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ビリー・ザ・キッド、真実の生涯―第3章

ソノラでの賑やかな暮らし—ホセ・マルティネスの殺害—窮余の一策—鋼鉄のような神経—命を賭けて—会心の一撃—沈着冷静—命懸けの騎行と幸運な逃亡

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スペイン語の知識とメキシコ人がおこなっていたあらゆるトランプ賭博をこなせる腕前のおかげでビリーは、一級のギャンブラーにして高尚な紳士という名声をソノラで確立した。ソノラにおいて知られている彼の経歴のすべては、思いがけない事実について彼自身が語っていたことから集められている。詳細も日付もわからない。彼はソノラへ独りで行ったが、メルキアデス・セグーラという名前の若いメキシコ人ギャンブラーとすぐにつるむようになった。その関係は[メキシコ]共和国に滞在している間、続いた。

ソノラでの逗留期間、ビリーが死ぬほど危険な目に1度遭ったことが公式記録に残っている。そして、その結果、ビリーはすぐに恒久的に根拠地を変える必要に迫られた。その事件は、賭博用のテーブル越しに起きた賭博師のホセ・マルティネスの殺害である。数週間にわたってマルティネスはビリーに対して執拗に脅迫や侮辱を繰り返し、しばしばビリーが賭博でまともに勝ち取ったお金を払おうとしなかった。ビリーが集会室に入ってくると、マルティネスはお金を入れた引き出しから六連発銃を取り出して横にあるテーブルの上に置き、「外国人」一般、特にビリーに向けた悪罵の長広舌を始めた。

この困難な状況を終わらせることができる方法は1つしかない。ビリーはこの街での問題に決着をつけようと、セグーラとともに馬に跨がって、夜9時頃、集会室のすぐ近くにある2つの出口を持つプラシータ[訳注:建物の名前]に入った。馬をセグーラに預けてビリーは賭博場を訪れた。

予期していたように侮辱が浴びせられた。ビリーのピストルは拳銃入れにあった。マルティネスは、テーブルの上に置いた自分のピストルに手を重ねていた。ピストルに手をかける前にビリーの口から警告が断固とした口調で発せられた。「ホセ、おまえの口と同じようにピストルで勇敢に戦えるのか」。そして、ピストルにその手をかけた。ここでビリーは稲妻のような速さ、鋼鉄のような神経、そして、卓越した技量をピストルで示した。それらは彼に敵よりも有利な立場を与え、彼の名前をピストルに熟練した者達の中でさえ恐怖の的にした。

マルティネスは臆病者ではなかったが、自分の腕前を過信していた。2挺のピストルがまるで1挺のように轟音を放ち、マルティネスは椅子に仰向けになって倒れた。致命的な一撃が目を貫いていた。ビリーは左手で自分の右耳を一打ちした。まるでうるさい蚊を叩くかのように。後に彼は、誰かが3本か4本の髪の毛を掴んで引き抜こうとしているように感じたと言っている。

マルティネスが死んだとはっきり認識する暇もなく、2人の騎行者は街と山脈の間にある沼地を推し通った。ビリーは足からソノラの土を永遠に払い落とした。

約20人のメキシコ人の一団がすぐに追跡を開始した。彼らは追跡を10日以上も執拗に続けた。彼らは、ビリーとセグーラが街から乗った馬を発見したが、逃亡者のような強い動機を持つ者にとって馬はいくらでも見つかるものだ。追跡は実を結ばずに終わり、追跡者達はソノラに帰った。

マルティネス一家は、ビリーを捕縛してソノラに送還した者に巨額の懸賞金を与えると布告した。セグーラにもビリーよりも少ない懸賞金がかけられた。それからマルティネス一家の密偵によってビリーを騙してソノラに戻らせようとする企てが何度もおこなわれた。しかし、餌が小さすぎた[ので失敗した]。

4章に続く。

チワワ・シティ—不遇—運命が死んだ賭博師とダブルン金貨の袋を彼にもたらす—ビリーの胴元を「襲撃」—チワワよ、さらば

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