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Fieldism必聴新曲リスト September 2023 (Part.2)



前回の新曲特集はこちらから↓


Buried Alive III、ありがとうございました。↓


 虚無感と自己嫌悪と不眠に苛まれていてここ最近ずっと落ち込んでいましたが、先日のDecasion企画で喰らいすぎて余韻に浸っています。今回は久しぶりにライブレポ上げようかなって思うんですが、a Soulless Painの久しぶりのライブでヴォイ泣きしてしまいました。いつもお世話になっております。Ryotaです。


今回も早速本題入ります。
リストアップの条件ですが、下記2点です。
1. 9/15~9/30にフィジカル/ストリーミング/DL販売/MVのいずれかが解禁された作品(基本的により多くの人にアクセスできる手段を優先します)。
2. フルアルバム or EPのリリース時期がある程度明確にアナウンスされている作品の先行シングル、および既存楽曲のリマスターやカバー等は選出対象外。ただしアルバムのデラックス盤のみetc.に収録予定の楽曲は選出対象。


Thy Art Is Martyr - Godlike

アルバム (9/22)

 オーストラリア・シドニーを拠点に活動しているデスコアバンドの最新アルバム。現在のオーストラリアを代表するデスコアバンドの一つで、デス・メタルの持つ「激しい・重い・早い」を兼ね備えた暴虐性を根幹に置いたデスコアサウンドは本国のみならず日本でも人気があり、2018年にはT.M.Musicの前身であるMHzfestによってFit For An Autopsyと来日した実績もあります。また、宗教・環境問題・資本主義など社会問題をテーマにしたディストピア的なリリックもこのバンドの魅力だと考えています。

 古巣Nuclear Blastと別れを告げ、自身のレーベルHuman Warfareからリリースされた4年ぶりのアルバム ''Godlike'' は、その暴虐サウンドが一向に衰えないどころかむしろ先鋭化していくことを証明した作品で、Tr.1 ''Destroyer Of Dreams'' ~ Tr.2 ''Blood Throne'' の2曲で出てくるスピード感抜群のデスメタリックなリフとブラストビート/ダブルキックが頻繁に顔を出す時点でそれがわかると思います。アンセミックなコーラスと不穏なギターリードが新鮮なTr.3 ''Join Me In Aggression'' や、研ぎ澄まされた楽器隊が紡ぐ高速パートとブレイクダウンのコントラスト・シンガロングパートが印象的なTr.4 ''Keres''など、大きな会場でも映える楽曲も備えています。個人的には作中最も容赦ない部類に入るドラムワークと不穏なギターワークが妖しいTr.6 ''Lesson In Pain'' が気に入ってます。

 今作のリリースの翌日にVo. CJ McMahonが解雇され、ボーカル音源は同国のデスコアバンドAversions CrownのVo. Tyler Millerのものに差し替えられておりますが、彼も負けず劣らず苛烈なグロウルを放ちます。


Heart Of A Coward - This Place Only Brings Death

アルバム (9/22)

 イギリス・ミルトンキーンズを拠点に活動しているメタルコアバンドの最新アルバム。質実剛健でハイクオリティなバンドを輩出しているArising Empireに在籍しており、前Vo. Jamie Graham在籍時はMeshuggahPeripheryなどにも通じるDjent/プログレッシブメタルコアに寄ったテクニカルなサウンドでしたが、現Vo. Kaan Tasan加入後はよりメロディックな要素を取り入れ、ヘヴィネスとメロディーのバランスが絶妙に。彼が加入して初のアルバム ''The Disconnect'' はタイトル通り社会的、政治的問題から個人的な問題に焦点を当てた「分断」をテーマにした良作で ''Collapse'' ''Ritual'' をはじめ今でもリピートしています。

