見出し画像

第9節 セレッソ大阪vs名古屋グランパス 振り返り

セレサポの皆さん、お疲れ様です。
残念ながら今シーズン初黒星となった名古屋グランパス戦を振り返りたいと思います。

セレッソはいつも通りの433
グランパスは532とも523ともとれる布陣

相手を動かしたいセレッソ

グランパスとしては相手にボールを持たせて自身は低く構えて、相手を引き出してからカウンターで一気に背後を突きたい。
セレッソとしては構える相手をボールを持つことで前へと誘き寄せて、前線で数的・質的な優位を作って攻めたい。

相手にボールを持たせるか、自分たちがボールを持つかの違いはあるけど、両者共にやりたいことを一言でまとめるなら「相手を動かしてその背後を使う」ということだと思う。そのためにセレッソはボールを持つし、グランパスは持たせる。
手段は違うがやりたいことは同じ、というか。

相手を動かす手段の一つが、登里のポジショニング。
時にサイドへ張り、時にボランチの位置へ、時にCBの位置へ。相手を動かして、舩木をフリーに。その舩木が手前、裏、逆サイドなどたくさんの選択肢を持てる状態を作り出して、精度の高いボールを供給する。もちろん舩木以外からもボールは供給されるけど、今のセレッソで最も強力な武器はこの舩木をフリーにする登里のポジショニングと、そのおかげでフリーになった舩木からのフィード。

グランパスは532のような形でミドルブロックを構え、2トップで田中駿汰と登里を見つつ、IHが毎熊・舩木に出ていく形。後ろはセレッソの5人に対して5バック+稲垣で対処するという算段だったのだろう。

この守り方自体、あまり効果的ではなかったように思う。セレッソはこのプレスを掻い潜ることが出来ていたし、掻い潜ったらその先で流動的な奥埜・柴山によって守備陣が動かされ、セレッソが優位だったように感じる。が、それ以上に苦しかったのが奪った後。
たとえ後ろの5枚+稲垣で奪ったとしても、全く攻撃に転じられない。

逆に言うとセレッソは繋ぎながらプレスを掻い潜り相手を押し込んで、切替の速さを武器にセカンドを回収し続け、相手を敵陣に封じ込める。これが出来ていた。

グランパスはさすがにあれだけ押し込まれてセカンドも拾われ続けるとほとんど攻撃の打つ手なしといった状態で、効果的なカウンターといえば26分に永井が抜け出してジンヒョンも交わしたけどオフサイドを取られたあの場面くらいかと。(オフサイドじゃなかったのに審判が笛を吹いて試合を止めてしまい、セレッソとしては助かった。)

かといって後方からビルドアップを試みたとてもセレッソのハイプレスの前に満足に繋げず、苦し紛れに蹴ってはセレッソが回収。とにかくグランパスの前半は苦しかった。

流石にマズいってことでグランパスは手を加える。
特にバタバタ気味だった左CB吉田を河面に交代、直後から非保持時は山中を前に出す442へ。5バックで後ろに引いていても押し込まれ続けるだけだから、それならいっそ前へということなのか。

だが、そんなシステム変更を受けてセレッソは次のプレーで即座に毎熊→カピシャーバへ対角のロングパスを送り込む。

ついさっきまでグランパスは5バックだったので、カピシャーバには常に内田がつくようなイメージだったのが、442になったということで大外レーンは空く。つまりカピシャーバはフリーになれる可能性が高くなる。
それを即座に察知した、見事なプレーだった。
相手を見ながらサッカーをしている証拠だと思う。

これが昨季までとの大きな違い。
昨季まではこちらが狙っていることがバレてその一点を抑えられたら最後、打つ手がなくなるという感じだった。今季は、相手がどう来たらこちらはどう動くという後出しじゃんけんが出来る。だから試合中に相手が形を変えても、それならばと違う形を出せる。

グランパスも、28分にはそれまで見せなかった前プレからジンヒョンのキックを引っ掛けて山中のシュート。
33分にはランゲラックから始まるビルドアップでセレッソのプレスを掻い潜りボールを運ぶなど、グランパスとしては最悪の時間を乗り越えて少し息を吹き返す。

だけど大きくは変わらない。依然としてセレッソがボールを持って、押し込みながら試合を進めるという時間が続く。

今のセレッソは相手がどう来るかを見ながら、毎熊、登里、柴山、奥埜らがポジショニングを調節してボールを引き出して、相手を動かして空いたスペースへ侵入し、ボールを受けたら叩いて動き直して…を繰り返すので、相手からしたら厄介なんじゃないかなと。

後半の立ち上がり

HTにグランパスは山中から中山へと交代。中山が右、内田が左に移る。

後半、グランパスの狙いは明確だった。それはセレッソの左サイド。後半が始まって5分か6分しか経たないうちに、グランパスは登里の裏へ3回も4回もボールを蹴ってきた。山中は負傷交代だったようだが、スピードのある中山を投入した意図は明確だったし、これがセレッソ目線で言うとすごく嫌だった。

52分にはランゲラックのゴールキックを右サイドで三國が受けて(登里に対して三國・中山の2枚をぶつけてきた形)、中央の森島を経由しボールを左サイドへ展開。すると左サイドの和泉からのクロスに稲垣がフリーで合わせるなど、前半には見られなかった良い形が出てくるようになる。

