日記11月13日

朝眠い目をこすりつつ、電気ケトルで湯を沸かす。熱湯をフィルターに注ぎコーヒーを淹れた。新聞を読みながら飲むコーヒーは至福だ。

7時半、バスにて平家物語の一幕である後白河法皇が建礼門院徳子様の隠棲地である大原に見舞いに訪れた「大原御幸」で知られる大原寂光院でのアルバイトに向かう。

紅葉見物客で溢れ返った大原行きのバスに30分ほど揺られ、アルバイト先に着いた。寂光院はその名の通り山間に挟まれ巨大な木々で日の光が遮られている。

庭園の一面を苔が覆う原始的な美しさが広がる境内。鎌倉時代に造立された旧本尊である六万体地蔵菩薩像が保存された収蔵庫と、火災後に復元された本堂と本尊がある。

収蔵庫は約3年ぶりの開館となり、私はその説明員として訪れた参拝客を案内した。高さ2.5メートルのヒノキ寄木造りでできた旧本尊は火災で黒く焼け焦げた現在もなお、凛々しく立っている。

重要文化財を目の前にして、一言一言責任を持って説明した。参拝客の多くが案内の後沢山質問してくるのだが、こちらも出来るだけ親切かつ正確に回答することを心掛けた。

「君よく覚えたねえ」笑顔で言ってきた一人の白髪メガネのお爺さんがいた。最初は嬉しかったが後から考えると、素人目にはカンペを覚えた説明に聞こえた。ということではないかと思った。

悔しさが残ったが今シーズン最後の大原アルバイトだったので給料を手渡しして貰いバスを乗り継いで帰った。

褒めているようで第三者は真実の眼で人を見ているものなのだな。と思った一日だった。


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