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「大乙嫁語り展」担当学芸員さんによるギャラリーツアーレポート②

こんにちは。
早速ですが続きを書いていきます。
前回は以下のリンクからどうぞ。

前回、第一章の内容(主に表紙イラスト)について触れました。なお学芸員さんのお話を文章として読みやすいように多少前後して書いております。ご了承ください。

 さて第二章、原稿を通して各乙嫁たちを取り上げる章ですが、その前に学芸員さんは「原画展だからわかること」について話をしてくれました。まずは原稿用紙の種類の変遷です。森薫先生曰く、インクの染み方などがそれぞれの原稿用紙で違うのだそう。だからその時その時で最適な原稿用紙を使っておられるんだとか。うひゃープロだー!The鈍感マンの私なんぞ違いにすら気づかないだろなと聞いてすぐは思いましたが、よく考えると万年筆やボールペンでものを書くときでも、滲みや裏抜けの有無なんかで紙にもインクにも結構差異が出ますよね。それこそプロとして、先生はしっかり原稿を観察してより良いものに仕上げようとされているわけで、そうした向上心や観察眼は見習うことはできるぞ!と、この文章書きながら思い直しました。才能も当然あるでしょうけど、そうした地道なところに手を抜かないのは改めて尊敬です。だからこそプロなんだなって。
 さて、続いて学芸員さんによる「今回の原画展での観察ポイント」は「比較」です。今回太っ腹にも「ネーム→原画→印刷された作品」がそれぞれ展示されています。なかでもネームから原画になったとき、より良い作品とするために表情や台詞が変更されていることがあるんです。そこを比較するのもこの原画展の楽しみの一つ。ちなみに原画から印刷になったときにベタの筆遣いが見えなくなるのも確認できてしまいました。しかたないけどもったいない。ここを比較すると原画展のありがたみが骨身に沁みます。悲しいかな記憶容量は少ないものの、必死に目に焼き付けましたよ。(ある登場人物たちはネームと原稿とで名前そのものが変わっていました!ネームだけにってやかましいわ。……前の名前もエキゾチックでかわいいけれど覚えやすく馴染みやすいのは確実に今の名前でしたね。)
 他に原画を見るにあたって必要な知識のお話もありました。原画には水色の鉛筆で書き込みがあります。(サムネイルの画像を参照されてください。)これらは印刷には写らないもので、森先生からアシスタントさんへの指示がメインで書かれます。森先生の場合ベタやトーンが指示内容の主なところ。とはいえ作画はほぼおひとりでなさっておられるそう。なんなら漫画の(絵画の)質の担保のためにトーンの繊細な削りが必要な個所は今でも先生ご自身でなさっているとのこと。逆にアシスタントさんは現在どこをアシストなさっているんだろう……???確定申告とか……???(渾身のボケ)
 ちなみに連載初期の原画を見返すと、先生は「今ならもっと描けるなぁ」と思われるんだとか。実際に連載初期ならトーンを使っていたであろう部分が、最新刊に近づくにつれ手描きに変化していたり……と描きこみのレベルがどんどん上がっていることが確認できちゃうのも原画展で注目すべきポイントです。次回以降で述べますが、ほんとに物凄いです。

 各乙嫁たちが軸となる第二章の展示。もちろん彼女たちのお話もありました。
◎アミルさん
 『乙嫁語り』といえばまず彼女の顔が浮かぶ方が大半でしょう。そもそも「乙嫁」とは年下、年若の、美しい、かわいいといった意味の古語「乙」と「嫁」を合体させた造語なんだとか。そしてアミルさんは作中に登場する様々な乙嫁たちの魅力を集めた最強キャラでもあります。
 また、アミルさんが出ている場面の背景についても解説がありました。カルルクくんと一緒の時は白を基調とした明るい背景で、シリアスな場面(戦など)は暗い背景になるような使い分けが意識されているそうです。たしかにそうかも。そもそも暴力シーンというものは「劇薬」なのでその扱いには注意されているとのこと。穏やかな日常だけではなく、厳しい自然や迫りくる大国との戦の気配をうやむやにしないところがこの作品の魅力ですものね……。
◎タラスさん
 言葉の少ない彼女。表情の変化が肝となってきます。ぜひそちらをネームと比較しながら原画で見てもらえれば。とのことでした。
 ちなみに、スミスさんとブランコをする場面が展示されていたんです。そのネームでブランコ終わりのタラスさんの笑顔に「ウケてる」って書き込みがあるのを見つけたんです。タラスさん……ウケてたんだ……うふふ。ひと時でも緊張の糸が緩んでよかったなぁなんて思いました。辛いことがたくさんあった彼女だし、幸せになってほしいです。そうは言っても英国に向かう彼女には艱難辛苦がほぼ確実に襲い掛かってくるんだろうなあ……。特に当時のイギリス人なんて大半がいわゆる「ブリカス」でしょうから……ねぇ……。(スミス~!頼むぞ~!!)
◎ライラとレイリ
 何となく彼女たちには「さん」をつけにくいんですが、なぜでしょうか。今回のギャラリーツアーでの彼女たちへの言及は聞き逃してしまいました。メモに夢中になりすぎました……。
 当然のことながら原画はたくさん展示されています。元気でよろしい!

 さて、アニスさんにも今回で触れようかと思いましたが、彼女の話には先生の使用されるペン先の話などが関わってくるため、そうするとかなりの長文になってしまいますので今回はここで区切らせてもらいます。メモの文字起こしも急いでいますのでよかったら気長に続きをお待ちいただければ幸いです。
それでは。

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