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365日色の話 ちょっと一休み 宮部みゆきさんの「桜ほうさら」人の温かさ。ぜひお薦めしたい本です。

宮部みゆきさんの作品は「ぼんくら」「きたきた捕物帖」等々
すべて面白くて、途中でやめられず、どんどん読んでしまいます。
江戸の人情、捕物帖は絶品です。

「桜ほうさら」は、
上総国とうがね藩の古橋宗左右衛門の次男、
古橋笙之介が、
江戸深川の貧乏長屋で写本作りを、
「きたきた捕物帖」でお馴染みの

村田屋の治兵衛さんの下で、
仕事を請負、仕事をしているところから始まります。

写本作りを始めて半年が経ち、
写本以外の新しい仕事の依頼も・・・

そんな中、仕事で疲れ果てて外を見ると、
桜の木の下に
桜の妖精のような少女の姿を見てしまいます。
幽霊なのか、桜の妖精なのか、人なのか・・・

古橋笙之介の父は、温厚で実直な武士。
ある日、突然賄賂を受け取った疑いをかけられ、
動かぬ証拠となったのが、
本人も驚くほどの
手跡の偽文書だったのです。

無実の罪で
自ら死を選ぶことになり、
笙之介は母の兄、東谷様の命で、
一人国元を離れ、
密かに真実究明を探ることに。

父の手跡にそっくりで、
父自身、
自分で書いたとしか思えないと
父を惑乱させ、自刃に至らせた,

本人が罪を認めてしまうほどの
手跡の腕前の人物など本当に存在するのか。

そのために、古橋家は断絶。

そのことは、跡目争いのカギを握る、
殿の遺言状にも関係することにも・・・
もし、あの腕前の偽文書作りが、
関与して、お殿様とそっくりの遺言状が出てきたら、
本物の遺言状もウソになる。

笙之介の父の一件が、
思わぬか、計画どうりか、
どちらにしても、布石になってしまうのだと恐れます。

笙之介は写本作りをしている立場を利用して、
本人が見まがえるような、
手跡を真似られる人物を探していきます。

人の手跡を真似るとは、
己をまったく空しゅうして、
その人の考え方、見え方、
そういったすべてが同じくならないと、
本人が自分で書いたと思うほどの
手跡にはならない。

そんなことができる人間は誰なのか。

凛として、明晰な和香のちからも借りて、
笙之介は、
まわりに起こる謎多き事件を、
解いていきます。

笙之介を究明に近づけながら、
悲しい事実も引き寄せていきます。

「桜ほうさら」
山形県の一部で使われる
「いろいろあって大変だ」
という「ささらほうさら」

物語の中で
象徴的に使われる
「桜」をからめた造語だそうです。

この「桜ほうさら」は、
謎解きの謎はさすがです!

なんだかどんどん夢中になってしまいます。


人生の切なさ、ほろ苦さ、
さまざまな布石が、
パズルを解くように現れ、
言葉の選択や描写の小気味よさは
素晴らしいです!


先を読むのが楽しみなのです。

宮部みゆきさんの時代小説に登場する、
大好きな愛すべき人たちが登場し、
人情や人間の可笑しみ、明るさを溢れさせてくれます。

悪人にも悲しみがあり、
切なさもある。


長屋の人たちの温かさ
いつものように心を温かくしてくれます。

宮部みゆきさんの江戸深川長屋の物語はたまりません。

今回は、
心やさしく聡明でまっすぐな笙之介の人生を
「ささらほうさら」
見守りたくなりました。




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