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第3節 セレッソ大阪vs東京ヴェルディ 振り返り

セレサポの皆さん、お疲れ様です。
今回は東京ヴェルディ戦を振り返っていきたいと思います。


スタメン

前節、数人の選手にアクシデントがあったこと、更に他の選手もコンディションに問題があったとのことでセレッソは3トップを総入れ替え。右にクルークス、左に為田、真ん中に上門。
左の為田は妥当としても、右のクルークスは当初構想外との話がありながらも柴山を抑えてスタメン起用。奮起を期待した人も多かっただろう。
中央最前線もブエノを起用する話もあったが、蓋を開けてみれば上門だった。上門だった狙いは後ほど少し。

それ以外は鹿島戦からのメンバーが継続となった。
ベンチに目を向けると、鳥海が戦列に戻りレオセアラも何とかベンチ入り。ハンビンも今季初めてベンチに入った。

攻勢を掛けるセレッソ

序盤の4分くらいまでの時間帯はヴェルディが積極的に圧力を掛けてきて落ち着かない展開に。
しかし4分、ジンヒョンから為田へとパスを通したことで一気に試合は落ち着きを見せる。あのパスを見てこれはプレスに行くと交わされると判断したのか、それとも最初から5分程度と時間を限定して激しく前へ出てきていたのかは不明だが。

その4分の場面。
セレッソはここまでの試合で見せていたのと同じように、登里を中盤真ん中の位置に移動させる3223の形でビルドアップを図る。

442で迎え撃つヴェルディは染野が西尾、木村が登里、右サイドの山田が舩木を意識しつつプレスを掛けてくる。
空きそうになった田中駿汰には見木が出ていくと、その背後をすぐさま上門が使う。ここを空けてはいけないってことで上門に対しては森田が出ていく。
森田が出て空いたスペースには奥埜が侵入。ここで奥埜が、相手の右SBと右CBの両方の意識を引きつける絶妙なポジショニングから裏を狙う動きを見せ、結果として大外に位置する為田が空くことになった。そこへジンヒョンから一気にパスが通り、状況を打開する。

6:50あたりにまたしてもジンヒョンから為田へとパスが通る。そこから為田→真司→為田とパス交換をするうちに登里が駆け上がってボールを引き出し、最終的には良い位置でFKを獲得。

この場面は先ほどと微妙に違って、山田が舩木に出ることなく登里を意識して内側に絞る。そして山田が絞った脇のスペースに真司が顔を出す。すると、やはりここをフリーにしてはならないってことで森田が真司に対して出ていく。
一方で上門は相手の右SBと右CBのちょうど真ん中あたりの嫌なポジショニングで裏を狙うと、SBとCBの両者が気を取られている間に為田がフリーになったという流れ。最後、相手のSBとCB両方の注意を一人の選手が引き付けることで大外の為田がフリーになるという結果は同じだが、そこに至る過程が微妙に違っていて、個人的には面白いなと感じた場面だった。

で、何が言いたいかというとセレッソは立ち位置で相手を動かして、意図的にスペースを生み出しているということ。
これが、昨季までとの大きな違い。

昨季までのセレッソは、スペースが空いていてそこに正確にボールを繋いでいくのは得意だったが、そもそもの話でスペースを作ること自体は苦手だった。だから相手が空いているスペースを狙われていることに気づき、スペースを閉じてくると、セレッソとしては打つ手がなくなる。

今季は、相手を見ながら立ち位置を変えて、相手を任意の方向に誘導してどこかを空けて、そこへボールを送り届ける作業が一気に上達したように思う。

だが決して繋ぎに固執するわけではなく、例えば先述した4分に為田がフリーになった場面の直後、今度は裏へ走る上門へ舩木からのパスが出ている。で、6分の場面では裏を狙う上門が相手の注意をひきつけて為田をフリーにすることに成功。
セレッソは上手く手前と裏のどちらもチラつかせながら、そして中も外もチラつかせながら、相手の守備の基準点を曖昧にすることが出来ている。

これが、手前ばかりだと読まれるし、外ばかりでも読まれる。相手を真ん中へと誘き寄せて、空いたサイドを使う。相手がサイドを意識してきたら真ん中が空くので、今度はそこを使う。手前と裏も同じ。

