部分があるなと感じています。ただ、こちらはTr.3 ''Diary of a Wimpy Kid'' みたいにモッシュパートも出てきますがね。

 Calls Name Againも今作を引っ提げてツアー中で、関西地区には12/1に大阪 & 12/3に神戸公演が控えています。後者はいつもお世話になっている友達の企画なので翌日日本を発つんですが気合で行こうと思ってます。



ALSEID, Stained, Fallen Grace - To Get Closer To The Ideal

スプリットEP (10/11)
※Stainedの楽曲はサブスク解禁していないので、フィジカル推奨(CDショップによっては売り切れているところも)。

 国内の若手ニュースクールハードコアシーンでしのぎを削りあう3バンドによるスプリットEP。大阪 ''West Side Unity'' 所属Fallen Graceはニュースクールでは数少ないツインボーカルスタイルによるドラマ性と緩急が魅力的で、東京秋葉原 ''FCM'' 所属ALSEIDは鋭いメタリックリフと陽だまりのような暖かいメロディのコントラストが叙情的で美しく、岡山 ''DARKSIDE OYC'' 所属Stainedは「暗黒堕天使」と称される通り他2バンドよりも重苦しいグルーヴと邪悪なリフワークと、それぞれ独自のスタイルを持っている3組が結束。決して過去への懐古や焼き回しで終わらない2020年代のニュースクールを代表する作品がドロップされました。

 Fallen Graceは Tr.3 ''Toward a goal'' で参加。疾走感+アグレッシブな単音リフワーク+ビートダウンの様式美を引き立てるのはVo. SULI & GUCCIの高低がはっきり分かれている唯一無二のボーカルスタイルだとおもいます、何度も言及していますが。ALSEIDは彼らのスタイルを貫いた叙情的なメロディと疾走感を活かしたTr.4 ''Deviation from the Scheme'' と過去作 ''Purification''に共通する京都感あふれる序盤の展開と他2バンドのフロントマン客演のTr.5 ''SCAPEGOAT'' で参加。そしてStainedは方向性を模索していた時に取り入れていた叙情的な要素をそぎ落とし邪悪さと攻撃力にガン振りしたTr.1 ''Hidden Agenda'' & デモニックなリードと暗い作風にKohei (ALSEID)の熱量溢れる日本語詞が際立つ新機軸Tr.2 ''Fall Into Darkness''の2曲で参加しています。

 現在3バンドでリリースツアーを敢行中ですが、残りは東京2か所(11/25, ファイナル3/23)、山口 (12/9)、大阪(1/20)、岡山(2/17)の5公演。特に山口はソールド間近なので気になっている方はお早めの予約を。


recess - Le Petit

EP (10/11)

 大阪を拠点に活動しているオルタナ/ポップパンクバンドのデビューEP。2021年結成とまだ活動開始から2年しか経っていないものの、現在ホットな大阪の若手ポップパンクシーンの最前線で活躍しているバンドの一角を担っており、今年に入ってTiny Moving PartsBroadsideの来日公演のサポートアクトを務めている実績もあって存在感を発揮してきています。筆者は最近ポップパンクのライブに遊びに行くことが多く後述するレコ発含め何度もライブを観ていますが、All is WellLauncher No.8など同じ関西のシーンでしのぎを削っているバンド達とはまた違うどこか陰のあるスタイルを提示しています。

 デビューEPとなる ''Le Petit'' は、ポップパンクを軸にしながらもThe Story So Far, Basement, その他Run For Coverあたりのバンドをはじめとしたエモ・オルタナ・グランジなどから影響を受けたサウンドはどこか陰のある哀愁漂う繊細なメロディながら、(ライブを観たことある方なら伝わると思いますが)Vo.  yutoの熱量溢れるエネルギッシュなボーカルやギターサウンドからも力強さが感じられて滾ることは間違いありません。個人的にはMV化されたTr.3 ''Turn Grey'' が一番お気に入り、オルタナやインディーのライブにも通用するアプローチの広さは今後注目の的になりそうです。あと、yutoもnoteでセルフライナーノーツ/各楽曲の和訳を公開しているのでそちらもチェックを。

