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ビリー・ザ・キッド、真実の生涯―第8章

キッドが仲間たちと合流—「リンカン郡戦争」—財産権という作り話—陣営をそっくり変えたキッド

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前章の最後で我々は、キッドをグアドループ山地の峰の上で安らかに眠ったまま放置しておいた。オキーフも同じ山脈の他の峰の上で眠っていた。 彼らの直線距離はそれほど遠くなかったが、その間には障害となるものがあった。渓谷、高台、亀裂、藪などがあり、未開人の一団が鬱積した憎悪を抱えて復讐の炎を燃やしながら待ち構えていたことは言うまでもない。 「うまくいきそうでうまくいかない[訳注:ことわざ]」。翌朝、太陽が東に昇った時、彼らは目覚めた。彼らはお互いの運命について思いを巡らせていた。キッドは昇る太陽に向かってまっすぐ進み始め、昨晩、身を休めた場所の下にある谷に到達した後、ペコス川沿いの牛飼いのキャンプに三日かけて辿り着いた。長い間隔があったものの、彼は何とかして水だけは手に入れていたが、旅の間中、食べ物は野生のベリー以外になかった。彼は全行程を歩き通して、キャンプに着いた時は疲れ切っていた。数日間の休息の後、 もてなしてくれた人々がリンカーン郡戦争の二つの陣営の間でどのような立場に置かれているか聞かされたビリーは、 自分自身の立場を明らかにしてすぐに武装して馬に跨がり、マーフィー=ドーラン一派の牙城へ牛飼いとともに一緒に向かった。そこで彼は、リオ・グランデ川で別れたジェシー・エヴァンズと仲間たちと再会した。

キッドはオキーフの運命がどうなっていたのか非常に心配していたので、二、三人の少年とともにラス・クルーセスに向かった。もしそこでオキーフの音信がわからなければ、グアドループの道へ戻って彼を捜索しなければならない。もし捜索に失敗したら「インディアンをやってやる」と彼は言った。彼は決して友人を見捨てなかった。ラス・クルーセスには他の用事もあった。お気に入りの葦毛の馬がそこで待っているはずなので、またその馬に乗りたいとビリーは思っていた。

山地の荒れた道にいるオキーフの所に戻ろう。キッドのように彼は長い間、眠って元気を取り戻したと感じた。しかし、相棒よりも幸運に恵まれていなかったせいで前日、水を確保できず、飢えだけではなく渇きに非常に苦しむはめになった。

最初に彼の心に浮かんだことは、最近、起きたばかりの凶行の舞台からできる限り離れることであった。しかし、水不足による苦しみは非常に切実だった。彼は一種の精神錯乱に陥って、泉に戻って水を入手したいという衝動に駆り立てられた。しかし、彼は隠れ場所にしばらく留まって、夜になるまで筆舌に尽くし難い苦痛に耐え、恐怖に苛まれながら聞き耳を立てていた。月明かりが微かにあった。彼は泉と水筒を見つけた。すぐに渇きを癒やして水筒を満たすと、彼はキッドの馬とラバを残した場所に戻った。彼は、最後に見た所からほとんど離れていない場所で銃弾に撃ち抜かれた馬の死骸を見つけた。しかし、ラバの痕跡はどこにもなかった。そこでトムは自分の足で入植地まで戻る旅をこなすことになった。

その夜と翌日、ずっと彼は歩き通した。キッドと同じく彼は、「飢えを満たせる」青いベリーを見つけた。正午頃、彼はインディアンのキャンプ跡を見つけた。そこで彼らはウバタマ[訳注:テキサスおよびメキシコ北部産のサボテン]を炙っていたようだ。彼は穴の周りの石や地面を突っつき回して半分焼けた残骸を見つけた。それは彼にとって十分なご馳走であり、これからの旅に持って行くのに十分な量であった。

数時間後、放浪者は山地の南麓にある広い平原に出た。幸運は彼を見捨てなかった。柔らかい地面の上に逃げた自分の馬の馬蹄を見つけることができた[訳注:蹄鉄の形状は馬ごとに異なるので持ち主は馬蹄を見れば自分の馬かどうかわかる]。夜の帳が降りて疲れていたものの、彼は暗闇に視界を完全に奪われるまでその跡を追った。夜を過ごすのに「柔らかい地面」がないかと探していると、100ヤード[約90メートル]離れた右側に動くものを見つけた。それは自分の馬だとすぐにわかった。その夜、彼はサドル・ブランケット[訳注:鞍と馬体の間に挟む毛布]に包まって眠った。そして、しばらくしてからリオ・グランデ川のほとりに無事に戻った。

ラス・クルーセスでキッドとオキーフは驚きと喜びの再会を果たした。キッドはリンカン郡戦争に加わるようにトムを説得しようとしたが、失敗に終わった。彼は、もうこの地方は十分に見て回ったし、メスカレロ族ともう二度と遭遇したくないと思っていた。

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