海外旅行慣れしていないふたりが、新婚旅行でニュージーランドに行った話#5
-Day4-
…え、曇ってるじゃん。
翌朝、天気予報通り曇天の空が広がっていた。
…こんな天気ならやっぱり昨日無理してでも散歩すれば良かった。と肩を落とす。
晴天率が低いマウント・クック。
しかし雨予報ではないし、午後から回復傾向に向かう予報なので予定通りHooker Valley Trackを歩くことにした。
スタート地点の駐車場に着いた時、既に時刻は9時半をまわっていた。ちょっと遅かったかな?と思ったけど、まだ空きがありすんなり停めることができた。
久しぶりに登山靴を履き、紐をぎゅっと結ぶ。準備完了。
…晴れるといいなぁ。
まだ曇天の空。
この旅で1番楽しみにしていた場所だけに、この時はまだテンションが上がらない自分がいた。
Hooker Valley Track スタート
日本で山に行く時は、登山アプリ『YAMAP』を使っている。
コースタイムや水場、山小屋の場所等が書かれている登山地図を事前にダウンロードしておけば、電波がなくとも自分の現在地がマップ上に表示される。登山をするのには必須と言ってもいいアプリだ。(もちろん紙の地図も!)
日本の山のようにマップ上に詳細なデータは表示されないものの、海外でも登山記録は残せるとのこと。
せっかくなら履歴を残したい!と、活動開始のボタンをポチッと押す。
「よし、スタート!」
今回歩く『Hooker Valley Track』はアオラキ/マウント・クック国立公園の中で、最も人気のあるルートだ。
往復約3時間ほどで絶景が見れるという手軽さが良いのだと思う。
反対方向の『Mueller Hut Route』とも悩んだが、上の方の積雪が読めなかったのと、翌日も登山をする予定だったので体力温存のために軽めのHooker Valley Trackにした。
晴れるかも。が、確信に。
歩き始めて10分が経とうとした頃、
左手に白く巨大な岩のようなものが見えた。
「…ちょ!え!なにあれデカッ!!?」
思わず声が出る。
歩き始めは手前の低い山しか見えてなかったので、
雲の切れ間からいきなり雪を纏った山が見えた時、あまりのデカさと迫力にびっくりしてしまった。
…もしかして、思ってたよりも早くも晴れるかも?
ふとそんな事を思いながら先へ進む。
そして山で培った勘が、この後当たることになる。
一つ目の橋に差し掛かるあたりから、だんだんと青空が広がってきた。
そして、雲が抜け、青空が一気に広がったのだ。
「晴れるかも」が、「晴れた」という確信に変わった瞬間。大逆転だ。
日本の山でもこの瞬間は何度も経験したことがある。
雲が抜けて美しい景色が一面に広がるこの瞬間は、登山の中で私の1番好きな瞬間だ。
しかし今回は景色が景色だけに、久しぶりに心が震えて泣きそうになる。
目の前にはマウントセフトンが聳え立ち、山肌には懸垂氷河がぎっしりと残っている。朝の陽で照らされ眩しいくらいだ。そして麓にあるミューラー氷河湖からは氷河の溶けた水がごぉごぉと音を立てて流れていた。
「やばいね。泣きそう。ちょっと綺麗すぎるわ。やばいわ。」
こんな景色がドーンと視界に入ってきたので、英語力もない上に更に語彙力まで無くなってしまった。ちゃんとした言葉を選ぶ余裕を脳に与えてくれない。そのくらい綺麗だった。
「来て良かったね。」
そんな事を言いながら歩き続ける。
見えた、ニュージーランド最高峰
天気は回復してきているもののマウント・クックは雲に隠れている可能性が。晴れているけど山頂は雲で見えない、というのは山ではよくある話だ。
ー しかし今日は天気が味方してくれている。
足早に進むと、「ぅおッッッ!」と、先を歩いていた旦那が大きな声をあげる。(声がデカすぎて前にいた老夫婦がビックリしてた)
え?なに?と思い、旦那が立っている場所に追いつく。
そして、その場所で見えたものは
マ、マ…マウント・クックだー!
雲、かかってないじゃん!
