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ビリー・ザ・キッドの生涯―第二章 リンカン郡戦争

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ビリー・ザ・キッドが残虐な最初の殺人を犯したまさにその時、ニュー・メキシコ準州でリンカン郡戦争が勃発して、しばらくの間、凄まじい勢いで荒れ狂った。

勢力がある牛飼いたちの間で戦争は起き、それは非常に不名誉なものであり残虐なものだった。牧牛王のジョン・チザム老とその連携者であるアレグザンダー・マクスウィーンが牧草地を独占しようと決意したことで戦争が始まった。彼らは8万頭の牛をペコス渓谷に持ち込んだ。

小規模な牧場主たちの群れは、[チザムとマクスウィーンの牛の群れの]蹄と角の奔流によって排除された。

[小規模な]牧場主たちの数百頭の牛の群れは、抵抗し難い流れに呑み込まれてしまった。そして、無理を取り戻そうと試みたが無駄だった。

小規模な牧場主たちが牛を盗まれたとチザムとマクスウィーンに抗議しても無駄だった。牛を取り戻すために公正な手段に訴えかけても無駄だった。

法の手が彼らに及ばなかったせいで必然的な結果が生じた。牧場主たちの間で衝突が引き起こされ、しばしば流血をもたらした。

最終的にすべての小規模な牧場主たちは、迫り来る大津波に対抗するために、マーフィー=ドーラン社に彼らの財産を預けた。

両陣営はできる限り多くの男たちを集めて激しい戦いに備えた。

ある夜、チザムとマクスウィーンの小規模な部隊が小川の岸でキャンプしていた。男というよりも少年と言うべき者がキャンプの方に向かってきた。

カウ・ボーイたちと牧場主たちは、関心を抱いて彼のことを見た。彼は黒い半野生馬に跨っていた。半野生馬は速度と耐久性に優れた動物である。彼の身長は5フィート2インチ[157cm]を越えていないようであり、風雨にさらされていない柳のような体型であった。

腰の周りに締められたベルトには、銀の装飾を施したリボルバーと長柄の両刃のナイフがあった。鞍弓には拳銃入れがあり、さらに2丁のピストルが収められていた。そして、彼の手の中には連発式ライフル銃があった。ライフル銃には革帯が取り付けられていた。革帯を使えば、ライフル銃を背中にうまく固定できた。

騎手が恐れる様子もなく接近してきた時に1人のカウ・ボーイは「奇妙な見かけのあいつは何者だ」と言った。

草の上に座っていた若い無法者が立ち上がり、手でひさしを作ると[前方を見て]「ちょっと待て、俺は奴を知っている」と言った。

「あいつは誰だ、トム」

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