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部活動の地域移行における課題と現状は?

部活動を民間に委ねる部活動改革が本格スタートして4月で1年。現状と課題について、最近の記事を追ってみた。

部活動地域移行への取り組み 全国の自治体約半数で進む
 公立中学校の部活動の地域移行へ向けて、令和5年度中までに推進計画と協議会の設置が完了する自治体は5割程度であることがスポーツ庁のまとめでわかった。一方、約3割の自治体では年度内に両方の整備の予定がなかった。地域移行への動きは進みつつも、地域差があることが改めて浮かびあがった。
 調査は昨年6~7月、都道府県・政令指定都市を含む全国の自治体を対象に実施。1447自治体から回答を得た。
 部活動地域移行の推進計画を策定していたのは247自治体(17%)。年度内に策定予定は456自治体で、半数を超える744自治体で未定だった。

https://www.kyoiku-press.com/post-274773/

実際のところはまだまだこれからというのが現状のようだ。一方で地域によっては問題を抱えつつも前向きに取り組む事例も出てきている。岡山県赤磐市は地元の様々な指導者に協力を得た事例。近隣の岡山市ではJ2のクラブチームと連携した事例も。

以下は、3/24の読売新聞の記事だが、事例を含め、問題点も深堀りされ示唆に富んだ内容だった。

参加生徒の9割 肯定的…長崎県長与町教育長 金崎良一氏
 昨年4月、全国に先駆けて町立3中学校の休日の運動部活動を地域に移行した。地元の「長与スポーツクラブ(SC)」が運営し、住民や大学生ら約120人が時給1000円で指導する。12種目に生徒約350人が参加し、これまで大きな混乱はない。生徒へのアンケートでは肯定的な回答が9割で、「他校の友達が増えた」「専門的な指導が楽しい」などが理由に挙がった。
 人口約4万人、3校が4キロ圏内にあるコンパクトさは利点だが、それだけでは実現できなかった。当初は月額3000円の会費に保護者らから「高い」と反発があり、「他の市町は学校で部活動をしているのに、なぜ変えるのか」と言われた。当然の指摘で、地域の理解が鍵だった。
【中略】
 いち早く移行できた背景には少子化に対する強い危機感もあった。生徒数は3校計約1100人で、この10年で約200人も減り、そのうち1校では野球部員が3人で練習すらままならない時期もあった。「子どものスポーツ環境を守る」という一点で地域がまとまった。教員の超過勤務が繁忙期比で月に約10時間減ったが、あくまで副産物だ。
 一方、今年度の事業費約2700万円のうち会費で賄えるのは6割程で、残りは国などの委託費。地域の実情に応じた対応が不可欠で、収支構造や活動内容の見直しが欠かせない。

https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20240324-OYT1T50021/

順調に進んでいる地域でも、費用面では地域の理解を得るのに、苦労しているようだ。いろいろな記事を読んでいると、部活動の地域移行における課題は「人材」「財源」の2つに大別される。先の記事でも以下のような指摘がある。

謝礼や場所代 議論なく…関西大教授、日本部活動学会長 神谷拓氏
 国が掲げる推進期間が始まって1年、状況は進展するどころか問題が深刻化している。教員に代わる指導者や受け皿の団体、活動場所も足りない。自治体の大半がどこから手を着ければいいのか分からず、たじろいで1年が過ぎてしまった。
 部活動を民間に移行した場合、指導者への謝礼や場所代などでいくらかかるのか。どれだけ国や自治体が補助し、保護者らが負担するのか。改革が進まない要因の一つは、最も大事なお金に関する議論なしに、国が自治体に丸投げしてしまっていることだ。国の補助でモデル事業に取り組む一部を除き、ほとんどの自治体が具体的なプランを示せていない。
【中略】
 日本では歴史的にスポーツや文化活動の環境整備がおざなりにされ、その役割を学校が担ってきた。受益者負担としてそのツケを保護者に押しつければ、親の収入によって部活動に入れない子どもが出てくる。部活動はスポーツ基本法や文化芸術基本法で保障された権利で、地域や家庭で差が出ないよう、まずは国が予算面で自治体を支援し、子どもが活動できる環境を整えることが重要だ。その上で、新たな部活動の運営にかかる費用をどう賄っていくかについて、行政や住民、保護者がしっかり議論してほしい。

https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20240324-OYT1T50021/

ちなみに「財源」に関しては以下の記事で、地域移行での金額負担に関して「約6割の人が”3000円以下”の負担ならいいという回答結果」と紹介し、その他にも「補助金に頼らない、新しい仕組み」を提示している。

財源が確保できれば、人材の問題だが、そこはICT活用も一役買いそうだ。以下はマッチングシステムの事例。

その他にも、ICTを利用した遠隔指導や、部活動運営(スケジュール管理・徴収金管理)などの事例もでてきた。部活動による貴重な経験を途切らせることなく、一方で学校側の負担を少しでも減らせるような提案ができたら、と思う。


教育・IT関係の情報、時々一人旅の記録や日々の出来事など発信しています。最近は生成AIにハマっているのでそっち系多め。地方在住。読書好き。犬と猫を飼っています。