52分、和泉のクロスから稲垣が合わせた場面。
前半から見られた、ゴールキック時に三國を上げる形が
最もハマった場面で冷や汗をかいた


こうやって登里を狙われる場面は今後も増えていくんじゃないかと思う。
くれぐれも注意したいのは、ノボリが狙われるのは彼がダメだからというわけではない。むしろノボリの存在こそがセレッソ最大の強み。だから、相手もそこを狙ってくる。

セレッソがボールを持った際の登里の自由自在なポジショニングを封じるには、登里の裏を使って守備に走らせてしまうのが効果的。攻撃面で脅威になる選手を守備に追わせて攻撃に出られなくするというのは、良く用いられる手法だ。
毎熊もそうだが、セレッソの両SBは特に攻撃面において素晴らしい働きをしてくれるので、相手はそこを封じるために両SBの裏を徹底的に狙ってくる場面が増えていくかもしれない。
今後、セレッソがそれに対してどういう対策を打ってくるのか注目だ。

話を戻すと、グランパスが微修正を繰り返したことによって、後半に入ると試合の序盤ほどセレッソの試合でもなかったという印象。

だけどボールを持つところから始まるセレッソと、ボールを持たせるところから始まるグランパスとの戦いなので、ボールを持つ時間自体はセレッソの方が多いし、持ちさえすれば押し込むことも出来るので、決して「相手に上回られている」という感覚はなかったと思う。

というか実際に大して何もさせてなかった。

困ったときのセットプレー

これはもう語る必要もないかなという話だけど、こんな試合は得てしてセットプレーで動くというもの。

もちろんセットプレーの守備云々も、課題だとは思う。だがそれよりも、良い時間帯に先制点を挙げておきたかった。そこに尽きると思う。

先制された直後に追いついたのはお見事だった。今季初めてリードを許し、浮き足だってもおかしくない中で前プレから奪ってしっかり決め切ったことは本当に素晴らしい。

終盤、またしてもセットプレーから失点を喫するが、この2点目のセットプレーこそまさに「試合の流れとは関係のないもの」だった。
だがグランパスはパトリックという、試合の流れとは関係のないところからゴールを生み出せる選手を投入していたし、そこに対して当たるのが遅れてゴール前に入れられた時点で勝負ありだったのかもしれない。あのFKに対する対応はちょっと緩かったと言わざるを得ない。

勝ち越されてからもしっかりボール保持から毎熊がポケットを陥れるお得意のパターンを見せたりと攻め続けたセレッソだったが、グランパスも最後のところが堅くゴールを割らせない。

グランパスの好調の秘訣はこういうところなのだろう。
決して自分たちの試合ではなくても、最後のところは耐えて、ワンチャンスをモノにする。セレッソだって今季そういう試合を何度か見せてくれたが、この日は相手にそれをやられてしまった。

そのまま試合が終わってしまい、セレッソにとって今季初黒星。

最後に

皆さんが同じ気持ちだと思うが、決してネガティブになる必要はない敗戦だったと思う。

課題は明白。良い流れのうちに決めないとこうなるよという、"サッカーあるある"のような試合だった。
良い時間帯を作ったのならそこで先制しておきたかった。そして、相手の戦い方を見たらカウンターかセットプレーしかないという中で、そこでやられたのだから言い訳の余地がない。残念ながら、試合の大半を有利に進めながらも要所で相手に上回られたということに尽きる。分かりやすいと言えば分かりやすいし、切り替えもしやすい。

今のセレッソは試合の中で自分たちの時間を多く作れているので、当たり前のことだがその時間帯にしっかり得点を奪っておくこと。

強いて言うなら、僕ははどうしても小菊セレッソが1-0の勝利を積み重ねていくチームだとは思えない。
いやもちろん1-0で勝つこともあるんだけど、でも今やろうとしてるサッカー、監督の試合中の動きを考えたとき、やっぱり2点目3点目を決めきっていくことを目指しているように思う。

もちろん都合よく2点も3点も取れる試合ばかりではないので、そんなときにも1-0で逃げ切る、あるいは何とか引き分けに持ち込むということも必要だしそれはそれで出来ているから、決して批判をしたいわけではないけど、このチームが更に強くなるには1-0を作って逃げ切ることよりも、2点目3点目を取れるチームになることが理想なんじゃないかと。

じゃあ更なる追加点を取るために何がポイントかというと、個人的にはIHだと思っている。現状ここがオーバータスク気味で、途中交代前提で走り回る分、どうしても敵陣のゴール前にいないとか、ゴール前に入った時点で既に余力が残っていないということになっている。
じゃあIHにはゴール前にいてもらって…という単純な話でもないので、この辺は試合を重ねながら調整していくことに期待したい。

なんか批判めいた書き方になってしまったけど決してそんなつもりはない。
だけど残念ながら負けてしまったから、これを糧に更に強くなるためにはどうするかっていう視点から考えてみた。

客観的に見ても、今のセレッソは相手からして厄介なチームだと思っている。だから次のマリノス戦が待ち遠しい。
きっとまた良い試合を見せてくれるはずだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?