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「独学のススメ」

「独学のススメ」(若宮正子 中公新書ラクレ)

「世界最高齢プログラマー」の著者による、老後の人々を元気づける内容の本。定年後に作ったアプリが世界的に有名になったことはよく知られている。本の最初の言葉が「もう一度、お勉強、始めてごらんになりませんか。」(3ページ)で、何歳になっても新しいことに挑戦して楽しむことの大切さを伝えている本である。

 最近は、子どもを失敗させたくない親御さんが増えているようで少し気になります。失敗を避けて、自分のできることばかりやっていたら、その子に成長の機会が訪れないからです。人生は、挫折があるからこそ、多面的で奥深いものになる。大人になって致命的な挫折を経験するよりも、子どものうちから少しずつ失敗を積み重ねていったほうが、私はいいと思います。(25ページ)

 若い頃やっていて、やめてしまったことをまた始める、というのもありだと思います。私はもう、日本舞踊はやりませんけど。楽しかったけれど、なんらかの事情でやめてしまった。それをまた始めるのは、一から始めるよりハードルが低いもの。当時は「なんの役にも立たなかった」と思った習い事でも、蒔いておいた種が芽を出すように、あとから花を咲かせるかもしれませんよ。(43ページ)

 なにかを勉強するとなると、「1日3ページは進めよう」「週に3時間はやろう」などと、まずノルマを決めようとするひとがいます。量や時間で管理したほうが、上達できるだろうと思うのでしょうね。
 でも私、それはあまり意味がないと思うんです。ノルマを決めた時点でそれは義務になる。やりたくなくても、ノルマがあるからやらなければ、と思うようになります。そうやって嫌々やっているうちに、せっかく好きで始めたことでも、嫌いになってしまうかもしれません。もったいないことです。
 ノルマを決めなくたって、やりたい気持ちがあれば自然に手をつけられるはず。それがいわゆる勉強の類いだったとしても、です。無理矢理自分を追い込まなければやらないようなことは、そもそもあなたがやるべきことではないのかもしれません。(67-68ページ)

 体や心の健康を害してまでやらなければいけないことなんて、ないんです。楽しく、そして効率よく。そのほうが、結果的には成果を出せる。怠けているわけではないんです。楽しく効率よく上達する方法を考える方が、よっぽど大変で創意工夫が必要なのですから。「どんなことでも必死に頑張ればできる」なんてことはありません。限界があります。ある程度のところで見極めて、その虚しい努力から撤退し、他の「自分に向いた世界」に転身することは、決して恥ずかしいことではありません。(71ページ)

 私も1人で住んでいますが、出かけるか、誰かがうちにくるかで、毎日ひとと会っていますし、いつもメロウ倶楽部やフェイスブックで交流していますからさびしくないです。独居と孤独はイコールではない。私は独居でも、まったくさびしくありません。むしろ、もっと一人の時間がほしいくらい。「独居老人」になることをむやみにこわがらなくてもいいんですよ。(76-77ページ)

 アプリ甲子園という、中高生のためのアプリ開発コンテストがあります。2016年に優勝したのは、「Find Family」という認知症のお年寄りを介護するひとをサポートするアプリを作ったOくん。「Find Family」は靴にセンサーを埋め込み、アプリで位置を表示することができるというもの。埋め込む機器も自分で開発してしまったのだから、すごい高校生ですよ。(84-85ページ)

 何歳からでも、人生は変わる可能性があるんです。だから、とにかく今を楽しく充実させることが一番大事なのだと思います。(99-100ページ)

 10歳の子には、10歳でしかできないことがあります。今しか遊べないお友達もいる。今できることを目一杯体験する。その子が今やりたいことが、コンピュータで遊ぶことなら、プログラミングをやってみるのもいいでしょう。ITにまったく興味を持たず、外を駆け回っているのであれば、それもまたよし。体を動かしたい子、本を読みたい子、ゲームで遊びたい子など、それぞれの子にやりたいことがあるはずです。それを尊重してあげてください。
 これからは、「体験」が重要な学びになります。「知識」を蓄えることはコンピューターのほうが得意ですから、お任せすればいいのです。(117ページ)

 なにかのチャンスがきても「自分はもう年寄りだし」なんて、遠慮してしまっていませんか?年寄りだからこそ、かっこいいとか悪いとか、もうどうでもいいじゃないですか。もともと、ヒットが打てるとは期待されていない身。思い切って楽しんで、バットを振っていきましょう。(119-120ページ)

 相手の立場になって考え、ひとの話をよく聞く。この2つを守るだけで、何歳からでも友達はできますよ。(135ページ)

 読書は私にとって初めての、一生続く趣味だと思っています。そして、あらゆる学びの扉でもあります。本当はもっと、読書の時間がほしいんです。でも今は、仕事が忙しくてあまり時間がとれていません。仕方ないので、本を好きなだけ読むのは、老後の楽しみにとっておくことにしましょう......さて、私の「老後」はいつくるのでしょうか。(143ページ)

 そこで私は、たとえば「介護情報士みたいな方がおられたらいいな」と思うのです。AIスピーカーやロボットなど、介護に役立つIT機器の初期設定と使い方の指導ができるひと。ITと介護の両方に詳しい介護士さんです。(173ページ)

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