 前作 ''The Disconnect'' 以来4年ぶりのアルバムとなる今作''This Place Only Brings Death'' は、ヘヴィネスとメロディの両立を踏襲しながらも、よりミドルテンポ/グルーヴを重視した作風になった印象を受けます。Tr.1の表題曲からTr.10 ''All life is finite'' までの約35分、一発一発のリフやブレイクダウンに重みがありゆっくりと死に向かって行進していく情景が目に浮かびます。ただアグレッシブさがなくなったわけではなく、アルバム後半のTr.7 ''HEX''~Tr.9 ''Dehumanise'' のような前作を踏襲したアンセミックなコーラスが悲壮な世界観とカタルシスをもたらします。ハイライトはTr.5 ''Decay''、シンフォニックなレイヤーとクワイアの荘厳なコーラスワークはKaanがいるからこそ成立するかと思います。

 来年の後半には母国を飛び出して今まで行ったことのない新しい地域へのツアーを予定しているそうなので、これは期待しても良いやつですかね?


WHISPER OUT LOUD - SEASONS

EP (9/22)

 東京を拠点に活動しているオルタナティブR&B・ロックバンドの最新EP。洋楽ロックを基軸にエレクトロからR&B、ポップス、プログレなど多種多様なジャンルをセンス良く融合したサウンドで筆者も最近チェックハードしているバンドです。昨年現Vo. Motokichiが加入し、今年の初めにフルアルバム ''CIRCLE OF LOVE'' をリリース。Motokichiのソウルフルかつ引き出しの多いボーカルは楽曲のキャッチーなトラックも相まって、個人的にはヘビロテするほどハマりました。今月に入って初めてライブ観たんですが、再現力半端なかったです。

 前作 ''CIRCLE OF LOVE'' からわずか8か月のスパンでリリースされた今作 ''SEASONS'' は、感情の移り変わりをテーマに、その変化を季節に例えて名づけられた作品となっています。ライブでも定番曲となっているTr.1 ''Magic''、「本当の自分とは」というテーマを主観的なテーマで見つめたTr.2 ''True Self''、失敗/挫折を経験したすべての人の背中を押す応援歌Tr.5 ''One More Time'' など前作以上に感情表現を強調した楽曲を奏でていきます。個人的に先行でリリースされた「和風+サイバーパンク」を意識したシネマティックな世界観と「闇の暗さと美しさの二面性と、美の奥に隠れた不気味さ」を演出したTr.4 ''AsUrA'' がお気に入りです。

 来年1月にはZepp SapporoにてSIMcoldrainが出演する ''NO MATTER LIVE''でオープニングアクトに抜擢されたWHISPER OUT LOUD、日本中で注目を集めるのも時間の問題なので今のうちにハマっておきましょう。

LAST DAY DREAM - For found a nation

EP (9/25)

 大阪を拠点に活動しているメタルコアバンドの最新EP。関西を代表するメタルコアバンドとして活躍しており、メロデス由来の切れ味鋭いギターリフとモッシュ誘発系のブレイクダウン、そしてメロディアスな展開を織り交ぜたドラマ性は唯一無二。ここ4~5年はメンバーの入れ替わりやコロナ禍の影響もあり活動ペースもゆっくりになっていましたが、そんな苦境でもバンドは力を蓄え昨年春には満を持してライブ活動を再開、メタルコアシーンの最前線に復帰しました。Vo. Saimotic氏は日ごろからBuried AliveはじめFieldismの活動をチェックしていただいておりますが、本当に畏れ多いです。

 現編成になって初 & 約5年ぶりの待望の新作音源となる今作 ''For found a nation'' は、それまでのサウンドを踏襲しながらもよりグルーヴを意識したフィジカルに訴えかける魅せ方が印象的です。彼らの新たなイントロとなるTr.1の表題曲を経て、5年前のデモ音源がついに正式音源となった Tr.2  ''ALIVE'' は、3分間にダイナミックな起伏を付け特に後半ではリード/アルペジオを駆使したメロディが光る一曲。Tr.3 ''Justice Holic'' はAttilaSlipknotあたりのニューメタル/ミクスチャーのエッセンスを感じるダンサブルなビートが特徴的ながら、極悪ブレイクダウンとメロディックなリフワークは健在。Ba/Cho. Kaseyaの骨太なベースとシャウトも際立っています。

