空を見たい
空を見たい
きみはつぶやく
ずっと見ていたい
空の大きさを
空の色彩を
刻々の変化を
空の物語を
降り注ぐ光のすべてを
どのように伝えたらいいのだろう
どうしたら伝えられるのだろう
空の記憶がないきみに
そもそも私は
空を見てきたのだろうか
空を知っているのだろうか
明るさが判るだけの視覚のきみは
空をどう感じ取ってきたのだろうか
早咲きの梅の花々のなかで
小鳥がさえずっている
樹の下にたたずむきみの
笑みがふわっと浮かぶ
花の香がほのかに風に運ばれてくる
ふいに小鳥が寒空へと飛翔し
梢の花が揺れる
みるみる遠ざかる羽ばたき
この空の光景をきみに
どう伝えようか
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1月中旬、歌うバイオリニスト・白井崇陽(たかあき)さんのコンサートがありました。
彼は幼くして視力を失っています。
「1日だけ見えるようになったとしたら、何が見たい?」
と問われたなら、
「地上のものは触ったり匂いをかいだりできる。
1日ずっと空を見ていたい」
演奏のあいだのトークでそう語っていました。
この詩はそこから生まれました。
来週も水曜日か木曜日に更新する予定です。
また見に来てください。
私もみなさんのページを訪ねます。
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