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となりのトトロ

この前、初めて全編を見た。子どもの精神的な成長を見事に描いている。

さつきとめい。
母親が療養のために入院することになり、考古学者の父とともに空気のきれいな田舎に引っ越してきた小学生6年生のさつきと四歳のめい。

病院のカレンダーを見る限り、2か月足らずの出来事ではあるが、2人の成長、特にめいの成長が丁寧に描かれている。後述するが、その中で象徴的に書かれていた、どんぐりの変化が一番心に残った。

最初の方は、さつきの言動と行動を真似するだけだった。

一人で遊んでいるときに、どんぐりを追いかけて、森の中に迷い込み、トトロと出会う。
由来は知らないが、全部同じ「お」という母音なので、幼い子供に発音しやすいことも理由になるのではないかと思う。

トトロとの出会いで、自分の心のよりどころを得られる。
出会ってすぐ安心しきり、寝てしまうことからも見て取れる。

それでも、母親役を担っていたのは、姉のさつきだった。

さつきが学校で勉強しているときに、預けられていたおばあちゃんに無理を言って、学校まで来て、姉と一緒に過ごすことになる。

姉に頼ることが多かっためいだが、母親の体調悪化により変化が訪れる。

母親の体調が悪くなったという電報を受けて、週末に予定されていた母親の自宅療養が延期される。

その事実が受け入れられず、初めは泣きじゃくっていたが、めいは、徳野病院まで一人で向かおうとする。

おばあちゃんが、この畑でとれた野菜を食べれば、お母さんのすぐ治るといっていたので、めいは、トウモコロシを届けようと必死になる。

とはいえ、四歳の土地勘と体力では到底行けるはずもなく、途中で途方に暮れる。

トトロにお願いして、猫バスで見つけてくれたさつきのおかげで、病院にたどり着くと、母親が父親と談笑している。

ここで、病室に「おかあーさーん!」と走りこむのではなく、近くの松の木に上り、見ている。このシーンも好きである。

母親と距離をとって見守ることができている。

少し後、持ってきたトウモロコシにおかあさんへと書き、こっそりおいていく。

そこで、母親が、「そこの松の木で、さつきとめいが笑っているような気がして」といった。

最初は、どんぐりに興奮して、無邪気に遊んでいた。

苦しみと大冒険によって、松の木の上から眺められるようになっている。

どんぐりが目を出して急に松の木になったような急成長が、さつきはもちろん、めいに特に見られた。

めいが成長し、一人でこなそうとするようになったことが、エンディングソングの中で描かれている。さすがジブリだと思った。

自分より小さい子のお世話をしているのにくわえて、ぬいぐるみを背負っている。移行対象である。

徐々に自立している姿が描かれている。

さつきも、妹の前ではしっかりしているようにみえるが、おばあちゃんの前で糸が切れたように泣いている。そういう姿を見ると、彼女なりに苦しみながら成長しているのだと感じた。

となりのトトロという題名もいい。

トトロは、2人の心の支えになったが、となりという立ち位置は変わらなかった。決して、親の役目ではない。隣りでそっと支える。

家族でも友達ではないが、いや、だからこそ、彼女たちが無条件に甘えることができた。

その甘え方も丁寧に書かれていて、夜にトトロに乗って空を旅した後、楠の上で楽器を吹く。

そこのとき、トトロの隣にいるのはめいである。その名の隣にさつきが座っている。

より幼いめいがトトロの近くにいることで、幼少期の関わりをうまく表現している。

驚嘆の一言である。

父親がもっと、感情豊かに接してくれよとは思ったが。


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