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ビリー・ザ・キッドの生涯―第三章 執行官になったビリー

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リンカーン郡戦争の全期間を通じて、若きビリー以上に血に飢えていて、雇い主の大義に忠実な者はいなかった。

最終的に戦争は終わりを迎えるか、もしくは戦闘行為が一時的に止んだ。すべては驕り高ぶった牧牛王たちにとってうまくいったかのように見えた。牧牛王たちは、盗んだ財産の大部分を保持することを認められた。

法の裁きがもたらされるどころか、ジョン・チザム老はフロンティアで影響力のある人物になり、高官たちや政治家たちと肩を並べるようになった。

チザムの影響力のおかげでビリー・ザ・キッドは1879年2月に治安官に任命された。

恐れ知らずの若者は行状を改めて尊敬される市民になることを期待されるようになった。

しかしながら、彼は同じような野蛮な残虐行為で雇い主に依然として奉仕していた。ジョン・チザム老は[ペコス]渓谷の他の牧牛業者に警戒心を抱いていて、彼らを妨害する機会を決して逃さなかった。

元ミズーリ州ラファイエット郡であるトマス・ケイトロンと元連邦議会議員のスティーヴン・B・エルキンズはペコス渓谷に大規模な群れを持っていた。

ウィリアム・モートンとフランク・ベイカーの2人は誠実な牛飼いとして雇われていて、雇い主の利益に常に忠実であった。

チザムは、狡猾な者に知られているあらゆる手段を使ってケイトロンとエルキンズから牛飼いたちを奪い取ろうとしたがうまくいかなかった。彼らは金による買収に応じず、嘲りとともに老いた悪党が申し出るすべての誘いに怒りを向けた。

治安判事の前に出たチザムは、自分の牛の群れから牛を盗んだという罪状でモートンとベイカーに対する逮捕令状を発行してもらった。彼は復讐の計画のために虚偽の告発をした。

逮捕状はビリーの手に委ねられた。

逮捕令状をビリーの手に渡しながら治安判事は「補佐と一緒に行ったほうがいい」と言った。

若き執行官は「いいや、悪党が2人ぐらいなら俺だけで十分さ」と答えた。

「ここにいるマククロスキーを同行させてはどうか」

キッドは「俺には必要ないけど、何か見込みがあるかもしれないから一緒に来るといいさ」と微笑みを顔に浮かべながら言った。

ビリーがマククロスキーとともに去るのを見送りながら治安判事は「奴は完全に悪魔だな。どうやら殺すのが好きなようだ」と独り言を言った。

ビリーとマククロスキーは馬に乗ってケイトロンとエルキンズの牧場に向かった。

彼は近くにいたカウボーイに「ウィリアム・モートンとフランク・ベイカーはいるか」と聞いた。

牛飼いはあまり遠くない場所に立っている2人の男を指差しながら「彼らならあそこに立っている」と言った。

キッドは「降伏しろ。おまえたちは俺の捕虜だ」と叫んで、逮捕令状の代わりにリボルバーを出した。

男たちは警戒しながら視線を向けて治安官の姿を認めた。男たちの片割れが言った。

「もちろん俺たちは法の執行官に降伏する。しかし、俺たちにどのような嫌疑をかけられているのか知りたい」

キッドは「牛泥棒だ」と断言しながらピストルを彼らの頭に突きつけるような脅迫的な動作をした。

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