見出し画像

室内シルエット4

ユワール ユウェール ユウォウォウォン
音もなく忍び寄り、体内に浸入する。
さっき、老人をたぶらかして、
なけなしの金銭を巻き上げようとしていた若者の
体に入ったとたん、
その若者は覚醒して、
自らの企みを告白し、老人に謝罪した。
このモノが人の体内に入ると、
思惑とかわるだくみとか腹に隠していることを
自ら暴いてしまう。
妖怪とも亡霊とも言われるが、
名がない。
もともとはある種の精霊だろう。
それが成り下がったのではなかろうか。
あるときは日向のように、
あるときは草むらの蛇のように、
人に接近する。

ユワール ユウェール ユウォウォウォン
あまい言葉をかける男の体内に滑り入り、
自らの下心を相手の女にさらけ出させたこともあった。
でも、そんな男は放っておいてもいいではないか。
権力に胡座をかき、
過去の言動にしらを切り続けている面々をこそ、
標的にしたらどうなんだい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?