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vol.3 タケゾウ先生のボロ戸建て不動産投資講義

タケゾウ 聖丁倶楽部
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※試聴版。オリジナル版(49:25)は購入後に視聴可能。

第三話(全六話)
DIY大家ーーこの単語を見て、頭に浮かぶ顔が何人もいる人は、予習がだいぶ進んでいる人であるが、そうではない人に向けて、説明していこうと思う。DIY大家というのは、古くは軍神・加藤ひろゆき総統がその処女作『ボロ物件でも高利回り 激安アパート経営』(ダイヤモンド社2007年)にて開陳した手法を源流にしていると思われる。加藤さんはリフォーム業者に依頼するのではなく、自らの手で塗装をして、クロスを張り替えて物件を再生して、貸家とした。今では半ば常識になってきているこのDIYーーDo It Youself の精神は、当時としては衝撃的な手法であった。工事を素人がやっていいものなのか、もしくは、工事なんて自分でやりたくないよ、という精神面での障壁、マインドブロックを加藤さんは打破したのだ。また「鬼のような指値(特許出願予定)」を入れていくことで驚異的な利回りを実現することができることもまた、センセーショナルな内容であった。その先進性も、およそ10年が経った頃には広く全国に浸透し、DIY大家というジャンルが確立されてきた。今回の講師であるタケゾウさんも、聖丁もまた、その加藤さんの系譜の中にいる。

こうして確立されたボロ戸建とDIY大家の組み合わせだが、実はその中にもいくつかの流派があることにお気づきだろうか。一口に「DIY大家」と総称しても、その中にはDIYの濃度というべきか、グラデーションが存在する。DIY濃度が薄い、というDIY大家とは「掃除して貸す」勢である。物件は、当然古いから汚れているし、残置物も多い。そのままでは貸家にできないから、まずは掃除をして、残置物を撤去するのだが、ここで終わらせて営業周りをするのがこのDIY大家の中で「掃除勢」とでも呼ぶべき勢力である。しかし誤解なきように補足すると、この勢力は決して怠惰であるとか、大雑把であるとか、そういうことではない。これから紹介する「リフォーム」をしてしまっては商売にならないと考えているから、その最適解として「掃除だけして貸す」を徹底しているのだ。築古の物件は、残念ながら家賃を高く設定できない。また仮に、内装を綺麗にリフォームしたとしても、家賃が上がりそうもない立地であるとか、駐車場がないとか、収益の計算的にお金をかけられない物件が存在する。そういった物件は必然的に、生活保護受給者や、行く宛のない高齢者向けの物件となっていくため、求められるのは綺麗さや便利さではなく、まず第一に「安い」ことが絶対的条件となるのだ。「掃除勢」はこのことをよくわかっているから、いかに安く物件を取得して、いかにお金をかけずに最低限の再生をして、入居者に提供できるかの戦いをしている。

これに対して、今回のメインゲストであるタケゾウ師匠や聖丁の属する「ガチDIYヤー」勢は専門業者に近しいレベルでのリフォームを実施する勢力である。先に述べた「掃除勢」との違いは、リフォームによって物件の価値を向上し、家賃帯を底上げすることにある。掃除のみのボロボロのままでは3万円台の家賃であるところを、しっかりリフォームすることにより6万円が許されるクオリティに押し上げる。つまりは入居者のターゲットを、最低限の生活保護受給者ではなく、シングルマザーであるとか、ファミリーで長期入居してくれそうな層へ切り替えるのだ。この切り替えにあたっては、当然、努力と工夫が必要で、それこそがDIYによるセルフリフォームなのである。

ボロ戸建というのは、昭和期に建てられたものが多いため、建材が古いーーというか、あらゆるものが古い(当たり前なのだが)。具体的には、壁が砂壁でできていたり、床に断熱材がなかったり、トイレが和式だったりする。これらが障壁となって、家賃6万円台を許容する層の選択肢に入らないのだ。これをセルフリフォームにより、打破していくことがガチDIYヤー勢の戦いだ。しかしながら、予算にも当然、限りがある。家賃6万円ということから逆算をすると、取得とリフォーム代金の総額を300万円ほどに収めたい。この場合、表面利回りは24%となる。4〜5年で回収ができる、優れた数字となる。さらにもし、これを投資物件としてオーナーチェンジということで入居者がついた状態で利回り8%で割り戻すならば900万円で売却できる可能性もある。仕入れの3倍での売却も夢ではないのだ。この付加価値の上昇は、セルフリフォームと、それによる家賃アップと、客付という難しいことの対価である。

DIYの具体的なテクニック、内容に関してはこの次のシリーズである「DIY編」に詳細を譲るが、ガチDIYヤーのノウハウのミソはここにあることを、理解していただけたかと思う。さらに言うならば、この手法は不動産業界と、それに付随する業界が持つ「歪み」をうまく突いた商売であるということだ。まず、本来であればリフォームを、工務店に依頼する。そして窓口となった工務店は、下請け業者に指令を出し、見積もりを作らせるのだが当然マージンを抜く。下請け業者も、材料費はもちろん自分達の利益を乗せた上で見積もりを作るから当然、マージンは乗る。こうして出来上がってきた工務店からの見積書に対しては、従来の地主系大家は「そんなもんか」で支払っていた。リフォーム業者に食い物にされた結果として、物件の利回りは低下していくのだが、ガチDIYヤーであればこの材料費との差額の部分、全てを自分の利益にできる。これがガチDIYヤーの強みだ。そうして完成した物件は、そのコストに比例することなく「相場」で賃貸に出せる。これもまた強い。おおよそ商品というものは、その原材料費に比例して価格が決定されるものだ。よほど特殊なものでない限り、原材料費と作業賃や製造費がベースとなって、価格は決定される。つまり材料が安いものはそれなりの値段となり、材料が高価なものは高価になっていく。もし不動産賃貸業も、そのような考え方で値決めがされていたのであれば、総額300万円の物件の家賃は、総額600万円の物件の半分になってしまうことになるのだが、そんなことはない。この場合、同程度のクオリティと広さ、立地であれば等しく家賃は6万円なのだ。この場合、300万円で仕上げた物件は先述の通り表面利回り24%となり、600万円であればそれは12%となる。

「仕入れとリフォームは安い、だけども家賃は相場並み」これがガチDIYヤーの常勝戦略なのだ。

著・ヤコバシ

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