 先日今作のレコ発東名阪ツアー+ファイナルについてアナウンスされ(ツアー大阪編は2会場のサーキットイベント)、すでに一部出演アクトも公開されてますが、全日程間違いない一日になると思います。


Lost in again - MACULATE

EP (9/25)

 東京を拠点に活動しているモダンメタルコアバンドの最新EP。Buried Alive IIIに出演したALIOTH, SIGHTBACKSと並んで今の東京の最前線で活躍している若手メタルコアバンドの一つで、重心の低いリフワークとアトモスフェリックな浮遊感、Vo. Yutaの凶悪なグロウルとGt/Vo. wataruのハイトーンクリーンのコントラストと、流麗なダイナミズムと独特のコーラスワークが感じられるバンドです。昨年はデビューEP ''The Cycle of Reincarnation'' をリリースしましたが、不穏でヘヴィな ''Abysmal Definition'' のインパクトは特にすごかったですね。

 今作 ''MACULATE'' は、前作から約1年ちょっとの間で得たすべての評価、経験、体験を落とし込んだ渾身の"モダンメタルコアサウンド"を凝縮した作品。今作も浮遊感とヘヴィネスの落差を徹底的に重視しつつ実験的なアプローチも果敢に取り入れており、Tr.1 ''Vice/Gene'' ではサイバーパンクっぽいイントロからみじん切り系のチャグパートが連発、Tr.2 ''Alias'' ではSFパニック映画直系のスリリングな展開と悲壮感とカタルシスを感じるwataruのクリーンが冴えわたります。薄暗しさと気味悪さあふれるシンセアレンジと苛烈なローチューニングリフが絶え間なく襲い掛かるTr.3 ''Beyond the Veil''、先行でリリースされたTr.4 ''NIX'' を経て、Liaの要素すべてが詰め込まれているTr.5 ''Within ME''でこの20分間は締めくくられます。以前よりもデスコアを意識したYutaのボーカルも作中通して本当に容赦ないです。

 先日Buried Alive IIIの公募枠で逆オファーはいただいてたんですが実現できなかったので、後継イベントには是非大阪に呼びたいと思っています。今作のレコ発直後にBa. Akuruが抜けてしまったのが心残りですが…


SheeSawHarm & Haze of the Bullet Blossom - メメント・メモリ

スプリットEP (9/24)

 ''京都Screamo'' SheeSawHarmと東京叙情メタルコアHaze of the Bullet Blossom、日本語による表現にこだわりを持つ点で共通する両バンドが渾身のスプリットをリリース。SheeSawHarm (SSH) は現代に生きる人間の負の感情をテーマに、優しく寄り添うメロディアスなクリーンボーカルと刺すような激しいサウンド、そして目まぐるしく移り変わる感情を露呈した展開が魅力的なバンド、方やHaze of the Bullet Blossom (HotBB) は激しさの内にガラス細工のような繊細さあふれるサウンドと、一生引き倒す慟哭系リードが特徴なバンド、そんな二組が引かれあうのはもはや必然だったのかもしれません。

 SSHは、過ちと後悔、愛憎入り混じる矛盾を抱えたまま想いの正体を綴るTr.2 ''Cie'th'' と、彼らの新機軸となるTr.3 ''未だ遠き理想郷'' の2曲を提供。''Cie'th'' では疾走パート、ビートダウン、3拍子など目まぐるしく移り変わる感情を向きだしにした5分間をリスナーに共有し、''未だ遠き理想郷'' ではこれまでのスタイルとは違い歪んだギターを主体としないサビパートと一瞬明日の叙景を彷彿とさせるVo. ユーサクのシャウトが印象的です。

