見出し画像

粋だね〜♪ってお思いかい? 北斎展に観る粋

画像は、北斎と娘 お栄(応為)の日常である。
北斎は、常に こんな状態で描いていた。
引越し93回 汚くなったら引っ越しするという描くこと以外は無精者で、娘 お栄が身の周りを綺麗にしてやっていた。
北斎の後ろ 小さな山は布団の中に火鉢である。

♪  九州国立博物館のみでの展示とする。
 それ以外での貸出 及び 展示は禁止とする。
 これが、寄贈の条件である。

寄贈 肉筆画200点の一部。このようなカレンダー状に絵を描いている。

過去の投稿にもあるが、浮世絵の殆どは 残念なことに海外の美術館・博物館及び個人が所有しているのが現状である。

国内の人物が描いたものが、海外にあることに若い頃から言い表せぬ思いがあった。
そんな時に、九州国立博物館で行われる北斎展のエキジビジョン的講習があり、上記の言葉が知らされた。

200点以上を個人が寄贈時に残した言葉だと。
存在さえ定かでなかったものが一気に世に放たれ、同時に同博物館初の浮世絵所蔵となったが、条件に息を呑むと共に気持ちが よく伝わってきた。

浮世絵と江戸時代の庶民の生活をより深く学ぶきっかけをくれたのが、江戸時代を生活してきたかの如く漫画を描いていた亡き漫画家 杉浦日向子さんである。

「百日紅」「百物語」にあるように、江戸時代の浮世絵師の中で どうも杉浦さんは葛飾北斎が特にお好みであったように思う。
漫画の中に、北斎に対して尊敬と愛情が感じられる。

北斎をはじめ 浮世絵の展示を見る前に、上記の漫画をお読み頂くと 江戸の庶民の生活と浮世絵との密接な関係が学べます。
コレらの漫画の中に、今回の北斎展の浮世絵も数点含まれます。
また、画題に選ばれたキッカケも 庶民の生活の中にあることを知ります。

今回、寄贈の200点以上は ほぼ 期間中 観ることができるのだが、国宝級が1点あり これのみ前半のみ展示で 後半はバックヤードへ。
そう・・・寄贈者は、九州国立博物館でのみ展示を許したわけで、

コレを見逃すと、今後いつ目にできるかわからないのである。
頻繁に展示会はない。

浮世絵をはじめとする絵画は、専門家により保存状態維持の為に様々な厳しい公開制限を持っている。
展示期間も その一つである。

私は昨日 観にいき 改めて驚いたのが、全て北斎自身の肉筆=手書きである。
七〇歳を超えた人物が描いたとは思えない。
今回 有難いことに この寄贈されたものは写真撮影が許されている。
次回の展示は いつになるかわからないのなら、写真に収めておくことをお薦めする。
誕生日や記念日の絵を撮るのもオススメ♪

有難いことにゴールデンウィークで 九州は福岡へおいでの方も多いだろう。
是非 足を運んでいただき ご覧頂きたい。
他県では観る事ができない名品をご鑑賞ください。

本日の投稿の〆に面白い話を。
今回の寄贈品の背景に娘 お栄と父 北斎の面白い話がある。
この200点以上・・・実は、北斎は描いては捨てていたものを お栄が拾い集めて浮世絵の勉強に使っていたらしいと。

杉浦日向子さんの漫画に面白いものがある。
有名な庄屋からお栄は地獄絵を任され大喜びで描き納める。
しかし、ある日の晩 北斎は庄屋から呼び出される。
夜な夜な地獄絵から魑魅魍魎が飛び出し、家中を歩き回ると。
庄屋の奥様は怖がり寝ついてしまったと。
北斎は、お栄を連れて庄屋の家へ。
絵を観るなり お栄に放った言葉が親子=師匠と弟子=#アトツギの関係が見えてくる。

北斎曰く
お前の描く絵は、やはり始末が悪い。
地獄絵を描いて そのまま放るやつがあるか!!
よく見ておけ!!地獄絵は こうやって描き終える。
覚えておけ!!

北斎は、南無阿弥陀仏・・・南無阿弥陀仏・・・と唱えながら筆を走らせる。

お栄の描いた地獄絵の隅に・・・手を合わせる仏様。
そして、仏様へ 許しをこう地獄へ落ちた人々の穏やかな姿である。

娘 お栄を絵師として育てつつ、またお栄も父 北斎を思い必死に描く浮世絵から学ぼうとする姿がうかがえます。

このお栄が描いた地獄絵の仏様以来、様々な絵師が残した浮世絵の地獄絵を目にすると必ず私は、仏様の位置を確認します。
どの方も必ず 仏様の絵をどこかしらに描き 絵をしめくくってます。
昔から、地獄絵を描いたら仏様を描いておかないと絵の中の鬼などが絵から出る=絵を持っている者に災いが起こるため仏様を描いて封印すると伝えられています。

歌舞伎舞台でも、お岩さんをはじめとする幽霊を演じる役者さんは必ず、お岩さんのお墓へ挨拶=お参りし舞台に立ちます。
何かをするのに、やりっぱなしにしない。
どんなことも、繋がりあってのことだと日本の伝統の各所に感じます。

今回の寄贈者の方の寄贈への思い。
九州への思い、愛情・・・日頃の感謝を感じ入る展示会でした。
素晴らしい作品が一同に並んでいます。
是非 ご覧ください。

日本の粋、九州の粋を感じてください♪