 私用で途中参加のためライブレポを上げることはできませんが、今月の初めに行われたレコ発兼自主企画 ''Porter Street'' は予想の200倍楽しかったです。世代と作風の近い東京のオルタナ/ポップパンクWinter Wakesともしっかり仲良くなっていて最高でしたね。


VCTMS - Vol.V The Hurt Collection

アルバム (10/13)

 アメリカ・イリノイ州ストリームウッドを拠点に活動しているニューメタルコア/ダウンテンポデスコアバンドの最新アルバム。結成以来ニューメタルコア特有のソリッドなリフワーク&モッシーなグルーヴとダウンテンポデスコア特有のブラストビート&スローなビートダウンを組み合わせたハイブリッドなサウンド、また単純なヘヴィネスだけにとどまらない背筋が凍るような病んだ狂気や鬱々しいダウナーな雰囲気、時折顔を出す特にDr/Vo. Meredith Hendersonのクリーンボーカルを取り入れたエモーショナルなメロディなど、色々なアプローチをしながらネガティブな感情を前面に押し出しているのが魅力的なバンドです。

 通算5枚目のアルバムになる今作 ''Vol.V The Hurt Collection'' は、上述したサウンドを貫いてきた彼らがさらに成熟したことをリスナーに証明する作品に仕上がっており、Tr.1 ''Twist The Rage'' の束の間のアコースティックギターから激しいバンドサウンドとブチギレ気味のVo. John Mataloneのスクリームが飛び出すあたりこのバンドが只物じゃないことを予感させます。特にSlipknotを彷彿とさせる不穏なシンセワークとスクラッチにTr.5 ''Stranger''
やアルバム終盤の楽曲Tr.9 ''Ghost // Pains'' ~ Tr.11のタイトルトラックに顕著ですが、今作の要はどこか背筋が寒くなるような冷たいMeredithのクリーン。抒情的なメロディが出てくるにもかかわらず不穏な空気を隠し切れません。

 今作も盟友OrphanのようなブルータルなバンドからRivalsのようなオルタナまで豪華ゲストが参加していますが、個人的にはOrphanのVo. Jondoe_87とVoid Of VisionのJack Berginが参加しているTr.2 ''Burn Victim'' 、今後一生実現しないであろう組み合わせで容易にモッシュでした。


Desolate Sphere - Maledictus

EP (10/13)

 東京を拠点に活動しているメロディックデスメタルバンドの最新EP。元々はGt. Murakamiのソロ・プロジェクトとして始動したのですが、2nd EP ''Hallucinosis'' がリリースされて少し後にバンドとしてもライブ活動を開始。筆者も去年の初ライブは縁あって観に行ったのですが、The Black Dahlia Murderを彷彿とさせる叙情性と暴虐性を交えたギターリフとエクストリームなブラストビートを交えたクオリティの高いサウンドで仕上がってましたね。今年の初めには4度目のライブにも関わらずWacken Open Airへの出場を懸けたMetal Battle Japan 2023決勝ラウンドにも出演、来日自体は延期になったもののScar Symmetryのオープニング・アクトに抜擢されたりとその活躍には目を見張るものがあります。

 メンバーの入れ替わりを経た新体制にてリリースされた今作 ''Maledictus'' は、次世代メロディックデスメタル筆頭として前作のサウンドをさらにブルータルかつエクストリームに進化させた一作。In Denialではクリーンボーカルも担当しているVo. Kent Sasakiは、このバンドでは高低2種類のグロウルを巧みに操り楽曲の暴虐性に花を添えています。最初に先行シングルとしてリリースされMVにもなったTr.1 ''Ablaze From Within'' はKent曰く「ブラダリのTrevorと共演したかったなという思いでボーカルラインを考えたので、仮想フィーチャリングパートがある」とのことなのでぜひ予想してみてください。

 Scar Symmetry来日公演OAに引き続き、今度はCryptopsyのサポート・アクトにも抜擢されたDesolate Sphere、個人的にはVesper The Aerial主催のイエテボリ神社例大祭に出てほしい願望があります。


Beartooth - The Surface

アルバム (10/13)

