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好きな漫画を書き連ねる(その2)

 思いつくがままに好きな漫画とその紹介をしていきます。紹介したい漫画はたくさんあれどもどれから書けばいいのか迷ってなかなか書けません。今回は最近新刊が出て、アニメ化も決まったと聞いたのでこちらの作品を。

『来世は他人がいい』(小西明日翔)
 どんなタイトルやねん、と思ったのがきっかけでした。読み進めると割とすぐに「でしょうね。」と言いたくなりました。ちなみに初見はPixivで、細かい設定などを漫画やイラストで表現されたもの(?)でした。これが漫画になったら面白いだろうな〜読みたいな~とぼんやり思ってしばらくたって、ある日書店で見かけたときは思わず二度見しました。
 主人公の染井吉乃は高校生。こんな高校生いてたまるかと言いたいくらい「大人っぽい」美貌の持ち主です。嫌味なくらい高級ブランドのドレスが似合う。我々がデパートで「ちょっとしたパーティー」という非実在宴席に着ていく為に店員さんに勧められ、やや困惑するような素敵なお召し物を普段着のように着こなす未成年です。大阪で彼女についたあだ名は梅田のホステスあるいはチーママ。もう一度いいますが未成年です。
 私は彼女を究極の「おもしれー女」だと考えています。今さらですがこの作品の登場人物はほぼ皆さん反社会的勢力に与している方々です。吉乃はいわゆる「組長の孫娘」。ぱっと見ただけなら彼女は普通の気さくな女子高生。かつ常識人にみえます。が、ここぞというときに一般人とは真逆な発想、発言、行動が飛び出します。
 想像してみてください。出会ったばかりで人柄もまだ把握できていない、やけに親切な婚約者候補(彼もまた「組長の孫」)に突然「お前退屈だ。お前の価値はその顔と体だろ?売ってこい。嫌なら実家に帰れ。(要約)」と爽やかな笑顔で言われたら。怖すぎ。ちびる。一般人なら迷わずその足で実家に帰るか交番を探します。
 しかし吉乃は違います。2週間姿を消したと思ったら札束たっぷりの紙袋持って現れます。腎臓売ってきました。「テメー体売れっつったろ?だからツテ頼って腎臓売ったったわ(要約)」とのたまいます。どこに体(婉曲)を売ってこいに対して本当に身体(内臓)を売ってくる奴がいますか。痺れました。なんだコイツ。「おもしれー女」以外の何者でもないわ。こんな未成年いてたまるか。そんな発想はいやだ。
 彼女の魅力は、普段は気の良い常識人なのに、ここぞというとき(例えば自身の尊厳に関わるような)の芸術的なまでのネジの吹っ飛びっぷりです。大気圏を軽々と越えてゆきます。いつもの常識人な吉乃は読者が共感できる普通の女子高生です。周囲のイカれた人間に振り回される彼女に共感し、応援したくなります。だからこそギャップが映えます。ちなみに先述の展開は1巻の前半です。なんなら1話と2話ですよ。もちろんこれ以降も吉乃の言動は(原則は常識人ながら)キレッキレです。ぜひ実際お手にとって体験してもらえたら。
 なお、男性のメイン登場人物たちについてはきっと他の方々が言葉を尽くして魅力を語っておられるでしょうから私からは特に。とりあえず深山霧島(本名。もちろんフルネーム)についてはどんな名前やねん、と思ったのがまずひとつです。あと全く個人的なことですが、九重遠足で俳句か短歌を作る課題が出て、7音で便利だからか廊下に貼り出された作品群にミヤマキリシマを読み込んだものがやたらめったらあったのをこの作品読むたびに毎回思い出します。全く本編に関係ないですね。ちなみにメインの登場人物の名前は皆植物モチーフで統一されています。素敵にお洒落だなと思います。
 あ、唯一ちゃんと触れておきたいのは稲森さんですね。彼は吉乃の東京の居候先(反社会的勢力)に所属し、住み込みで料理や雑務をこなす好青年です。おからが余ったからとおからクッキー作ったり、からし蓮根作ったり(熊本出身かしら)と料理の腕は確か。いつも優しそうな笑顔で吉乃にも親切です。稲森さんが出ていると絵面が柔らかくなるな~と思っていましたが、よくよく考えると彼が一番怖いのではないでしょうか。他の吉乃の東京のお家の皆さんはちゃんと見た目が怖い。霧島もなんだかんだ怖い。でも稲森さんは優しそうで、まさかそういうタイプの方(婉曲)には見えないんですよ。駅で階段を登るおばあちゃんの大荷物を積極的に持ってくれそうなんです。見た目。でも、そういう方なわけなんですよ。アレですよね、不良は身内には優しいっていうのを極限まで突き詰めるとこうなるんでしょうね。吉乃から見えている稲森さんと外部から見えている稲森さんは全然違って見えるんだろうな……と思えば思うほど作中の彼の穏やかさが恐ろしいです。
よかったらぜひ、ご一読を。

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