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食品安全委員会の20年を振り返る#2 「薬剤耐性(AMR)のリスク評価に挑む」 概要

食品安全委員会の20年を振り返る#2 「薬剤耐性(AMR)のリスク評価に挑む」 概要(本文1,254文字)
  
1. はじめに
食品安全委員会設立20周年記念企画の一環として、食品安全委員会委員の松永和紀氏は2023年(令和5年)6月21日付けにて、薬剤耐性(Antimicrobial Resistance、AMR)を解説しています。本資料は、この松永氏の解説をもとに筆者が作成したものです。松永氏の原著解説は一次情報からご確認ください。
 
2. 松永氏による主張(原文のまま)
■抗菌性物質(抗生物質や合成抗菌性物質)の不適切な使用により「薬剤耐性菌」が世界中で確認され、ヒトの治療が困難になるケースが増えている。
■畜産においても抗菌性物質が動物用医薬品や飼料添加物として用いられ、家畜から薬剤耐性菌が検出される。
■食品安全委員会は、肉などを食べることによって薬剤耐性菌がヒトに伝播した場合のリスクを推定、評価している。
■食品安全委員会のリスク評価や農林水産省などのリスク管理措置を受け、生産者は抗菌性物質の適正使用に取り組んでいる。
 
3. 薬剤耐性菌の拡大
近年、抗菌性物質の不適切使用により、ヒトの治療が困難になるケースが増えています。畜産においても抗菌性物質が使用され、家畜から薬剤耐性菌が検出されることがあります。食品安全委員会は、肉などを食べることによって薬剤耐性菌がヒトへ伝播した場合のリスクを推定、評価しています。
 
4.薬剤耐性菌とは
細菌は、抗菌性物質が繰り返し使用されることにより、耐性を獲得することがあります。これが薬剤耐性菌です。薬剤耐性菌が増えると、従来の抗菌薬が効かなくなります。
 
5. 畜産における抗菌性物質の使用
抗菌性物質は、動物用医薬品として家畜の感染症治療に使用されます。また、飼料添加物として、家畜の成長促進や飼料の栄養成分の有効利用を促すためにも使用されます。
 
6. 食品安全委員会のリスク評価
食品安全委員会は、抗菌性物質が動物用医薬品や飼料添加物として使用された場合に、ヒトに対して危害を与える可能性のある薬剤耐性菌の種類を特定します。そして、発生評価、ばく露評価、影響評価を行い、それらを合わせて、その薬剤耐性菌のもたらすリスクを推定します。
 
7. 農林水産省の対策
農林水産省は、食品安全委員会のリスク評価に基づき、動物用医薬品や飼料添加物の使用規制や、生産者への指導などを強化しています。
 
8. 具体的な評価例
■フルオロキノロン系抗菌性物質: 鶏の下痢治療に使用される抗菌性物質のリスク評価では、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌の3つの菌について、総合的な評価結果は「中等度」となりました。
■硫酸コリスチン: 牛や豚の細菌性下痢症の治療に使用される抗菌性物質のリスク評価では、大腸菌について、総合的な評価結果は「中等度」となりました。
 
9. 今後の取り組み
食品安全委員会は、今後も抗菌性物質のリスク評価を継続し、農林水産省と連携して対策を推進していきます。また、国際機関と協力して、世界的な取り組みにも貢献していきます。
 
10. まとめ
薬剤耐性菌対策は、ヒト、動物、環境の健康を守るために重要な課題です。食品安全委員会のリスク評価と農林水産省の対策は、この課題解決に向けて重要な役割を果たしています。
 

 
<一次情報>
「食品安全委員会の20年を振り返る」
第2回 薬剤耐性(AMR)のリスク評価に挑む
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/02_amr.html
 
 
<関連情報>
第1回 トランス脂肪酸〜リスク評価の意味を知ってほしい〜
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/01_toransushibosan.html
第3回 カンピロバクターとの長い闘い
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/03_campylobacter.html
第4回 「健康食品」は安全とは限らない〜委員長らが異例の呼びかけ
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/04_kenkosyokuhin.html
第5回 アクリルアミドともやし炒め〜リスク評価のその後は?
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/05_akuriruamido.html
第6回 BSE問題前編〜20年前、食品安全委員会設立のきっかけに
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/06_prion_vol1.html
第7回 BSE問題後編〜プリオン病情報を収集し、リスクに備える
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/07_prion_vol2.html
第8回 無機ヒ素の健康影響は?
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/08_mukihiso.html

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