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vol.4 タケゾウ先生のボロ戸建て不動産投資講義

タケゾウ 聖丁倶楽部
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※試聴版。オリジナル版(53:45)は購入後に視聴可能。

第四話(全六話)

福岡県、北九州市。かつての門司市、小倉市 、若松市、八幡市、戸畑市の5市が合併し、1963年に「北九州市」は生まれた。関門海峡に面し、九州地方の玄関口として栄えたこの土地は、永らく九州で最大の人口を誇る大都市であった。古くは明治時代に富国強兵の旗印の下、八幡製鉄所が官営され、それに連なる筑豊炭田、さらには門司港といった港湾も備え、1960年頃には人口100万人を超えた。ここ北九州市は、大阪・名古屋・京都・神戸・横浜に次いで政令指定都市となった。これは札幌・福岡・広島・仙台よりも早い。いわゆる「太平洋ベルト」の一角として栄えた北九州工業地帯の隆盛を窺い知る。そんな北九州市だが、今や産業の変化により人口は流出の一途を辿り、2010年には98万人、2021年には93万人となった。

タケゾウ師匠はそんな北九州市を拠点とし、ガチDIYヤー大家として活動している。その成功には北九州との運命的な出会いと、そして必然性もあったと言える。今回の紹介文ではそこを紐解いていきたい。

「そもそもなぜ、ボロ戸建は生まれるのか?」

まずはこのことに思いを馳せたい。この人口減少が進む日本においては、全国的に家は余っていくのではないか?と、最初に思いつく。もちろんその通りだが、必ずしもボロ戸建の出現にはつながらない。都市圏に住む人なら実感があると思うが、空き地など既になく、古い家や畑が潰されて分譲住宅となり数千万円で売り出されている・これを見れば、ボロ戸建など発生のしようがないのではないか、と思う。確かに日本全体で人口は減っている。しかし人口が増え続けている都市圏エリアがある。一方で、急速な人口減で限界集落になるエリアもある。都心部では人口は流入し続けて高層マンションが増え続けている。30年前は一面田んぼだった地域が、今や新興住宅地になっている。鉄道や高速道路網の拡充に伴い、その領域は広がって、地方からの人口流入を受け止める。都市圏においては住宅需要はいまだに強く、地価が上がり続けている。ゆえに激安のボロ戸建は出現しにくい。というのもボロ戸建があったとしても、それを解体・更地にして新築の住宅を建てるという需要ーー「実需」の層が厚いからだ。そのため、都市圏においては土地値より低い金額では購入することはできず、ボロ戸建プレイヤーが目標とする100万円以下の物件は、ほぼ出現しないのが実態である。

それに対し、ボロ戸建の名産地と呼ばれる地域がある。そのうちのひとつが冒頭で紹介した北九州市なのだが、本稿ではボロ戸建が発生しやすい条件について深掘りしていきたい。

まず第1の条件は、人口が急減している地域。人口が減れば空き家は増える。そのペースは早ければ早いほどボロ戸建の発生数が増える。しかしこれだけでは足りない。

第2の条件が「再建築不可」が発生しやすい地域であること。再建築不可とは、その名の通り、再び建築ができない=更地にして新築を建てることができない物件だ。これは先述の、実需層へ土地としての販売ができないので、価格が低くなる。

なぜ再建築不可物件が存在するのか?それは建築基準法が1950年(昭25年)、都市計画法が1968年(昭43年)の成立だからだ。そのため、それ以前に建てられた物件には再建築が可能となる条件:接道義務を満たしていない物件が存在する。ちなみに、接道が必要なのは、火事の時に消防車が入れないからだ。このような立地は、自動車が普及するより前に成立した街に多い特徴でもある。江戸時代や明治時代の人々が、消防車の通行を意識することは難しい。

この再建築不可が頻発する地域には、特徴がある。「狭小な住宅」が「密集」していることだ。この2条件が重複しない場合、幅4mの道路が造られて、それに2mの間口で接道してしまい、再建築が可能となってしまう。そのため再建築不可の条件を、頻発できる地形は限られてくるのだ。もっと具体的にしてみると「急峻な階段地形」という条件が浮かび上がる。

段々畑のように、山を削ってわずかな平地を作る。そしてそこに多くの人々が集住する。山を削って作った狭い土地に、最大限の人口を詰め込めるようにやりくりして家を建てる。しかも大昔に。結果として、再建築不可の家が大量に生まれた。人々は、なにも好き好んで密集した集落を形成したのではない。そうするしかなかった理由がある。

それは「港町で栄えた」ということだ。

港は、地形条件を強く選ぶ。大型の船を入港させるには、水深が深くなければいけない。外海の激しい波から守ってもらえるような、湾になっていると尚良い。遠浅の砂浜があるような地形では、良い港は作れない。陸地から、いきなりストンと深い海底まで落ち込むような切り立った地形が適している。いわゆるリアス式海岸のような、切り立った山がそのまま海から突き出ているような地形が良い港にしやすい。例えば長崎、神戸、横須賀、三陸海岸、若狭湾などが好例だ。港としては適した地形であるため、良い港ができる。そして良い港には、仕事を求めて多くの人が集まる。しかし、人が住める平地は少ない。こうして致し方なくご先祖たちは、山を削って家を建てた。小さな家を、密集させたーーこうして、ボロ戸建が生まれる土壌が生まれたのである。

この2条件、人口減と再建築不可の地形を満たすのはーーそう、「かつて栄えた港町」だ。今回のタケゾウ師匠が主戦場とする北九州市ももちろんその条件を満たすし、他の著名なDIY大家も長崎などを拠点としている人がいる。再建築不可の激安物件は、出現しやすい土地があり、それは名産地と呼ばれる。

これに加え、安く物件を取得するにはコツがある。それは「終活」の人から譲り受けることだ。相続で揉めるくらいならば、生前に手放しておきたい。採算など度外視しても、早く手仕舞いをしたいーーそう考える老い先短い人々から、譲ってもらうこと。逆に彼らにとっては、文句も言わず引き取ってくれるありがたい存在であるとも言える。

「かつて栄えた港町にある再建築不可の物件を、お年寄りから格安で買う」

これがガチDIYヤー勢の必勝方程式であると言えるだろう。

著・ヤコバシ

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