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江戸時代に学ぶお金 その27:お金に対して利発な人は強い


巻6② 見立てて養子が利発

日本では商い口といって、商人が「儲けはなしだ」とそれぞれしい誓文を唱えると、客はこれに気をゆるして、なんでも買い求めるのが世間のならわしである。

江戸の人たちはみな太っ腹で、いろいろな買い物をけちけちせずに大名風にやってのけ、見事なところがある。
一方、気前のよい江戸に見くらべてみると、いかにも都のけちなことがおかしい。

ここに江戸通り町中橋あたりに銭店を出して、手代を大勢使っている人があった。

大勢の若い奉公人の中に、最近伊勢山田の者だといって、十年の年季で雇った十四歳になる丁稚がいたが、据えられた膳を二、三度おしいただき、飯を食わぬ前に算盤をはじいて、「お江戸に来て奉公をしたからこそ、こんな贅沢な御馳走にありつけるのだ」と、ひとりつぶやいて喜んでいる。

主人は、「なんとまあ利発者であろうか。まだこの若さで、物の道理を知っているとは、天のおぼしめしにも叶う者だ」と、すっかり気に入った。

この丁稚は、ただおいてあった金子百両をみて、
「さてさて商い下手なことです。包んで置いた金子は一両も増えますはしますまい。働きのある小判を長びつの底に入れて置いて、長い間世間をお見せにならないというのは、商人気質とはいえません。こんなお心掛けだから大金持になれないのです」といった。

いかに繁昌するお江戸の地だからといって、人並の働きで長者になることはできないものだ。

『新版日本永代蔵』(著 井原西鶴、訳 堀切実、KADOKAWA)より

300年たってもお金については何ら変わっていない。

本日の学び
・儲けなしとアピールすると確かに売れる。
・タンス貯金していても、一円も増えない。
・お金に対して頭が切れる人は強い

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