常に相手を見ながら立ち位置を取り、相手を動かして空いたスペースへボールを送り届ける場面は何度も作れていて、それが良い内容の試合が続いている理由の一つだろう。

少し話は飛ぶが、35分には毎熊からボランチの森田・見木の間を取った真司へとパスが通ったし、36分にはジンヒョンからまたしてもボランチの間を取った真司へとパスが通っている。ボランチの間や背中を使われるのは、相手にとってみれば最も避けたいことの一つ。セレッソはそこを使うことが出来ていた。
こういうシーンを見ていると、セレッソが上手く相手のプレスを空転させているなという印象を受けた。つまりこの試合はセレッソが優位だったと、個人的には思っている。

セレッソはファイナルサードまでボールを運べたら、狙うのはポケットへの侵入。
特に右サイドでポケットへの侵入は何度も見られた。
19分にはクルークスからポケットへ走り込んだ毎熊へ、毎熊のクロスを上門がニアで合わせる。
34分には今度は奥埜がポケットへ走り込み、クルークスからパスが出て奥埜のクロス。

左は登里のポジショニングからビルドアップを助けつつウイングの突破、もしくはウイングから内側に陣取る登里や真司へのパスからチャンスメイク。
更に、左サイドで組み立ててから右へ展開すると、今度は奥埜や毎熊が積極的にポケットを陥れる動き。
この辺が今季のセレッソの、ファイナルサード攻略のパターンなのかもしれない。

セレッソの流れで進んでいるように見えたが、一方でこれまでの2試合に比べるとちょっと苦労しているのかなという印象もあったのは事実。その理由は二つあると思っている。

まずは相手起因によるもの。ヴェルディは前線のプレスが交わされてからの帰陣が早くブロックはコンパクトなため、ファーストプレスを交わしたその先で仕留め切ることに苦労した。あのマリノスをも苦しめた守備は、かなり厄介なものだった。

そして次に自チーム起因によるもの。この試合に関してはレオセアラではなく上門だった分、裏への意識は強かったが、単純な高さ勝負のロングボールは少なかった印象。後方で繋げなかったときの逃げ道が、一つ少ない状況だった。

そんな中で生まれた41分の得点シーン。
舩木から奥埜へロングボールが入ると、奥埜の外でクルークスがフリーに。
そこからドリブルで仕掛けて右足クロスを放ち、ファーで真司が沈めた。

この場面に至る前の数分間、ヴェルディは何度もプレスを空転させられ、誰がどこにプレスは出るべきか迷いが生じたように思う。
結果、舩木へのプレスが甘くなる、齋藤と見木が2人で田中駿汰に引きつけられてしまう、逆に奥埜・クルークスと深沢は2vs1。奥埜は頭でクルークスへ流すと、クルークスは余裕のある状態からドリブルを仕掛けることが出来た。

配置で優位に立ったことも素晴らしいが、それ以上にしっかりと奥埜へと届けた舩木のキック精度、舩木からのボールを相手を背負いながらクルークスへ頭で流した奥埜、ドリブルで相手を抜いて逆足でクロスを上げ切ったクルークス、そしてマークを外してフリーで飛び込んだ真司。全てが噛み合った見事なゴールだった。

後半開始早々の失点

後半開始早々、またしても圧力を強めてくるヴェルディに対して若干ではあるが受けてしまう展開になったセレッソ。その流れのまま失点を喫することになる。

失点の場面、形としては疑似カウンターに近いもので、ヴェルディがセレッソを前へ前へと誘いだして、そこを一気にひっくり返してのもの。セレッソは基本的にハイラインを敷いているが、その裏を使われてしまった。

サイドは流れた相手ボランチを捕まえきれず、
ハイラインの裏へパスを通された

FC東京戦にしてもそうだが、カウンターでもセットプレーでもないところから、あまりにもあっさりと失点を喫してしまうのは課題だ。(この場面はヴェルディに上手くやられた側面もあるが)

そのまま勢いづくヴェルディに押され耐える時間が続いたセレッソだったが、65分ヴェルディに退場者が出たことで流れは変わる。

退場の場面、既にイエローを一枚貰っていた稲見がジンヒョンのパントキックを妨害し2枚目のイエローを提示され退場。敵ながら、ちょっとお粗末というかもったいないプレーだったように思う。カウンターを阻止したい気持ちは分かるが、イエローを貰っている選手がするプレーではない。