 リリース前にかねてからサポートを務めていたGt. 健太を正規メンバーに迎えたHotBBは、自身が縋りつく過去の記憶が美化されたものであることに気がつきながらも溺れゆく様を表現したTr.1 ''Myosotis'' と、過去の純粋無垢な自分への憧憬を募らせるTr.4 ''innocence'' の2曲を提供。''Myosotis'' は突き抜けるような高音メロディックリードと優しく語り掛けるようなユーサクのクリーンが、''innocence''はAtsukiのポエトリーと最後の転調パートが印象的です。

OPTIMIST & 提婆達多 - VIRGIN

スプリットEP(9/23)

 仙台で最も禍々しいサウンドを提示する提婆達多とOPTIMISTが渾身のスプリットをリリース。提婆達多はニューメタル+デスコア+仏教を始め多種多様なジャンルをクロスオーバーさせたヘヴィネスとグルーヴを両立させたサウンドが特徴的で、方やOPTIMISTはSFホラー映画じみたヘヴィで底知れない不気味さと何故か親しみのあるノリやすさも兼ね備えており、どちらも唯一無二の存在感を確立させています。両組ともBuried Aliveで初大阪上陸を果たしそのインパクトを残したことは記憶に新しいですが、彼らがタッグを組んだ今作もまた彼らにしかできないサウンドを提示しています。

 提婆達多は彼らなりにメタルを意識したTr.1 ''No More'' とOPTIMISTのVo. Kanoをfeat. に加えたTr.3 ''Plastic Hate'' を提供。''No More'' はスラッシュメタル的なトレモロからメロデス~ニュースクールまで吸収したリフワークからデスコア的王道の落としに収束するトラック、''Plastic Hate''は提婆達多流デスコア+ニューメタルをベースにポストブラックの寒々しさも感じる一曲になっています。

 惜しくも来年2月で活動休止に入ることが発表されたOPTIMISTは不協和音と共に全てをなぎ倒していく重戦車トラック Tr.2 ''PSYCHO'' と、ヘヴィなリフをベースに提婆達多のVo. SuguruとKanoのラップが乗る Tr.4 ''Cold Neon'' を収録。両曲ともKanoの気怠いダウナーなラップが印象的ですが、特に ''Cold Neon'' は二人の個性的なボーカルアプローチに富んでいて癖になります。完全再現が見れるのはレコ発2公演だけなのでお見逃しのないように。


ovEnola - UNDERWATER

EP (9/27)

 Sailing Before The Wind, Concealments, Lumber Coated Rustなどで活躍してきた錚々たるメンバーが集う東京発メタルバンドovEnolaの最新EP。メタルコア・デスコア・ダウンテンポ・ニューメタルなどのテイストを取り入れつつも既存の枠にはまらないバンドサウンド、不気味な空間を演出する電子音の取り入れたユニークな世界観は始動以来常に強烈な存在感を醸し出してきました。2018年のデビューEP ''Death Wish'', 2020年の1stアルバム ''Left Behind'' と順当にスケールアップしてきた彼らですが、ここに来てさらにその世界観を押し広げた意欲作をリリースしました。

 2nd EP ''UNDERWATER'' は、サイバーパンク+クトゥルフ神話を主軸とし、スペースホラー映画や陰鬱なゲーム作品から着想を得て制作された会心の一作。不穏な電子音主体のイントロ ''The End is Nigh'' から既に終末感ありますが、インダストリアルな導入とゲスト参加のRyoichi Suemoriとの新旧SBTWボーカル対決が見られるTr.2 ''Enlightment''、妖しいリードギターがディストピアへと誘うTr.3 ''Abominated''、Alpha WolfあたりのスポーティーなニューメタルコアスタイルのTr.4 ''The Nightmare Swirls''など、バンドサウンドと電子音楽を絶妙にマッチさせた濃い曲揃い。

