HIDDEN JIU JITSU - Cross Collar Choke -

1 本稿では、あらゆる「締め」技の基礎となる(と私は考えている)「クロスカラーチョーク」について考察する。
 「クロスカラーチョーク」については別記事でも書いた事がある(注1)ので、本稿は言語レベルの情報としてはそこに記載された以上の内容を含んでいないかもしれない。むしろ、短期間でそんなに簡単に言う事が変わるような人物の言う事は信用しない方がいいだろう。

注1)

 英語では「クロスカラーチョーク」と一括りにされているが、「クロスカラーチョーク」と言っても厳密には「逆十字締」「片十字締」「並十字締」の3つがあり、本稿では「逆十字締」と「片十字締」を素材として扱う。

注2)「逆十字締」

 英語では「Palm up Palm up Choke」という別称がある。
「片十字締」

 英語では「Palm up Palm down Choke」という言葉で「逆十字締」と区別される事もある。
「並十字締」

 「クロスカラーチョーク」があらゆる「締め」技の基本だと私が考える理由は、①「締め」は相手の頸動脈に圧迫を加えて、脳への血流を止め、落とす技であるという理合を理解し、②頸動脈に圧迫を加えるには、手ではなく「腰で締める」のが効果的であり、その感覚を理解するのに「クロスカラーチョーク」のドリルが役に立つからである。

 YOUTUBEの「ブラジリアン柔術」のカテゴリーで「クロスカラーチョーク」を検索しても、特にクローズドガードからの「クロスカラーチョーク」については、(日本語・英語を問わず)ほとんど動画がない。最近の公式試合ではそもそも「クローズドガード」に入る展開がないせいか、試合で使えない技術として打ち捨てられているのかもしれないが、そうだとしたら実に勿体ない話である。
 試合で使う・使わないという功利的な点を抜きにしても、クローズドガードからの「クロスカラーチョーク」をドリルして、「締め」の理合が分かれば、サイドやマウント、場合によっては、オープンガードからの「締め」を習得するのにも必ず役に立つはずである。

 それでは実際に「ブラジリアン柔術」における「クロスカラーチョーク」について見てみよう。

 「クロスカラーチョーク」のイメージを掴んで頂くためにこの動画を掲載したわけだが、これを見て「クロスカラーチョーク」の理合が分かる人はほとんどいないと思う。先に「クロスカラーチョーク」の動画がほとんどないと書いたが、動画があってもその理合まできちんと解説しているモノは本当に少ない。スパーや試合で使う機会がない上に、掛け方についてきちんと説明してくれる人がいなければ、これを習得しようという人が出てこないのもむべなるかなである。

2 本稿の執筆に当たっては多くの動画を参照したが、「クロスカラーチョーク」の理合を手短にかつ分かりやすく解説していたのは次の動画である。

 ホジャーが言うように、多くの人は「クロスカラーチョーク」を両手を引いて締める技だと思っているが、それは間違った理解だと私も思う。
 「手首を(内側に)返し、相手の頸動脈に圧迫を加える」。上の動画でも両手で相手の襟をグリップし、手首を返した後に相手を自分の胸に引き付けているが、「両手で相手を引っ張って締めるのではない」とホジャーも注意を喚起している。
 「クロスカラーチョーク」は、①両手で相手の頸動脈を捉え②手力で締めるのではないという基本的な理解を前提に、クローズドガードからの「クロスカラーチョーク」について私も理に適っていると思うやり方を次に紹介する。

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