 アメリカ・オハイオ州コロンバスを拠点に活動しているロック/ポストハードコアバンドの最新アルバム。フロントマンで中心人物のVo. Caleb Shomoは15歳でAttack Attack!でバンド活動を始め、AA!を脱退した後19~20歳でBeartoothを立ち上げ、ボーカルだけではなく作曲やプロデュースもセルフで手掛けています。近年の作品ではよりハードロックの要素を打ち出した重厚なサウンドに寄ってる印象ですが、キャッチーなメロディは初期からずっと一貫しています。メンバーもCity LightsLike Moths To Flamesなどコロンバスを中心にUSメタルコア/ハードコアシーンで活躍してきた猛者揃いなのもポイントです。

 前作 ''Below'' 以来約2年ぶりのフルアルバムになる ''The Surface'' は、今までの作品で負の側面を表現してきたCalebが、バンドを立ち上げて10年経過し本人も30代になったことを経てより明るい側面に目を向けるようになったことがダイレクトに伝わる作品。大枠のサウンドはメタルコアにハードロック特有のいなたさ溢れる分厚いグルーブとCalebの力強いアンセミックが乗るという部分は変わりませんが、先述の通りより明るい作風に方向転換したのがわかります。特にカントリーシンガーのHARDYをfeat.したTr.4 ''The Better Me'' は客演もあってカントリーの要素も巻き込んだ新機軸。''I Have A Problem'' や ''The Lines'' など初期のネガティブな側面を押し出していた頃からこう変化するとは思いもしませんでした。

 今作のクライマックスを飾るTr.11 ''I Was Alive'' はトラウマや鬱や自殺願望を乗り越えた彼だからこそ歌える人生賛歌。



HONORABLE MENSIONS


Ambleside - Contact High

アルバム (10/4)

 オーストラリア・アデレードを拠点に活動しているエモ/メロディックハードコアバンドの、活動10年目にして初のアルバム。2015年の ''New Tide'' や 2016年の ''Shape Me'' の時はドラマティックな抒情ハードコアバンドの印象でしたが、近年の作品ではハードコア要素は減退。しかし哀愁を感じさせるエモーショナルさを残しながらより色彩豊かな印象を受けます。One Step CloserANXIOUSあたりのRun For Cover所属のバンドが好きな方には是非チェックしてほしいなと思います。


Mirabi Frame - Mirage

EP (10/5)

 ラトビアのコンポーザーIgor Serokvashaと日本の女性ボーカリストHarukiによるプロジェクトの最新EP。IgorはValiant Heartsでも活動していますね。シンセサイザーを駆使した色彩豊かなサウンド、優しく語り掛けるようなHarukiの女性クリーンボーカル、「Story of Hope」から影響を直に受けたであろうテクニカルかつエモーショナルなメロディはLenoria,WAILING ARIES, Squall of Screamあたり好きなオタクのリスナーにもチェックしてほしいです。Tr.2 ''Mirage'' はHopes Die LastのBa/Vo.のBeckoもfeat.して前髪が伸びました。

Forecast - Utopia

EP (10/6)

 イタリア・ローマ出身、現在はイギリス・ロンドンを拠点に活動しているメロディックハードコアバンドの最新EP。2018年 ''Vacant'' 以来5年ぶりの正式音源になります。ロンドンに移住してからバンド活動を継続するのが困難になり一度活動休止に陥っていましたが、今年に入って活動を再開。CounterpartsIt Prevailsなどからの影響を公言している青臭さ全開の疾走感と涙腺を突き刺すクリーンボーカルとリードのメロディはまさに様式美。特にTr.6 ''Naked'' はテンポを目まぐるしく変えながら展開していく前半とポストロック/エモ調のスローバラードに移行する後半に分かれていてドラマティックです。


Of Mice & Men - Tether

アルバム (10/6)