 10/15のレコ発を皮切りに来年から長野、名古屋、東京とリリースツアーが行われるようですが、全国各地お誘い歓迎だそうなので是非コンタクトをかけてみてください。正直筆者もどうしようか悩んでいます。


Grove Street - The Path To Righteousness

アルバム (9/29)

 イギリス・サウサンプトンを拠点に活動しているメタリックハードコア/クロスオーバースラッシュバンドの最新アルバム。元々Grove Street Familiesという名前で活動しており、シングル"San fierro"とミニアルバム"Las venturas"というどう考えても ''Grand Theft Auto San Andreas''にもろ影響を受けた音源をリリース。メタリックハードコアを基軸にしたサウンドにラッピンなVo. Sullyのボーカルが乗るイケイケ突っ切り具合と絶妙な遊び心/悪乗りが感じられるサウンドはUKっぽい固い雰囲気とかけ離れた西海岸ぽさがあります。

 バンド名から''Families'' を外し、UNFDとレーベル契約を結んだデビューアルバム ''The Path To Righteousness'' は、よりクロスオーバースラッシュに傾倒させたバンドサウンド+遊び心とイケイケ具合が感じられるボーカルスタイルで思わず心が躍ります。90年代の格ゲーのイントロを彷彿とさせるTr.1 ''Repressing Forward'' 、Grandmaster Flash and the Furiousの名曲 ''The Message'' をサンプリングした部分でついニヤリとしてしまったTr.3 ''Lessons of the Past'' 、トリッピーなポストパンク要素を取り入れたTr.8 ''Born II Lose'' など、音楽だけでなく影響を受けた80~90年代のカルチャーへのリスペクトが込められながらも2023年のフィルターを通した楽曲陣には次に何が来るのかワクワクしっぱなしでした。


Koyo - Would You Miss It?

アルバム (9/29)

 アメリカ・ニューヨーク州ストーニー・ブルック出身のエモ/メロディック
ハードコアバンドの最新アルバム。ex-SeeYouSpaceCowboyのSal Argentoを始め、メンバー各々が別バンドでも活躍しているスーパーグループでもあります。Taking Back Sunday, The Movielife, Glassjawなど、ロングアイランドのハードコアグルーブとポップパンクのキャッチーなフック、そしてバンド名の「紅葉」の名にたがわぬノスタルジックな感情を表現したエモーションは涼しくなってきたこの季節にぴったりのサウンド。アメリカのポップパンク/メロディックパンクシーンでも注目度はうなぎのぼりです。

 Pure Noise Recordsと契約を果たし(国内盤もICE GRILL$からリリースされています)、待望のデビューアルバムとなる今作 ''Would You Miss It?'' は、古着屋でフランネルシャツを身にまとい、紅葉が地面に舞い落ちるのを眺めながらコーヒーでも飲みたくなるようなときの最高のお供になる作品。Tr.2
''You're On The List (minus one)'' やTr.3 ''Life's a Pill''をはじめ、サッドで切ないメロディと疾走感を伴ったバンドサウンド、少しエッジの利いたJoey Chiaramonteの感情的なクリーンは思わず元カノのことを思い出してしまうくらいノスタルジックです。今作の楽曲でもMVが何作かリリースされていますが、Anxious, Soul Blind, REGULATEなど彼らと交友があり尚且つ日本にもゆかりのあるバンド達がカメオ出演しています。

 今作はfeat.のある曲が3曲ありますが、それぞれTr.8 ''Message Like a Bomb'' はGlassjawのDaryl Palumbo & Tr.9 ''What's Left To Say'' ではThe MovielifeのVinnie Caruanaが参加していることからもロングアイランドというルーツを大事にしていることもわかります。

Code Orange - The Above

アルバム (9/29)

 アメリカ・ペンシルバニア州ピッツバーグを拠点に活動しているメタル/ハードコアバンドの最新アルバム。作品を重ねるごとにエレクトロサウンドを/グリッチ/ニューメタル/グランジなど多種多様なジャンルを導入したオルタナティブなスタイルへと変容し、メタラーからもハードコアキッズからも幅広く支持を得ている稀有なバンドです。今年の6月にリリースされたシングル''Grooming My Replacement / The Game''は初期のカオティックなスタイルを今の彼らがやったら…を体現していましたが、アルバム全体ではどのように映るのでしょうか?

