ろったちゃん

『ロッタちゃんと赤い自転車』 1992年 スウェーデン 監督 ヨハンナ・ハルド 原作 アストリッド・リンドグレーン

《あらすじ》
スウェーデンの小さな町に暮らすロッタちゃんは5歳のお誕生日のプレゼントにどうしても自転車が欲しいのだけど「ロッタにはまだ早い」と全くとりあってもらえない。そこでお隣に住むベルイさんのお家の納屋から大人用の自転車をこっそり出して何としてでも自転車に乗ろうと頑張るのだが・・・

《感想》
 もう本当に本当に大好きな「ロッタちゃん」シリーズ。ロッタちゃんの世界が好き過ぎて何度も映画館に足を運んだり、レンタルビデオ屋さんから販促用の等身大パネルをもらって部屋に飾っていたほどに大好きな作品です。
 ロッタちゃんシリーズの映画を初めて観た時、私はもうとっくに大人になっていたのですが、今さらながら「あ、女の子が怒ってもいいんだ!」という当たり前のことを目の当たりにしてすごく気持ちが軽くなったことを覚えています。そして、小さな体全体で怒りのパワーを大爆発させているロッタちゃんの姿に(自転車が欲しくて、乗りたくない三輪車をガンガン蹴る場面なんてもう最高)心の底から沸々と女の子マグマがわいてくるような、そんなパワーをもらいました。
 物心ついた時から何となく「怒ることは悪いこと」だとか「女の子は自己主張してはいけない、控えめにしていなければいけない」という感覚が自然と染み付いていた九州出身の私にとってロッタちゃんの「何としてででも自分の欲しい物を手に入れるのよ!」と欲望に果敢に突っ込んで行く姿と、その行動が否定されない世界はかなり新鮮なものでした。そしてその姿に触発されて私の心の中の蓋がポンと外れて「欲しいものは欲しい、それでいいじゃないか!」と、ファイティングポーズをして大きな声で叫びたくなるようなあの開放感は今でも忘れられません。
 以前に紹介した『少女は自転車にのって』の主人公ワジダも自転車を手に入れるために奮闘しますが(ロッタちゃんとワジダとでは背景が全く違いますが)やはり「自転車」というのは子どもにとって最初の自立のシンボル的な存在なのかも知れないなと思います。
 ロッタちゃんの町では、ロッタちゃんがお散歩しているとすれ違う大人がみんな「ヘイ、ロッタ!」と声をかけてくれて、ロッタちゃんが困っていると「手伝おうか?」と自然に手を貸してくれます。他のロッタちゃんシリーズでも子どもの意志を尊重しながら町全体で優しく子どもたちを見守っている感じがとても素敵なのです。
 そして絵本のようなスウェーデンの町並みが画面の隅々までまんべんなく可愛くて、当時大好きだった(今でも好きだけど)カジヒデキさんの曲なんか聞きながらこの作品を観るとまさに心は「スウェーデンハイ」。もう、誰から何と言われようと気にならない、とってもおしゃれでハッピーな気持ちになるのです。

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