働きがいを求めて

働きがいを求めて 

「加藤さん、おはようございます」
「店長、元気な挨拶ですね、どうしたんですか」
「ははは、品出し専門の求人、いい方が入りましたね」
「店長、更にいい方を集める秘策があるんです」
 ヨコシマスーパーでは、産地表示を法律よりもきちんと表示する事で、売上が伸び、従業員の残業を減らすために、60代以上の方を、開店前の品出し専門の方を募集したのです。
 募集方法も、早朝に、散歩している方に、チラシを手渡しするという、方法で行ったのです。昭和の時代は、求人広告を、新聞の折り込めば、ある程度の数の求人があったのですが、最近は、新聞自体を取っている方が減っているので、特売のチラシも、新聞に載せるより、店頭に置いておいた方が、効果が出ていたのです。
 スーパーの駐車場で、青山店長自身が、求人のチラシを散歩している方に配布したのです。
 今回の加藤さんの提案は、ヨコシマスーパーに設置している、食堂を利用しようとする提案でした。
 ヨコシマスーパーでは、スーパーの二階に社内食堂の設備があったのです。トイレも専用の物が、あり、結構りっぱな設備が、全店に設置されていました。
 ある時期に、合理化と称して、すべての店舗で食堂は閉鎖され、食堂のみが休憩室として利用されていました。
 加藤さんの提案は、この閉鎖された食堂を再開して、朝食、昼食を出そうと言う、提案でした。2時間以上働いた方は、朝食が無料で食べることが出来ると言う提案です。
 朝食と言っても、ご飯、味噌汁、納豆、焼き魚、漬物で、焼き魚が毎日変わるだけで、後は、毎日同じ物で提案したのです。
 品出しをお願いする方は、一人暮らしの方が多かったので、2時間以上働いた方に、無料で朝食が付く、しかも、温かいご飯と味噌汁、焼きたての魚が付くことは、魅力的だったのです。
 ヨコシマスーパーの休憩室には、給湯器から出る、お茶、コーヒーは、無料で飲むことが出来たので、朝食後のお茶も無料で休憩することが出来たのです。
 365日店を開けていたので、週に5日働いていただいた方で、残りの二日も朝食だけ食べたいと言う方は、300円で提供したのです。現金では無く、タイムカードを兼ねた、ICティップカードでスキャンすることで、出勤したか、朝ご飯だけかを確認したのです。
 この朝食無料の対策は、非常に評判が良く、従来家で食べていた方も、出勤前に、300円払って、食べる方が増えてきたのです。
 更に、加藤さんは、いつでも朝食を提案したのです。
 いつでも朝食は、ご飯、味噌汁、納豆、漬物、焼き魚に、売り場で買ってきた、刺身、惣菜を付けて食べてもいいと言う提案です。
 開店前の品出しの方は、開店直後に、惣菜を購入すれば、もう一品追加で食事が出来るのです。
 レジが混み、売り場が乱れてくる、午後4時から2時間の従業員の募集を行ったのです。
 「売り場の顔を綺麗にしませんか」と店頭の掲示板にポスターを貼ったのです。
 時給は1200円、時間は2時間、入社時から有給休暇が付き、2時間以上働けば、食事が付くと言う条件です。
 朝の品出しと違って、60歳以上という条件を書かなかったところ、大学生、専門学生の応募がきたのです。
 4時から、不足している売り場に商品を出し、売り場を綺麗に並べること、商品の顔をきちんと直すことで、売り場は、いつも綺麗な状態を保つ事が出来たのです。
 更に、思いがけない展開になったのです。
 夕食にお店の惣菜を購入し、食べる方が増えたので、味、おいしさについて、意見が多く出てきたのです。一人暮らしの方が、毎日惣菜を購入すると、ちょうどいい量、毎日食べたい味の意見が惣菜担当の方に聞こえてきたのです。
 いままでは、量が多ければいいと思って詰めていても、一人暮らしでは、多すぎて購入したくないとか、毎日選ぶのが面倒だから、白ご飯なしの弁当セットが欲しいとか、もっと、一人暮らしでは作れない、煮物惣菜を増やして欲しいとか、活発な意見が出てきたのです。
 更に、食堂では、プラスチックの容器のゴミが増え、脱プラスチックを真剣に考えなければならない事も痛感したのです。
 いつでも朝食食堂を行う前は、食堂で休憩している方はいても、話している方が少なく、会話も少なかったのです。
 しかし。8時から開店して食堂は、まず、品出しの方が、食事し、出勤前の方が食事し、昼も、惣菜を購入して食事する方が増え、会話も弾んだのです。
 ご飯は、小さな釜を多く準備し、常に炊きたての状態にしたのです。味噌汁は、出汁を取り、ネギ、わかめ、油揚は好きなだけ盛り付けられるようにしたのです。
 食堂を準備する方も、毎日同じ事を準備するので、無理なく運用することが出来たのです。
 店長は、加藤さんの提案を受け、昔ながらの「同じ釜の飯を食べる」事の大切さを再確認したのです。
あくまでも架空のお話です。

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