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歌った!踊った!泣いた!QUEEN+Adam Lambert東京公演初日[2024年2月13日]

4年ぶりのQAL日本公演。前回は新型コロナがひたひたと近寄っていたけれど、まだ海外との行き来が可能で緊急事態宣言が出される直前の、本当にギリギリの来日。奇跡のような公演だった。その時すでに最後の来日になるかも、と噂されてたけど、まさかまさかの再度のジャパンツアー。

なのだが、ワタクシ、今日までイマイチ盛り上がっておらず。チケットの発売が去年の8月だった上に、つい1カ月前に同じ東京ドームで観たビリー・ジョエルの余韻に浸っていたので、なかなかQUEENへ気持ちが向かなかった。

そんなぼんやりした気持ちは1曲目の「Machines」から続く「Radio Ga Ga」でぶっ飛ばされた。さすがQUEEN+Adam Lambert。スタジアムバンドの本領発揮で「東京ドームなんぞ小さい、小さい」とばかりに、序盤からQUEENの世界にぐいぐい引き込んでいく。

MCは控えめ、飛ばす飛ばす、のロックを多めにしておきました、という選曲。前回の埼玉アリーナより私の席が前だったせいなのか、1曲目から総立ちでお客さんのノリもいい。お年頃のファンも多いので、私と同じく腰は痛いし、五十肩もあるだろうけど、歌うし、踊るし、「Radio Ga Ga」や「We will Rock  You」でもしっかり腕を上げて手を叩いていた。盛り上がる観客にブライアンも満足げな表情を見せてくれて、こちらもうれしくなる。ロジャーもいつもよりファンサービス多めの感じ。アダムの歌声は相変わらず、伸びやかで艶があり、迫力も満点。今まで観たなかで、ステージと観客の一体感は抜群だった。

前回は映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットした余波もあり、フレディの面影がつねに漂うステージだったのだけど、今回はQALとしての公演を重ねてきたせいなのか、ブライアン、ロジャーのQUEEN現役2人とアダムががっぷり四つに組んだ感じで、アダムの魅力が以前よりもっと前面に押し出されていた気がする。私はフレディが亡くなったあと、誰かがQUEENのボーカルを取るなら、ジョージ・マイケルしかいないのではないかと思っていたのだけど(それくらいフレディ追悼公演のジョージ・マイケルは素晴らしかった。別腹として、ポール・ロジャースとQUEENの組み合わせも私は好きなんですけどね)、今日の公演は「アダムという稀有なボーカリストが歌ってくれて、QUEENというバンドを今につなげてくれて、本当にありがとう」という気持ちになった。QUEENが進化を続け、前回以上に新しい未来を見せてくれた、と思ったからだ。

それでも、フレディの映像が映し出された瞬間は、ぐわーっと涙がこみ上げてきたけれど。残酷なことだけれど、亡くなった人と生きている人間との間では、時間の流れが変わってしまう。どんなに亡くなった人を愛しく思い、大切にしていても、生きている人間は経験を重ね、前へ進んでしまう。一方で亡くなった人の時間は止まったままだ。たとえ、夢のなかで時間の壁を越えてめぐり合うことがあったとしても、死者と生者の時間のズレはどうやっても修正できない。

フレディが亡くなったとき、体調が悪いらしい、AIDSらしいという噂をぼんやりと知っていても、私にとって、その死は突然だった。それから、どうにもフレディの不在をうまく消化できなかったところに、映画の「ボヘミアン・ラプソディ」とアダムが歌うQALが現れたことで、フレディの死を自分が生き続ける時間につなげることができた。4年前の公演は、その確認に行ったようなものだった。

今回はそれよりQALが大きくなり、フレディの魂を受け継ぎながらも、アダムと今のQUEENでなければ作り出せない世界を見せてもらうことになった。アダムの歌声が活きる曲が選ばれているように感じたし、アダムも前回よりずっと自分のものにしていたと思う。QALの完成度の高い素晴らしいライブに、フレディも天国で微笑んでいるのではないだろうか。

もう一つ、印象深かったのは、この4年間の変化だ。現代に起こるはずがないと思われていた、古い価値観が亡霊のように蘇ったような戦争が勃発し、激しい気候変動により、世界各地で災害が多発するようにもなった。ブライアンのソロパートには人類が危機にある社会情勢が盛り込まれ、観客に考え、行動することを迫るメッセージが明確だった。それを観ながら、私は「そうだった。ロックは、私に世界に目を向けさせ、社会に対して自分がどう関わるのか、何が人生で大切なのか、という生きるための根源を教えてもらったのだ」とも思い出していた。

QUEENは今回の来日がいよいよ最後、と言われている。「私を洋楽ロックの世界に導いてくれたきっかけが、Queenだったんだよなぁ」と過去を重ねながら、「Got Save the Queen」でおじぎをするブライアンとロジャーの姿に、また涙がにじんだ。最終公演の明日も行く予定なのだが、「Who Wants to Live Forever」あたりから、ボロボロ泣きそうである。

[おまけ]
音楽ライターでもないので、作るとは思わなかったけど、映画が大ヒットしたおかげで作れた「AERA in Rock クイーンの時代」も貼っておきます。QUEENをきっかけに洋楽ロックにドハマリした年代のライター&編集者が、当時の「MUSIC LIFE」に敬意を込めつつ、好き勝手に作った「同人誌(そういうレビューを書かれて納得しちゃったので)」でもあります。あら、Amazon、もう在庫補充なしなのね。まだ断裁されてないと思うんだけどなぁ(笑)




仕事に関するもの、仕事に関係ないものあれこれ思いついたことを書いています。フリーランスとして働く厳しさが増すなかでの悩みも。毎日の積み重ねと言うけれど、積み重ねより継続することの大切さとすぐに忘れる自分のポンコツっぷりを痛感する日々です。