めっっちゃ綺麗に見えてるじゃん!!!!涙
やばい。しか出てこず、またもや語彙力を失った。なんて美しいんだ。
そしてここからはずっと、目の前にマウント・クックを見ながら歩ける超絶景タイムだ。
Hooker Valley Trackは人気ルートというだけに道は整備されていて、かなり歩きやすい。危険箇所もなく、人も多いので道迷いの心配もない。
フッカー氷河湖へ
歩き始めて1時間半ほどで、フッカー氷河湖に到着。
このルートで進めるのは、ここまでとなる。
麓のところに土を被った氷の塊が見える。あれが氷河らしい。(遠かった。笑)
皆この周辺に腰を下ろし休んでいたので、我々もここで小休憩をする。
最高の景色を見ながら、昨夜作ったサンドイッチと持ってきたおやつを食べる。
休んでいると先ほど旦那の声に驚いていた老夫婦から、写真を撮ってとお願いされた。
黙々と歩いていた老夫婦だったのだが、写真を撮るときは2人ともとてもいい笑顔をしていて、ほっこり。
我々も写真を撮ってもらおうと、iPhoneを差し出したのだが、私のカメラを指差して「ほにゃららペラペラ‼︎」と。
そのとき訳が分からず「あー…。This camera is made in japan. 」と答える。すると「???」という顔をされた。
後から「こっちのカメラはいいの?」と言っていたのかと気がつき、相変わらずの会話不能力にひとりで笑う。(そんなの聞いてねーよって感じだよね)
そんなおばあさまのカメラはNikon。made in japan. だった。
マウント・クックを眺めながら30分ほど休み、来た道を戻る。
この景色ともお別れだ。
さよならマウント・クック
帰りはきた道を進むだけなので、サクサクと進む。
お昼過ぎでもすれ違う方が多く、いろんな国の方がいた。
13時半頃、駐車場に到着。ゴールだ。
ふと後ろを振り返ると、朝は曇っていたので分からなかったが、マウント・クックの頂上が見えた。
朝の曇天から一転、とても良いコンディションの中歩くことができ、文句なしの最高のトレイルだった。
マウント・クックもこの日は頂上に雲がかからず、ずっと綺麗に。
美しい景色で身も心も満たされ、名残惜しくもここを去った。
次の町、ワナカへ
今日はワナカという町に宿泊するため、車で移動をする。
途中、プカキ湖のビューポイントで休憩。
そして既にクライストチャーチから約500km(東京ー盛岡くらい)は走っていたので、この旅初めてのガソリンスタンドへ。
残り1メモリを切ろうとした時、なんと次のガソリンスタンドは約80km先とのこと。
え、これ足りるよね…?と焦りつつも、無事に到着。
街と街が隣接していないので、次の街まで100km先は全然普通で、その間は広大な土地があるだけ。スーパーやガソリンスタンド等は見つけたら入らないと、えらいことになる。
いかに日本は小さい土地の中で街が密集しているんだなぁと思った。
カードの差し込み口が無くてずっと手こずっていたら、裏にあったというオチ。(現地の人が教えてくれた、優しい)
ちなみにNZはイギリス英語なので、
「ガソリン」⇨「ペトロル petrol」
「レギュラー」⇨「アンレディット unleaded」と呼びます🗣️
ワナカ到着
無事にワナカへ到着し、ホテルにチェックイン。
今回はここで2泊する。
節約のために、夜ご飯は今日はスーパーで買うことに。
そしてこのスーパーでプチ喧嘩(また)をしてしまう。挙げ句の果てにはパスポートを所持しておらず、お酒が買えなかったりと負の連鎖が。
慣れない環境で過ごしていると、やはりストレスは溜まりお互い怒りの沸点も低くなる。言語も通じないし、疲れのようなものが一気にぶわぁぁあと湧いてきて。
あんなに綺麗な景色を見たばっかりなのに、無性にホームシックになったこの時間。
…なんか、日本に帰りたいなぁ。
ただこの感情は後にも先にも、この時だけ。
最終日には「帰りたくない!!!!」と言えるまでになる。(小学生みたいだな)
お酒のためにスーパーを2往復し、買ってきた食材と持ってきた棒ラーメンで簡易夜ご飯。
明日はワナカにある『Roys Peak』に登る。
今日よりも長い距離となるが、また明日も天気がいい。
準備をして翌日に備えた。
Day4 Fin.
Next.
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