 強烈なインパクトを与えた前作 ''Underneath'' 以来約3年ぶりのアルバムとなる今作 ''The Above'' は、これまで以上に実験的なアプローチを取り入れたのは明白で、オープニングの Tr. 1''Never Far Apart'' からインダストリアルなビートに乗せたVo. Jami Morganのダウナーなボーカル & ピアノインストに乗せたGt/Vo. Reba Meyersのクリーンの落差に驚きますが、最後のモッシーなメタリックサウンドでどこまで行ってもCode Orangeであることを再認識させてくれます。先行でMVが公開されているTr.3 ''Take Shape'' はKornを彷彿とさせたニューメタルスタイルなんですが、そこにオルタナティブロックの大御所The Smashing PumpkinsのBilly Corganが参加するのもフリーダムすぎて予測不可能です。

 各音楽メディアのレビューを確認する限り賛否両論っぽい印象ですが(特にUK)、どちらにしても彼らの引き出しの多さには驚かされるばかりです。


HONORABLE MENSIONS

Slaying Under MInes - Fall Asleep

シングル (9/16)

 香川県発新鋭メタルコアバンドのデビュー音源。香川と言えば過去にDAYS BEFORE YESTERDAY(現在は解散)がいたのですが、メタルコアバンドが出てきたのは久しぶりではないでしょうか?疾走感とテクニカルなチャグを織ませた攻めの展開からひと時の安らぎを与えるようなアルペジオの緩急、そして最後のシュレッドリードまで、デビュー音源特有の粗削りはあるもののひねりを加えていて好感が持てます。これからLenzRAISE ONE'S EYESと一緒に中四国のメタルコアを盛り上げてほしいです。

Shadecarrier - FZ Theory

シングル (9/19)

 ELYSIUM, FILL THE VOID, Mirrors, VICTIM OF DECEPTIONと各々錚々たるバンドで活躍してきたメタルコア/デスコアスーパーグループの最新シングル。近未来的で不気味なイントロから既に只物ならぬ予感がしますが、その直感は正しくソリッドなバンドサウンドと鳴りやまない不協和音、そしてスクリームや早口ラップなどVo. RAFの独特の声質を伴った多彩なボーカルアプローチはまさに「ド変態」の一言。年末にIn Denialの自主企画で初ライブも行われるそうなので観に行く人は是非感想教えてほしいです。

Bloom - Bound To Your Whispers

シングル (9/20)

 オーストラリア・シドニーを拠点に活動しているメロディックハードコアバンドの最新シングル。昨年リリースされたシングル ''Sink Into The Soil''以来1年7か月ぶりの新曲で、今作からCounterpartsKnocked Looseもいる名門Pure Noise Recordsからリリースされます。前作からCounterpartsを意識したよりモダンで複雑なリフワークが増えた印象ですが、今作も途中で3拍子に転調したりリバーブを利かせた高音リード+ブレイクダウンのコンボを織り交ぜたドラマティックな展開が心を動かします。


Grudge Ring - EYES WIDE SHUT/Voodoo Vibes

シングル (9/25)

 CRUCK NUTSMIND STEPなどで活躍しているメンバー達が集ったハードコアバンドの最新シングル。3月にデビューシングル ''explicit darkside content'' 以来約半年ぶりの新譜です。各々のバックグラウンドを感じさせるファストな爆走スタイルハードコアとスポーティーなモッシュパートは相変わらずイケイケ。ブラックライトを用いたMVが強烈なインパクトを放つTr.1 ''EYES WIDE SHUT'' はラッパーとして活躍しているCaynnがfeat.。ここでは明言しませんが、もともとどんな方かわかる人はわかると思います(個人的には無茶苦茶気に入っていたバンドです)。

