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「大乙嫁語り展」担当学芸員さんによるギャラリーツアーレポート①

『乙嫁語り』
言わずと知れた森薫先生の名作漫画です。『エマ』や『シャーリー』などで英国メイドの世界を描かれる先生ですが、こちらの作品も見逃せません。中央アジアを舞台として「乙嫁」たちを中心とした人々の厳しくも温かい暮らしが描かれている傑作です。メイドもいないし英国が舞台じゃないならいいかなぁくらいの感覚で読まずに済ませている方、もしおられましたらもったいないですよ!!ついでだから読んでみてくださいな!「良い」から!すごく「良い」から!!さぁ!書店へ……すいません落ち着きます。

 今回、北九州市漫画ミュージアムにて開催された「大乙嫁語り展」。チラシの裏にひっそりと「担当学芸員によるギャラリーツアー」が開催され、しかも参加費無料(!?)である旨が掲載されていました。定員オーバーを恐れながらも苦手な電話をかけ、緊張した結果「おおおとよめがたりてん」と発音するポカはやらかしたものの、無事に参加できました。電話対応してくださった職員さん、その節は笑わずに丁寧に応対してくれてありがとうございました。

 さて、これから本題の「学芸員さんによるギャラリーツアー」のレポートをしていくわけですが、これで無料で本当にいいの???と思うくらい内容がぎっしりでしたので何度かに分けて書いていこうと思います。(まだメモの文字起こしも終わっていません……怠惰なだけですけれど……)私の拙い感想を交えながらですが、よろしかったらお付き合いください。

 企画展入口集合でしたが点呼までは自由に見学OKとのことですぐ集合できるように第一章を中心に鑑賞。美しい。ほんと美しい。あと森先生のコメントがほぼ全ての表紙イラストに付されている。先生……ありがとうございます……。と拝礼する勢いでうっとりしていたら点呼でお土産(北九州市漫画ミュージアム関連資料)もいただきました。
 そうこうしているうちに学芸員さん登場。他の見学者さんの邪魔にならないように放牧中の羊のようについてゆく私たち。後ろの方の妨げにならぬようできる限り普段やらないスクワットの姿勢でメモを取りながらお話をうかがいました。翌日筋肉痛でしたが悔いはない。
 そもそも北九州市漫画ミュージアムでは毎年この時期に「北九州国際漫画祭」と銘打った企画展が実施されています。例年は海外の漫画家さんとのコラボをすることが多いそうですが、今回は「漫画から見る国際文化」というテーマでこの展覧会が実施されたとのことでした。素敵です。
 今回のギャラリーツアーでは原画展を見る楽しさ、そして学芸員さんが森先生と一緒に(!)展示を見て回ったときに聞かれたお話を中心に解説をしてくださるとのこと。期待が高まる。
 KADOKAWAの企画ということもあって展示のなかで森薫先生のコメントが非常に豊富なのが、まずこの展覧会の見どころ。ほんっとに豊富でした。こんなにあるならコメントをまとめた図録や小冊子があるだろうと勘違いしたくらいにはありました。なかったです。ただし、撮影が許可されているので、私はスマホで必死に撮影し続けました。(もちろん事前に予習で見学に来た際にです。ギャラリーツアー中はメモを取るのに必死。予習しておいてよかった……。)

 「大乙嫁語り展」第一章は表紙イラストです。
 先生が使用される画材はアクリルガッシュ。これがまず特徴的だそう。というのも、アクリルとつく画材と聞けばアクリル絵の具を連想する方も多いでしょうが、性質が大きく異なるそうです。アクリル絵の具の発色は水彩に近く透明性が高くなります。一方でアクリルガッシュはベタっとマットな質感の絵の具で透明性も低いのが特徴です。この特徴が活かされるのが衣装!!そう!あの精巧に描かれた衣装です!!透明性が低くマットなぶん、刺繍や装束の重厚さとの相性が良いわけです。とりわけ単行本三巻のタラスさんの婚礼装束は圧巻。水彩の絵の具ではこのような重厚感や刺繍の質感は描けません。立体的かつリアルに見せるために何度も重ね塗りをしてあの重厚感と刺繍の手に取れそうな質感を描き出されているとのことでした。(ちなみに森先生のコメントにも塗りのお話がありました。)
 画用紙も背景用と人物用で種類を使い分けておられるそう。残念ながら具体的な紙の種類は聞き逃してしまいましたが、人物用の画用紙はどこかで見たような気がしますが全くの門外漢なので、見当違いなことを言っている気がします。(「こうペンちゃん」の作者るるてあさんもアクリルガッシュを使われているとご著書に書いてあったのを思い出し、芋づる式に思い出したるるてあさんの使用されている紙(「中目」の水彩紙)に似ている気が……したんです……。)
 第一章はここまで。各巻の人物画と背景の原画は眼福そのもの。人物画は言うまでもありませんが、背景ですよ奥さん!背景!!節穴レベルの目しか持っていない私はこれまでちらっと「中央アジアの風景なんだなあ」程度の軽い熱量でしか見ていませんでした。しかし原画を拝見したら!!明らかに人物画で隠れるところまでしっかり描きこまれていました。七巻なんか特に!ほんとにその!描き込みがっ!
 どの巻の背景もそれ単体で十分絵画作品として成り立っていました。流石にこの職人ぶりにはちょっと引いてしまいそうでした。思わず背景画のポストカードは全種買いました。しみじみと鑑賞しています。個人的に十三巻の背景ポストカードがお気に入りです。坊やに抱っこされて不服そうにしている猫。幸福な日常の穏やかな景色。胸がいっぱいになります。

 さて、あんまり長いのもナンですので今回はいったんここで切り上げます。もう少し文字起こしできているところはありますが、区切りもいいので。
 今年四月に姫路で再び『大乙嫁語り展』開催されるそうなのでそれまでには書き上げる所存です。よろしければぜひ続きもご覧ください。
それでは。

追記
続きを書きました。
よかったらこちらもご覧ください。


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