山口遼

WEBライター。 生業の傍ら、作家を目指して大型新人賞を獲るべく小説も執筆。 東京は吉…

山口遼

WEBライター。 生業の傍ら、作家を目指して大型新人賞を獲るべく小説も執筆。 東京は吉祥寺在住。 独身。婚歴なし、子供なし。猫がいる。

マガジン

  • 神の子、許されざり (小説)

    過去に書き上げ、某大型新人賞を受賞し損ねた、要するにボツ原稿。 あらすじ かつて暴力団に籍を置いていた武藤は更生し、六本木にある教会で神父を務めている。有能な構成員であった過去から、かつての上司である阿南は武藤を組織へ戻そうと執拗に誘うが、武藤にはその意思がなかった。 一方、大学院生である香村龍の許へ、米国在住の老女からメッセージが届く。老女はベトナムで戦死した父親の影を探しに来日するつもりだという。 来日を果たし、日本で落ち合った二人は歴史を辿るが、その過程で龍は何者かに命を狙われる。

  • 野良犬どもの六本木(まち)  (小説)

    江戸川乱歩賞落選作の一つ。たしか一次選考を通過した先、二次選考で落ちた記憶が。 —あらすじ— 六本木にある吹き溜まりでホームレス生活を送る北乃は昏い過去から逃げるように世捨て人として暮らしを送る。 そこへかつての仲間が訪ねてくるのだが、北乃にはすでに社会復帰する意思がなかった。 ある日、北乃たちの暮らすホームレス集落に母子が訪ねてくる。母は覚醒剤に溺れ、娘は未就学児だった。やがて母は暴力団に殺されてしまい、娘はその身を囚われてしまう。北乃は娘を救出するため、六本木の街を駆け巡る。

  • お馬鹿エッセイ

    著者が体験したお馬鹿なエピソードを描く。

最近の記事

野良犬どもの六本木(まち) (小説

               (一)    窓に網を貼った警察車両とパトカーが二台ずつ、六本木三丁目の吹き溜まりにゆっくりと進入してきた。サイレンは鳴らしていない。赤色灯が瞬いているだけだ。  早朝だった。辺りには外国人向けのBARやクラブが多い。吹き溜まりのあちこちで帰りそびれた若い酔っ払いがたむろし、また採り過ぎたアルコールを吐き出していた。  陽はまだ昇り切っていない。空気は青味がかっている。静かだった。警察車両のエンジン音だけが轟き、辺りに反響した。 「来たぞ。警察だ

    • 水死体運搬船タイタニック (エッセイ)

      海の男。 うーむ、憧れる。響きからしてカッコいい。その言葉から連想されるのはやはり船乗りだろうか。しかし一口に船といっても様々な物がある。客船もあれば貨物船もあり、巡視船もあればクルーザーだってあるわけだ。 その中でも最もタフでダンディズム溢れる存在が漁船であり、またそれを駆る漁師なのだと思う。荒れ狂う大海原へと船を出し、捩じり鉢巻きを頭に大物を次々と釣り上げ、船に掲揚した大漁旗を翻しつつ港へと戻ってくるのだ。カッコいい。やはりカッコいい。 ぼくは漁師ではなかったが、育った町

      • 神の子、許されざり (小説)

         1  衝立の向こうで扉の開く音がした。会話のため、無数の小さな穴を開けられているが、相手の姿は見て取れない。体臭が鼻を衝く。風呂に入っていないようだ。罪の告白か人生相談に訪れたこの相手は浮浪者か、それに近い人種だろうと武藤は見当をつけた。 「どうされました、今日は」  椅子に座り、静かに訊いた。衝立越しに、相手の落ち着かない気配が伝わってくる。体の微細な動きが止まらないらしい。薬物中毒者でもあるのだろうか。  発言を促すでもなく、武藤は待った。何かを語るために作りあげた心

        • 虫歯の苦しみを知らない者は (エッセイ)

          —虫歯の苦しみを知らない者は、人生の苦しみの半分も知らない— とは、誰の言葉だっただろうか。 古代ギリシアだがローマだかの哲学者が残したそれだった気がする。そうか、虫歯の苦しみというのはそれほどのものなのか、と長く虫歯の痛みを知らぬまま生きてきたぼくはえらく感嘆した覚えがある。 虫歯は痛い。本当に、深刻に痛い。ぼくがそれを身を持って知ったのは三十八歳の時であった。 お前は三十八年も虫歯にならなかったのか、といわれる。 そうなのだ。ぼくは三十八年もの長きに渡り虫歯になったことが

        野良犬どもの六本木(まち) (小説

        マガジン

        • 神の子、許されざり (小説)
          1本
        • 野良犬どもの六本木(まち)  (小説)
          1本
        • お馬鹿エッセイ
          4本

        記事

          ゲロ・トレイン (エッセイ)

          渋谷で知人と食事をした帰途のことである。 ぼくの自宅兼仕事場は吉祥寺の辺りにあり、渋谷からは京王井の頭線で帰るのだが、平日の午後七時という時間、電車は帰宅ラッシュを迎え、どの車両もとんでもない混み方をするものだ。 京王井の頭線渋谷駅のホームは二つあり、うち一方が急行列車のそれとなる。ぼくは発車時刻を待つ急行列車に乗り込むべくホームを歩き、何両編成かわからないが、なるべく空いている車両を選ぼうとしていた。 すると、他の車両に比べて明らかにスカスカな車両を発見、ぼくはこれ幸いとす

          ゲロ・トレイン (エッセイ)

          ダイエットへの覚醒 (エッセイ)

          自分が太るとは思ってもいなかった。 例えば小学生や中学生の頃、クラスには一人や二人のデブキャラ、簡単にいえば肥満児がいたものであり、男子であればデーブだのブッチャーだの、女子であれば森三中などとアダ名をつけられ、中学生ともなると性に興味が湧いてくる頃だから、男子の場合だと目を閉じた状態でそいつの胸とかを揉むとまるで女性の乳房を揉んでいるような錯覚を覚えるというのでありとあらゆる男子から胸を揉まれて不純異性交遊ならぬ不純同性交遊みたいになったり、夏になるとデブは全身から酢酸を思

          ダイエットへの覚醒 (エッセイ)