Annisokay - Abyss Pt.1

アルバム (9/22)

 ドイツ・ハレのポストハードコアバンドの最新EP。スケールの大きいソリッドなバンドサウンド、Gt/Vo.Christoph Wieczorekのクリーンボーカルを活かしたキャッチーなメロディーが魅力で母国のレーベルArising Empireに所属しています。先行でMVがリリースされているTr.2 ''Human'' はインダストリアルなシンセが強調されている印象ですが、やはり安心と信頼のAnnisokayサウンドを提供してくれます。Vo. Rudi Schwarzerの厳ついスクリームもすっかり馴染んできましたね。


HAILROSE - CRIMSON.EXO

シングル (9/22)

 東京を拠点に活動しているエレクトロニコアバンドの最新シングル。ハードコアテクノ/ガバ/トランス/ブレイクコアなどのエレクトロサウンドを取り入れたバンドで、SEVER BLACK PARANOIAにステロイドを打った感じの狂気とヘヴィさを感じます。今回は先述のShadecarrierのRAFがfeat.。1:38の強烈なブレイクやインタールードもぶっ飛んでますが、最大の聴きどころは2:34以降のRAFとの掛け合いとブレイクダウンは火影を吹っ飛ばせるレベル。Buried Alive後継イベントでは声かけようかと思ってます。

swancry - イノセント

シングル (9/25)

 かつてゆくえしれずつれづれのメンバーとして活躍していた、hikageのソロプロジェクトの最新シングル。友人からおススメをいただいて前作のEP ''呼吸が止まる前に'' を聴いたのですが、甘さと脆さが同居したクリーンと悲痛なスクリームを取り入れたボーカルアプローチでぶっ刺さりました。今作 ''イノセント'' は作曲をFall of TearsのGt. Hiiro、ドラムアレンジをétéのDr. 小室響、ベースアレンジをex-afloat storageの藍が担当という隙のない体制で制作。hikageの序盤のスクリームからの優しいポエトリー/クリーンへの落差、個性が伺えるバンドサウンド(よく聴いてることもあるのか、特にギターとドラム)は琴線に触れっぱなしでした。

After The Sight - irrepressible emotion

シングル (9/27)

 岡山・倉敷を拠点に始動した新鋭メロディックハードコア/叙情派にゅーすくバンドのデビュートラック。Vo. 龍之介はじめDARKSIDE OYCの暗黒堕天使のStainedの一部メンバーはこちらのバンドでも活動しています。FFO: naiad, ether of clearquake, Counterparts etc.だけあってemosh全開のサウンドながら、過度に洗練されていない展開(国内ならEmbrace The Wingsあたりが近いと思います)部分に00'sの要素を感じます。Stainedとはまた違う色調の楽曲に乗せてセンチメンタルなリリックを叫ぶ龍之介は聴いていて新鮮ですが、10/29に高松で行われるStainedの自主企画で初ライブが行われるとのことなので、気になる方は要チェック。

Uncovering - Fragments Of The Past

アルバム (9/30)

 東京を拠点に活動している90'sメタルコア/ニュースクールバンドのデビューアルバム。各メンバーが別々のハードコアに在籍しているスーパーグループでもあります。現行のメタルコアとは一線を画す(いい意味で)いなたい音像、90年代のハードコア/エッジメタルを彷彿とさせる単音メロディックリフと高摩擦のトレモロリフはドラマティックの一言ですが、特にTr.3 ''Shattered Memories'' の中盤のトレモロパートが終わってからのリードと哀愁的なアルペジオ、あとはTr.7 ''Unshackled'' の転調で膝を付きました。


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