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株式会社FINOR わたしたちは、映画業界、そして幅広いカルチャー・エンターテインメントの分野で新しい定義を作っていく集団を目指します。 宣伝プロデュース 映画・ドラマ・動画配信コンテンツのパブリシティ イベント企画・運営・実施 SNSアカウント・SNS広告運用

最近の記事

映画『ちひろさん』:食べること、癒やすこと

私事ながら、先日、1週間程入院した。 これといった刺激もなく繰り返す日々。その中で唯一、確実にやってくる楽しみがあった。 3度のご飯だ。 8時、12時、18時。ほとんど決まった時間に運ばれてくるそれは、満腹にならない程度の量しかないし、味付けもなんだか素っ気ない感じがするし、内容に不満が無い訳ではなかった。 でも、嬉しかった。 次のメニューはなんだろう、もうすぐご飯の時間だと、毎回ワクワクしながら待ち、限られた量を大事にしようと、一口一口、丁寧に噛み締めて味わった。心からの「

    • 映画『エゴイスト』:いつかの未来に繋がる層として

      (以下には、作品の内容に関する記載が含まれます。鑑賞がまだの方はご注意下さい。) 人の生き様は層のように積み重なる。 嬉しかったことも悲しかったことも、忘れたくないことも忘れたいことも、全ては重なり、連なり、その人の人生をなしていく。今目に見えることの裏側にも、いつかのどこかの時が刻まれた層があり、それは確かに今へと繋がっている。 まるで、数多の線が引かれ、幾重にも塗り重ねられた絵画のように。 映画『エゴイスト』(23、松永大司監督)は、主人公の斉藤浩輔(鈴木亮平)が、パ

      • 映画『恋のいばら』:覗き見をシェアする楽しみ

        (以下には、作品の内容に関する記載が含まれます。鑑賞がまだの方はご注意下さい。) 「SNS」、「特定」、「リベンジポルノ」、「同性愛」・・・と、今風なキーワードが並ぶこの作品。 でも、そういう要素はあくまで飾りで、二人の女の子がコソコソなんかやってる様子を覗き見るような感覚が、この作品の面白さだと思う。 ハラハラ、ドキドキ、ヒヤヒヤしながら、なんだか自分も一緒にいばらの道を歩んでいるような気になっていく。 そんな、刺激的で、魅力的で、変則的な恋愛エンターテイメントだ。 図

        • 映画『そばかす』:大人になる彼女に背中を押されて

          子どもの頃、どんな習い事をしていただろうか? ピアノ、バレエ、野球、サッカー、絵・・・? 映画『そばかす』の主人公・蘇畑佳純(三浦透子)の場合は、チェロだ。 しかも、プロを目指して自宅に防音室まで作ってしまうのだから、相当な入れ込み様だ。 そうした設備に加え、楽器やレッスンの費用、送迎など、家族は金銭的にも時間的にも相当なサポートをしたことだろう。 特別裕福でもない平凡な家庭に見える蘇畑家。 やりくりが大変だったんじゃないだろうか?・・・と、勝手な想像をせずにはいられない。

        映画『ちひろさん』:食べること、癒やすこと

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          映画『よだかの片想い』:理系人の悲喜

          私は、アイコを愛さずにはいられない。 もどかしく感じずにもいられない。 近しい境遇から、痛切なシンパシーを覚える者として。 映画『よだかの片想い』は、工学系の大学院生であるアイコが、生まれつき顔にあるアザについての本を出版したことをきっかけに、映画監督の飛坂と出会い、恋に落ち、そして失恋する物語だ。 子どもの頃にからかわれたことでアイコの人生をネガティブな方向に変える契機となったアザが、飛坂という1人の男性との出会いを通して人生をポジティブな方向に変えていく。 そして、飛

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          映画『神は見返りを求める』:見てしまう良質な不快感

          不快な映画だ。 しかし、見なければ良かった、とはならない。 映画『神は見返りを求める』は、𠮷田恵輔監督の妙技と、躍動するムロツヨシ・岸井ゆきのの個性が生む良質な不快感に、気持ち良いぐらいモヤっとするエンターテインメントである。 ムロツヨシ演じる田母神は、偶然の出会いから、売れないユーチューバーゆりちゃんの動画作りを手伝うことになる。 前半では二人が動画作りを通して距離を縮めていく微笑ましい様子が、軽いラブコメとして描かれていく。 しかし、ゆりちゃんが一気に人気ユーチューバー

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          映画『わたし達はおとな』:二人の恋と朝ご飯

          映画『わたし達はおとな』(加藤拓也監督)は、大学生の優実(木竜麻生)と直哉(藤原季節)のほんの一時の恋を生々しく描いた映画だ。 その生々しさは、見る側の個人的な感覚や記憶を刺激する。 作品は、時間軸上を行き来して、今と過去のシーンが交錯するように描かれる。 異なる瞬間の場面が繋ぎ合わされたパッチワークのように。 そのそれぞれの場面には、幸せな笑顔もあれば、辛い喧嘩もある。 一つ一つを見れば、なんてことはない、どこにでもありそうな恋愛のワンシーンだ。 でも、だからこそ、見る人

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