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好きな漫画を書き連ねる(その3)

 思いつくがままに好きな漫画とその紹介をしていきます。紹介したい漫画はたくさんあれどもどれから書けばいいのか迷ってなかなか書けません。

『シャドーハウス』(ソウマトウ)
 不穏な日常系ファンタジーほっこり主従漫画だ〜と思って、のほほんと読んでいたら、いつの間にかバディもの且つ能力バトル系館ゴシックミステリになっていた、何を言っているかわからな(以下略)です。嘘じゃないです。
 アニメ化も二期までされていますので、そちらでご覧になっている方もおいでだと思います。主題歌「ないない」の歌詞から何から非常に素晴らしいアニメでした。(多忙につき二期は未視聴ですが……。)
 話の立ち上がりは非常にゆっくりとしています。顔の見えない「シャドー」と呼ばれる貴族の令嬢ケイトとその従者である「生き人形」のエミリコの2人の日常が1巻丸々を使ってじっくりと描かれます。舞台もほぼ彼女らの私室のみで展開されます。気の早い人は物語に動きがないと見切りをつけてしまうかもしれません。が、日常系にあるまじきじっとりとした緊張感、不穏さはこのときからすでにありました。そして10巻を読んでから改めてこの1巻を読むと「ああ、この冗長にも見える1巻の物語は必要なものだったんだな」と思い知らされます。ゾクゾクしますよ。
 徐々に明かされる館のルール、すす能力、お披露目という通過儀礼、渦巻く権謀術数、「館」そのもののみならず、それぞれの登場人物の抱えている過去、そもそも「シャドー」とは何者で「生き人形」とはいったい何なのか。そのへんはぜひご自身の目で確かめていただきたい。

 基本的にメインの登場人物たちは「シャドー」と「生き人形」の一対で動きますので、バディものが好きな方は情報の洪水に溺れてしまうかもしれません。最新刊16巻の時点で25ペア以上いますので、きっとあなたの推しになるペアが見つかりますよ!個人的に推しているのはバーバラ様とバービーのペアです。まずたっぷりとしたふわふわのロングヘアに髪飾りが散りばめられていて乙女乙女しているキャラクターデザインがかわいいんです。(ピノコもそうですが、装飾過多な女の子ってかわいいですよね。)それなのに粗暴で口調が酷く荒いんです。ギャップが物凄い。そんなわけで第一印象はよくないでしょうけれど、読み進めていって下さい。応援したくなるはずです。幸せになってもらいたいペアです。
 うーん、ネタバレを極力せずにこの物語の魅力を紹介しようとするのは、ライオンの好物をシーザーサラダにするくらいな難易度なので、私に語れることはキャラクターデザインくらいなものになってしまいます。キャラデザだけならアイリーン様もかわいいですね。彼女の特徴である鳥をイメージした独創的なドレスでとってもおしゃれなんです。なかなかいい性格してるお姉さんですけどね。あ、そうそう、「顔」という一番の個性が見えないので、(だからこそ「生き人形」を顔として従えるのですが)それを補うかのようにひとりひとりの衣装が非常に凝っています!!みんなの着ているドレスやジャケットを眺めるだけでも楽しいものです。そもそも登場人物たちもひとりひとりが非常に個性豊かで、絶対誰かひとり(あるいは一対)は推せる人物ができること間違いなしですよ。
 目下エドワードというド派手ジャケットピアニストが物語の中ボスですがあれはあれでおもしれー男です。とはいえ、いろいろあってバーバラ様を精神的に追い詰めたので、奴は許さない。
 これから先、ケイトとエミリコのペアがどのように困難を突破していくのか、楽しみでなりません。主人公にふさわしい気高さと胆力を持つケイトと常に前向きで健気なエミリコのふたりが少しずつ仲間を集めながら大きな敵に立ち向かうさまが読んでいて非常に楽しく、スリルのある物語です。話の規模が「館」にとどまることなく大きくなってゆき、どうやってこの物語を終わらせるのか。言い換えるなら決着をつけるのか。楽しみです。

 私は単行本派なのですが、どの感も装丁が非常に凝っていて素敵です。カバーをめくると心憎い演出もあります。それからつくづくこの作品を手に取ると、シンプルに現代の印刷技術って進歩しているんだなぁと気づきます。だって、登場人物の半数以上の顔が「シャドー」ですから、ベタで塗りつぶされているんですよ。でも、(商品としては当然のことでしょうけれど)綺麗に印刷されているんです。こすっても手に「こびりつき」がつくなんてことが無いんですよ。いまの印刷ってこんなに黒が多くても大丈夫なんですね。仮に昔の職場の輪転機で同じくらいの黒を使ったらもう大変なことになるでしょうね。機械は止まるわ紙同士はくっつくわ手は真っ黒に染まるわ……。技術の進歩によって生まれた漫画であることは間違いないと思います。
 読んで後悔することはないでしょう。ぜひ、あなたもどこか不穏な貴族の館「シャドーハウス」を覗いてみてください。

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