ヴェルディは一人退場したことで割り切って441ブロックを低く構えてカウンター狙いを徹底。で、これはこれで非常に厄介だった。

11人のときは2トップの染野と木村が縦関係になるような形でカウンターを狙ってきたが、それには比較的冷静に対応できていたセレッソ。
しかし10人になると低いブロックから右サイドを中心にカウンターを突き刺してきて、それにはてこずっていた印象だ。対応が後手に回ってファウルで止めてしまう場面が何度か見られ、FKからあわやという場面を作られた。

ヴェルディとしては一人減ったもののやるべきことがハッキリしたという部分もあっただろうし、セレッソとしてはここまで良い試合をしていながら勝てていない上に相手が10人ってことで絶対に勝たなくちゃいけないというプレッシャーもあっただろう。
そこがちょっとした焦りみたいなものに繋がっていたのかもしれない。

しかし最後はしっかりと相手を押し込んでCKを獲得。そのCKから舩木のヘディングはマテウスのスーパーセーブに遭うものの、こぼれ球をレオセアラが相手をフェアに吹き飛ばしながら奪取、直後に倒されPKを獲得し、自らこれを決めて決勝点。

終了間際、パワープレーに出てくるヴェルディに危険な場面を作られながらも耐え凌ぎ、今季初勝利を飾った。

最後の最後、質で殴り勝ったという印象だ。

「質で殴り勝つ」と書くと悪い言い方に思われるかもしれないが、決してそんなことはない。この試合のように苦しい展開で、しっかりと勝ち切ることが出来たのはとても重要なことだ。
10人で自陣深くにブロックを敷いて守る相手を、論理的に崩すのは不可能に近い。どうにかこうにか、力づくでこじ開けるしかないだろう。それが出来たことをポジティブに捉えるべきだと思う。

ブエノと奥埜

今回は試合の中で気になった両選手について触れたい。
この試合では奥埜がどこか痛めている様子もあったので、早い時間帯にブエノへ交代。(前半の30分過ぎに一度奥埜からベンチに対して交代させてくれというジェスチャーを送って、すぐさまブエノがアップに向かったが、その後やはり大丈夫そうだってことでプレーを続行していた)

当たり前だが、二人は全く違う選手だ。

まず奥埜。
彼の持ち味と言えば毎試合12キロ以上走れる豊富な運動量だが、個人的には彼の最も凄いところは「気が利く」ところだと思っている。

奥埜は無暗に走り回っているわけではない。
今、自分がピッチのどこで何をすべきかを瞬時に判断し、それを実行するために走る。極端な話、別に自分がボールを触らなくてもいい。誰かのプレーエリアを確保するために、相手選手を引き連れて走っていく。自分が裏へ走るべきだと判断したのなら40mでも50mでも容赦なく駆け上がっていく。
そして、ボールを失った際もしっかりと帰陣してくれる。
結果として走行距離が12キロにも及ぶ。

対してブエノ。
まだまだ日本に馴染むのはこれからだとは思うが、彼はどちらかというとボールを持ちたい、ボールを持ってこそ持ち味を発揮する選手だろう。だからブエノは「必要に応じて駆け上がる」というよりも「必要に応じて降りてくる」タイプ。なので、どちらかというとブロックの外側でボールを受ける機会が多かった。(相手があれだけ低くコンパクトなブロックを作れば、中で受けるのは至難の業だが)

この試合、ヴェルディは10人になって以降、割り切って低い位置でブロックを作って守ってきて、10人とはいえそれは非常にコンパクトで強力なブロックだったが、一方でセレッソにとっては奥埜が下がったことが余計に事態を難しくした。
ああいうコンパクトなブロックを揺さぶるためにこそ、縦横無尽に走り回る奥埜が必要だったように思う。が、傷めている様子もあり交代させざるを得なかった。

決してブエノに対する批判ではない。
彼には彼の持ち味があるし、そもそもの話だが奥埜の代わりはセレッソにはいない。セレッソにいないというか、日本中を探してもいない。奥埜はそのくらい凄い選手だ。

本来、真司も降りてきてボールを触りたいタイプだと思うし、清武もそういうタイプだろう。
だが、今季のセレッソが上手く回っている理由の一つに「IHが高い位置をキープし、3トップと近い距離でプレーできている」ことが挙げられる。なので、ブエノにもなるべく前目の位置で、3トップと近い位置でプレーしてもらってチーム全体の良い距離感を維持してもらえれば、相手にとってもっと怖い存在になるんじゃないかと思う。