 アメリカ・カリフォルニア州コスタメサを拠点に活動しているメタルコアバンドの最新アルバム。個人的にも伝説的フロントマンAustin Carlileが在籍していたころで ''The Flood'' ~ ''Restoring Force'' 期は海外メタルコアキッズだったというのもあってヘビロテしていて、Aaron Pauleyが本格的にリードボーカルになってから久々に聴いた気がします。オルタナメタル・ハードロック・ニューメタルなどをミックスさせたハイブリッドなサウンドは無個性なようでどのバンドにも形容できない底知れなさを感じます。即効性があるわけではないですが、じわじわと効いてくるスルメ盤な印象です。Crossfaithの対バンツアーの東京公演のゲスト公演にも抜擢されましたが、筆者は観に行けません。

Bubble Baby - Highway

シングル (10/11)

 ラッパーRude-αを中心に、各々ACE COLLECTION, The Winking Owl, NO BRIGHT GIRLで活躍してきた豪華メンバーが集結した新鋭ポップパンクバンドの最新シングル。これまでのエネルギッシュな側面とは一線を画すエモーショナル/チルアウトなバンドサウンドに、Rude-αのストレートなリリックが唯一無二のフロウに乗せてリスナーの心を刺しに行きます。7月にリリースしたEP ''We are Bubble Baby'' のフィジカル盤にこの曲含む新曲3曲が収録されています(先日完遂したツアーで先行配布、現在はCDショップでも買えます)。


Umber Mist - GILGUL

EP (10/13)

 かつてHEARTPLACETHE LAST ILLYASにも在籍していたGt. Suzuta在籍の長野発デスコアバンドの最新EP。昨年は久しぶりのEPとDemoralizationsとのスプリットリリースがありましたが、今作が通算3枚目のEPになります。引きずるように落としていくビートダウンとVo. Horizonの多種多様なボーカルアプローチは今作も健在。個人的にはTr.2の''Funeral''のベースだけになるパートとTr.3 ''Revive'' の緩急をつけた展開はモッシュ不可避。先月にはSuzutaが主催する ''UMEME FEST'' が東京で行われ、the Art of MankindDIVINITISTも出演したエクストリームなラインナップで激熱でしたね。


Nailwound - An Ode to Misery

アルバム (10/13)

 アメリカ・フロリダ州オーランドを拠点に活動しているビートダウンデスコア/メタルコアバンドの最新アルバム。2019年にリリースされた1stフル ''Dog Eat Dog'' はFFO: BodysnatcherExtortionistあたりのブルータルな作風で筆者も結構リピートしていました。4年ぶりのアルバムとなる今作はより洗練されたリフワークとアッパーな展開、スクラッチを取り入れたニューメタルコアスタイルも垣間見え、さらにはTr.10 ''Semuta'' ではクリーンボーカルも取り入れより間口の広いリスナーへアプローチできる印象に。しかしダウンチューニングギターのうねるグルーヴとモッシュパートの切れ味は相変わらずすさまじいです。


Crystal Lake - Dystopia

シングル (10/13)

 日本を代表するメタルコアバンドの最新シングル。6月にデジタルでリリースされた ''Denial// Rebirth'' 以来4か月ぶりの新曲になります。前作は圧倒的なブラストと刻み、呪術的なコーラスパートなど我々の理解の斜め上を行くサウンドでリスナーを驚愕させましたが、今作は ''Omega'' ''Prometheus'' の作風に近い疾走感に、神秘的なメロディとアンセミックなシンガロングパートを乗せた「これぞCrystal Lake」と言わせる王道のサウンド。後半のVo. John Robert Cのクリーンボーカルは彼ここまでできるんだ…と確かな成長を感じさせてくれます。

A Mourning Star - A Reminder of the Wound Unhealed

EP (10/13)

 カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバーを拠点に活動しているメタルコアバンドの最新アルバム。近年Your Spirit DiesMementoなど90年代~00年代へのリバイバルを意識したメタルコアバンドが多いですが、彼らもその一つ。感情的に張り詰めた雰囲気の疾走感の中に張り巡らされる高摩擦のトレモロリフと単音イエテボリリフ、Tr.2 ''Corruption'' で出てくる甘酸っぱいクリーンボーカルやTr.4 ''A Mourning Star'' で出てくる熱量に満ちたギターソロなど、目新しさどうこう細かいことを考えずに滾れる展開に満ちています。



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