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人はいかにして癒やされるのだろうか

(最後までお読みいただけるようにしています)。
みなさんこんにちは!
悩み傷つけられた心はどうやって癒やされると思いますか。エゼキエル書34章冒頭に「災いだ」から始まる預言者のイスラエルの牧者たちへの威嚇と叱責の言葉があります。「追われた者を連れ戻さず、傷ついたものを包んでやらなかった…彼らは飼う者がいないので散らされ、あらゆる野の獣の餌食となりちりぢりになった」。現代の宗教者も然り。牧師を悩みの治療者に見立てると、教会は「私たちのクリニック」になりかねません。羊飼いと羊の関係を先生と生徒、父と子、先輩と後輩、年長者と若年者のように捉える文化的影響は多大です。しかし、イエスが語る羊飼いはそれとは異なります。羊飼い自身が命を捨てるのですから。
 イエスは目の見えなかった人がファリサイ派の人々に呼び出され尋問され最後には追い出されたことを聞き、心中煮えたぎっています。ファリサイ派の人々に対し「羊は…ほかの者には決してついて行かず、逃げ去る。ほかの者たちの声を知らないからである」(5)と露骨に語ります。「目が見えなかった人は追い出されてもイエスについていくだろう、ファリサイ派に従っても門は閉ざされているし、そもそも誰もついて行かないよ」そんな言葉です。続いて語ったのが今日の箇所です。「わたしより前に来た者」を預言者、バプテスマのヨハネと理解することについては研究者のほとんどが否定しています。「前に来た者」を問答の相手であるファリサイ派と考えて読みます。ファリサイ派は盗人、強盗だと言われています。エゼキエルが呪ったあの飽食の人々です。一方、イエスは自分を羊飼い、門だと述べます。
イエスは囲いの中の羊のため、そして囲いの外の羊のために命を捨てると語りました。これが迷える羊のために命まで投げ出し癒す牧師像に変質されてしまいました。羊は自分のために命を捨てた羊飼いに従属し、恩義と忠誠を誓うでしょう。それを信仰と呼んできたのです。浅はか。それは恐怖による従属です。飽食のリーダーの手口と同じです。
では傷つき疲れた羊はどうすれば癒やされるのでしょうか。「誰もわたしから命を奪い取れない」「わたしは自分でそれを捨てる」というイエスの自律性に着目します。奪う権利を無化する実践です。命を惜しむ構造に埋没し、誰か癒してほしい、誰か助けてほしいと恩義で繋がる世界をガラリと変えるのが羊飼いの自律的実践です。奪われるのではなく捨てる、傷つけられるのではなく傷つく、自分をゆっくりと取り戻すこれが、癒やされるということです。誰かに打ち明けて処方箋をもらっても頼り甲斐があるヒーラーがいなくなればまた同じようになるでしょう。囲いの外にすら出かけ、いのちをとり戻す羊飼い自身も、その道行で傷つけられます。しかし根本的にいのちとは何か、自分の権利とは何かを問う旅の中で多くの傷つけられた人と出会いながら癒やされていくのです。奪うのではなく捨てる〜強盗ではなく与える〜その行動こそが、真の癒しへの道です。だからイエスは門。

公開している教会のウィークリーニュースの巻頭言をそのまま掲載しました。タイトルのみ変更しています。


7 イエスはまた言われた。「はっきり言っておく。わたしは羊の門である。
8 わたしより前に来た者は皆、盗人であり、強盗である。しかし、羊は彼らの言うことを聞かなかった。
9 わたしは門である。わたしを通って入る者は救われる。その人は、門を出入りして牧草を見つける。
10 盗人が来るのは、盗んだり、屠ったり、滅ぼしたりするためにほかならない。わたしが来たのは、羊が命を受けるため、しかも豊かに受けるためである。
11 わたしは良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のために命を捨てる。
12 羊飼いでなく、自分の羊を持たない雇い人は、狼が来るのを見ると、羊を置き去りにして逃げる。――狼は羊を奪い、また追い散らす。――
13 彼は雇い人で、羊のことを心にかけていないからである。
14 わたしは良い羊飼いである。わたしは自分の羊を知っており、羊もわたしを知っている。
15 それは、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同じである。わたしは羊のために命を捨てる。
16 わたしには、この囲いに入っていないほかの羊もいる。その羊をも導かなければならない。その羊もわたしの声を聞き分ける。こうして、羊は一人の羊飼いに導かれ、一つの群れになる。
17 わたしは命を、再び受けるために、捨てる。それゆえ、父はわたしを愛してくださる。
18 だれもわたしから命を奪い取ることはできない。わたしは自分でそれを捨てる。わたしは命を捨てることもでき、それを再び受けることもできる。これは、わたしが父から受けた掟である。」

ヨハネによる福音書10章7-18節

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