ブエノと上門

ついでにもう一つ。
今日の試合はレオセアラの状態が懸念されていたことから、ブエノの1トップ起用も噂されていたが、結果としてスタメンに選ばれたのは上門だった。

この理由も想像はつく。

まず、何度も書いたがヴェルディのブロックは非常にコンパクトだ。コンパクトなブロックを攻略するために、上門にはサイドや裏へと走ってもらって、ブロックを広げようという作戦だったんだろう。

その点、ブエノがトップに入るとおそらくだが降りてくるタイプ、いわゆる”0トップ”気味の形になるだろう。それだと、ヴェルディは余計にブロックをコンパクトにし圧力を強めてくる。そうなればヴェルディの思う壺だ。
実際、上門が裏を狙うことで後方の選手のプレーエリアを確保することは出来ていたので、采配は的中と言っていいと思う。

あとは守備の局面において、上門ほどプレスが上手い選手はなかなかいない。背中で相手を消しながら距離を詰めて、あわよくば奪いきってしまうのが上門の凄さ。ヴェルディのビルドアップを封じるために、上門のプレス強度を買ったんだろう。
こちらについても、相手GKやDFからあわやボールを奪いそうになる場面を作っていたので、上門の起用は当たっていたと思う。

IH起用にしても前線起用にしても、ブエノに関しては秘めてるものはかなり大きいと思うので、あとはその能力をチームのどこでどうやって発揮してもらうか。そこを詰めるのはまだまだこれからだろう。

で、これもIHでもトップでも言えることだけど、今のセレッソのやり方で「降りる」という選択は最小限に留めるべきだと思っている。アンカーの田中駿汰ですら、安易に降りることはしない。でも、それが非常に大きな効果を生んでいる。

それよりも、どちらかというと「降りずにそこに留まる」という選択を、どれほど出来るか。もちろん、ただそこに突っ立っているのではなく、相手をひきつけながら高い位置を取る、あるいはブロックの中で空いているスペースを見つけて侵入していく。これが出来るようになったときに真価を発揮しそうだと思っている。

個人的には、ブラジル人選手にありがちな「暖かくなってから本領発揮」を期待している。彼がハマれば、一気に強くなる。

最後に

ありきたりな言い方かもしれないが、今節は本当に結果が必要だった。
形がどうであれ勝てたこと、これがとてつもなく大きいと感じている。

1節も2節も悪くない、むしろかなり良かったと誰もが思っていただろう。
やっている選手たちも、見ているサポーターたちも同じ気持ちだったと思う。だが、結果だけが出なかった。
内容がダメで結果もダメっていうパターンが最も苦しいのは当然としても、内容は良いのに結果が出ないというパターンだってもどかしく苦しいものだ。

で、これが本当に2試合だけ結果が出ていないのなら問題はないかもしれない。でもセレッソは、昨季の終盤からずっと結果が出ていなかった。

見ている側もそうだしプレーしている側ももしかしたら同じかもしれないが、2試合なら我慢出来ても半年となると我慢できなくなってくる。

しかもこの試合、相手は退場者まで出してしまった。
ヒヤッとする場面もあった中で、もしいずれかのチャンスを決められて10人相手に負けてしまったら、一気に空気が悪くなっていたかもしれない。
せっかく良い内容でプレーできているのに、選手やサポーターから変な空気感が出てしまったら、迷いが生じて今までのように良いプレーが出来なくなる。今まで出来ていたことが出来なくなるのは、最も深刻な事態だ。

そうなる前に、勝てたことが本当に良かった。
今やっていることは間違っていないだけに、自信を確固たるものにできたことが良かった。

もちろん、まだ課題はある。
何度も書いているが守備面の課題は大きい。だが、きっとそこはチーム全体で共有しているだろうと思う。これからの改善に期待だ。

だから、とりあえずは今やっていることに対して自信を深めた状態で、また次の試合に臨めることが大事なんじゃないかなと。

今はやりたいことが出来ていて、狙いもすごく伝わってくるので、次の試合が楽しみで仕方がない。見ている側がそうだということは、プレーしている側はもっと楽しみなんじゃないかな。

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