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御徒町の佐竹商店街にある超人気フレンチ。値段の数倍の価値ありのディナーを満喫してきました。

「ハセガワコウタロウ」があるのは銀座でも六本木でも無く御徒町の「佐竹商店街」です。日本で2番目に古い商店街にあるフレンチレストラン。でもここは予約が非常に困難なことで知られる超人気店なのです。

シェフはフランスの3つ星レストランでの修業経験の他、帰国後には「ひらまつグループ」の「サンス・エ・サヴール」や「ラ・フェットひらまつ」で料理長を務めた方です。

2007年には日本人で初めてボキューズ・ドール国際料理コンクールで入賞するなど輝かしい経歴をお持ちですが、2018年に自身の地元であるこの場所にお店を開いたのです。

「地元に愛されるフレンチ」と言われるように、予約の取れない人気店にもかかわらずシェフはこの新御徒町という土地に合った価格を貫いています。普通ならランチの料金かと思える値段でデイナーを提供しているのです。

またシェフもマダムもとても気のいい方で、腰が低いのが印象的。これだけの経歴があってこれだけの料理を作られる方とは思えないほど、シェフは謙虚で笑顔が絶えないのです。

これはファンになって何度も訪れる人の気持ちが分かります。まるで地方の小さなレストランに訪れたかのような温かいサービスが素晴らしいです。

今回いただいたのは、1番お手頃な5,000円のディナーコース。5,000円と言ってもデザートまで含めて計5品も出る充実ぶりです

まず出てきたのはモンサンミッシェル産のムール貝を使った一品。チャウダー風に仕上げ、食感のアクセントにクルトンやキャベツの仲間のユニークな野菜コールラビを加えています。これがホッと一息つくような優しい味わいです。

次いで出てきたのは足赤エビとクスクスの料理。エビのソースで味付けられたクスクスの上には、エビの他にカリッと焼かれたリードヴォー(牛の胸腺肉)やアクセントにオレンジが載せられます。ソースはさっぱりとビネグレットで。一見バラバラに見える食材ですが口に入れてみると驚くほどまとまりがあり、互いの旨味を引き立てています。


またパンはわざわざフランスから取り寄せて厨房で焼き上げるこだわりがあり、ホイップバターをたっぷりとつけて食べます。

前菜の後は魚料理、肉料理、デザートと続きます。
この日の魚料理はイシダイ。炭火で香ばしく炙ったイシダイは細切りにした人参やポロネギなどと合わせて、白ワインと柚子のソースでいただきます。付け合わせの万願寺唐辛子やブロッコリーとの相性は勿論のこと、香りのアクセントでクミンが使われていて面白い発想です。

肉料理は千葉県産の麦豚のロースト。柔らかく甘みのあるお肉としつこさの無い脂身が特徴で、タスマニア産の粒マスタードや黒キャベツのソテー、紫大根、カラメル状に炒めた玉ねぎといただきます。やはりこちらの一品も伝統的なフランス料理とは異なり、こってりと濃厚な印象は無く、食べやすく仕上がっていました。

デザートはチョコのテリーヌと梨、刀根早生柿(とねわせかき)のソルベ。濃厚なテリーヌは梨の爽やかで軽い甘みや、柿の優しい甘みと相性抜群。全てシェフ1人で作られているようですが、どれもハイクオリティで驚かされました。

店内にはシェフがボキューズ・ドールを受賞した際の写真が飾られているのですが、同じ写真に映っている日本人があともう2人いました。それが大阪の3つ星レストラン「HAJIME」のシェフである米田肇氏と、パリで3つ星を獲得した「Restaurant Kei」のシェフである小林圭シェフ。

長谷川シェフは「凄い人たちと一緒に映ってしまって…」と謙遜されていましたが、私は彼らにも負けないくらいの料理を、この小さな商店街の小さなフレンチレストランで味わえたように思います。

たしかに彼らが作るようなエンターテインメント性溢れる華やかな料理ではないかもしれません。しかし値段以上のとてつもない味と温かいサービスがそこにはありました



日本全国美味しいお店や個性的な宿を巡っています。